第17話 第40層フロアボス攻略会議編
第40層 和の街 都は日本の和を取り入れたほぼ京都の街だ。
そんな街に俺達、攻略組は集まっている。
何故集まっているのかというと第40層フロアボスの攻略するための会議を開くからだ。
例の如く開いているのは血盟騎士団団長のヒースクリフだ。
25層以降、軍は攻略には一度も参加していない。
というか、攻略組から邪魔な存在としか思われていない。
俺も邪魔だって思うくらいだしな。独断専行して余計な犠牲者を出しているしなあちらは。
なお、俺達がいるのは平安京と呼ばれる場所だ。
このゲームを作った茅場 晶彦は何のためにこんな京の都を作ったのか疑問があるな。
しかも面白い事にこの街に入ったら装備が自動的に着物になっていることだ。
俺は蒼色の着物に、アスナは白に少し赤が入り、花柄の着物だ。
会議の場所に行くと全員が着物。どういう風にシステムを設定すればこうなるんだろうな。
「おーい、そこの夫婦〜」
「クライン。俺達をおちょくるな」
「はっは！悪い悪い！」
クラインも着物姿だが……
「「似合わない…」」
「うるせぇ！仲間達にも言われたよ！」
どうやらギルドの仲間にも似合わないと言われて拗ねているようだ。
「オラぁ、こういうのは嫌いなんだよ！スーツの方がいいっての」
「確かに。その面で着物はな…」
「……おいレン。俺に喧嘩を売っているのか！ええ？」
「売ってたら何だ？やるか？いいぜ。武器はなくても武術をしている俺にお前が勝てればいの話だが…」
「喧嘩を売ってすんません！」
ザ・土下座をするクライン。
前にクラインとは武器なし、スキルを使わないで拳で戦ったが俺にボコボコにされたことがいまでも覚えているようだな。
「お〜い、レン〜アスナ〜」
「あ、サチ達だわ」
サチ達も来たか。やっぱり着物か。
ん〜女性の着物姿というのはいいな…いだだだだだだ！？
「アスナ！痛いじゃないか！」
「ふん！サチの着物姿に見とれてたじゃない」
ぷい！
……嫉妬か？
ギュゥ
「アスナが一番綺麗に決まっているじゃないか」
「ほ、本当？」
「俺の奥さんは誰よりも綺麗だぞ」
「///嬉しいわ」
ラブラブな桃色空間を作る俺達。
そこへ
「お2人さん……ここでイチャイチャしないでくれよ…」
「そうだぞ。やめなって」
視線を声のする方へと向けるとそこにはレイヴンとガロンがいた。
その後ろにはイリナ。
「おー3人とも会うのは第39層攻略の時か」
「そうだな。俺達とお前達は基本、攻略会議と攻略戦の時にしか会わないしな」
「お2人とも相変わらず仲が良いようで何よりですね」
俺は…幸せだ。この中でだが、幸せすぎるんだよな。
リアルに帰って、社会に出たらアスナとは……うん、結婚したいね…ちゃんとした。
「にしてヒースクリフ…遅いな。会議を開くっていってた人物が何で来ていないんだよ」
「レイヴン。仕方ないだろ。彼は忙しい身なのだから」
「ガロン。そう言う俺達も忙しい立場だろ。俺リーダー。お前副リーダー。やることも多いんだから」
2人ともなにやら用があったようだな。
イリナがこっそり俺達に教えてくれた。
「最近、質の悪い輩がうちのギルドに入ったんです。その輩はPