第13話 アスナ&サチ編 鋼鉄の乙女
あの犠牲者を多く出した25層フロアボス戦から3か月の時間が経過した。
その間、俺とアスナによってケイタ達、ギルド『月夜の黒猫団』の面々に特訓をつけ、今では攻略組に参加するほど強くなった。
特にケイタとサチの成長が凄まじかったと言っておこう。
『月夜の黒猫団』の中で2人が一番強い。鍛えた俺とアスナもびっくりしているのだ。
極めつけは第28層のフロアボス攻略の時、他のメンバーをボスの攻撃から守る時、2人一緒にコンビネーションを発揮し、隙を作ったことでボスを倒したと言う事。
その後、見事攻略組入りを果たしたギルド『月夜の黒猫団』は第11層 タフトの俺とアスナ、リズの住む家兼店のすぐ近くにあったいい物件を買い、ギルドホームを作った。
暇があれば俺達の家に来て鍛錬しに来ている。
俺達自身も25層以降、さらにレベルを上げ42になっている。
なお、サチが付けている防具の名は鋼鉄の乙女<アイアンメイデン>。
この防具は今から2週間ほど前……第34層へと進める様になった時、俺とアスナが一旦離れ、アスナとサチ、女子2人のパーティーで狩りに行った時に起こった事を俺は2人に聞いた。
そして、俺もアスナと一度、離れた時にあるスキルと武器を手に入れた。
〜アスナSIDE〜
それは今より2週間ほど前に遡る。
「何?女性専用防具のアイテムがある?」
私はその日、サチと一緒に買い物に行った時に聞いた話をレンにしている。
何でも第34層 戦乙女の戦場に出現するメイデンというレアモンスターを倒すと女性専用のアーマーが手に入るとのこと。私はアーマーよりコートやロープ系の防具を使うからサチにどうかしら?って言ったら行ってみようよという事になった。
このレアモンスターは女性プレイヤーの前にしか現れないと言う情報。男性プレイヤーがいたら出てこないと言う事だった。強さは……フロアボスよりも弱いらしいけど、まあまあな強さって事よ。
「なるほどな。そんな特殊なモンスターなら仕方ないな。それに俺も今日はアスナといったんパーティーを離れていく所があったんだよ」
「それって?」
私は気になって聞いてみると
「何でもソロ専用で出てくるレアモンスターがいるらしくてな?ヒースクリフからそのモンスターについての情報を貰って、何人か死にそうになったプレイヤーが少なからずいるんだって。そこで俺はそのモンスターの事が気になって、見てくるってわけだ。え〜っと、確か名前が……【Terror of Death】だっけか?」
「直訳すると死の恐怖ね」
不吉な名前ね。
「ケイタ達も連れていきたいが…いくら攻略組入りしたと言っても危険だしな。俺1人でいってくるさ」
「気をつけてね」
「そっちはサチの事、任せたぞアスナ」
「無論よ」
こうして私とレンはその場で一旦、解散した。
〜第34層 戦乙女の戦場〜
レンと解散し、私はサチと一緒に来ている。
最初の頃と比べてサチも逞しくなり、強くなったわ。
他のギルドの人達と比べたらまだまだだけど、それは実戦を今まで以上に積めば問題ないわね。
[キシャァアアアア!]
…ここのモンスター、女性の人型だけどそこまで強くないわね。
けど、出現するのが凄く早い。1体倒して数分ですぐに再出現するもの……いい加減にうざったくなってきたわ。
「ねえ、アスナ」
「何?サチ」
「ここ、やけにモンスターが出てくるね」
やっぱりそう思うわよね。私もこんなに出現するのを相手にするのは久しぶりよ。
でも、ここ戦乙女の戦場って名前だし、女性プレイヤーが来るともしかしたらモンスターが多く出現するのかもしれないわね。
「にしても…メイデンって言うモンスターはいつ出てくるのかしらね」
「わかんない。でも、レアモンスターって結構出現する確率少ないんでしょ?」
「…ええ。レンによればね。けど、私、レンと一緒に狩りに行くと良くレアモンスターと遭遇するのよね。これって何?レンがモンスターに好まれているのって言うのかしら?」
だったらレンと一緒にレアモンスターを狩っていた私は何!?
「ア、アスナ。顔が怖いよ」
「あ、ご、ごめん。つい」
サチを怖がらせてしまったわね。反省反省。
そう、話しながら進んでいると…
[アアアアアアアアアアア!]
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
地面が揺れる音がしながら何かが出てきた。
[アァアアアアアアアアア!]
地面から出てきたのは鋼鉄の鎧を身にまとった巨大な女性型モンスターだった。
カーソルがモンスターの名前を表示した。
【Iron Maiden】……鋼鉄の乙女ね。これが噂に聞いていたレアモンスターか。
「出てきたわね」
「うん。これが聞いていたモンスターね」
私とサチは武器を構える。メイデンのHPケージは2つね。
私達が構えを取ると、メイデンもどこからか剣と盾を取りだした。
[ァアアアアア!]
メイデンは私達目掛けて剣を振りかざすが……持っている剣が重いせいか遅い。
避けるのは簡単にでき、私がソードスキル:カドラプル・ペインの4連撃を背中に放つ。
ガガガーン!
「っ固い!」
メイデンには少ししかダメージが入らない。
このメイデン、唯の物理系攻撃は聞かないの!?
となると、効くとしたら貫通系の攻撃ぐらいしか!?
でも、私の持つスキルの中に貫通系攻撃はない。くっ!こんな時ほどレンがいてくれたらって思うわね!
「サチ!貴方の持つ槍のスキルに貫通系攻撃はない!?」
「えっ!?あ、あるにはあるけど!」
「このモンスター…普通の攻撃もスキルも効果があんまりないの!レン曰く、「鎧を身にまとっている敵は通常物理より貫通系」らしいわ!」
よくよく思い出してみればレンは鎧を纏っていたモンスター達には体術スキルなどの貫通系を使っていたわね。
確か体術スキル:鎧崩しだったかしら。
「私がメイデンの隙を作るわ!サチは貫通系のスキルを!」
「わ、わかった!」
[ァアアアアア!]
「!」
ゴーン!
「はあああ!」
ズドドドドド!
ソードスキル:レ・ミゼラブルの10連撃を同じ場所に食らわす。その部分だけが凹む。
[ウアアアアアアア!]
「っ!きゃぁああああ!」
剣が当たりそうな瞬間、硬直が解け、レイピアで何とか防御したわ。けど、凄い攻撃力…HPケージが2割ほど減ったわ。
「はぁあああああ!」
サチが槍を光らせながらメイデンの腹部に突き刺す。
槍の刃の部分がメイデンの鎧を貫通し、槍が突きささる。
[ウアァアアアアアアア!]
悲鳴を上げるメイデン。怒り状態になったのか低い声を上げながらサチに剣を振りかざす。
「!」
サチは直ぐにその場から離れる。槍は突き刺さったまま。
「大丈夫?」
「うん。槍を突き刺したままだから継続的にダメージを負っているわ」
メイデンのHPケージを見ると確かに少しずつ減っている。
隣にいるサチは新しく槍を出し、構える。
「それは?」
サチの持つ槍に見覚えがなかった。
サチ達の実戦特訓の際、サチ達の持つ武器は大体、私とレンは知っているわ。
けど、今持っているのは見たことがないわ。
「これ?前にレンとアスナがいない時に皆でフィールドに行った時に、倒したモンスターからドロップしたのよ武器の名前はグラーシーザって言うの」
灰色の槍、グラーシーザか。
「何でそれを使っていなかったの?」
「この武器、強すぎるんだよ。だから強すぎる武器に頼るのもな〜って」
……一理あるわね。けど、私達はずっと攻略組だったから強力な武器や防具を使ってきたからそう言ったことは考えた事がなかったわ。
「さあ、さっさとあの鋼鉄の乙女を倒しましょう!」
「ええ!頑張りましょう!」
[アアアアアア!]
〜数分後〜
「やぁああ!」
カキィィン!
「スイッチ!」
ドス!
[ア”ア”ア”ア”ア”!]
パリィィーン
メイデンはサチの最後の攻撃で無数のポリゴン片となり、砕け散った。
それと同時にサチの突き刺したままだった槍が落っこちる。
経験値も入り、サチのレベルが上がった。
すると、
「あ、でた!」
「出たの?アイテム」
「うん!えっと……鋼鉄の乙女<アイアンメイデン>って書いてある。固有スキル:乙女の加護…装備時に素早さ、防御力UPの女性限定装備……だって」
「いい防具ね。良かったじゃないサチ」
嬉しそうにしているサチ。来てよかったわね。
「さあ、ここから早く出ましょう!」
「そうですね!」
私達は戦乙女の戦場から街に戻る事になった。
レンは今頃、何しているかな?
第13話 レン編へと続く!
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はい、今回はアスナ視点の物語です。
アスナ&サチ。SAOで数少ない女性プレイヤーのタッグ。
今回出た防具はアイディア募集した時にアイディアを下さった方のを採用し、使っています!
魅力は本来生きていないサチに装備させる事と固有スキルですね。
さて、次回は久しぶりのレン、1人の狩り。
【Terror of Death】死の恐怖……この名前に覚えのある方はいるかもしれませんね。ゲームをしていればの話ですが。次回、遂にあのスキルが登場します!
なお、この話しが短いのは2部に分けて書くからです。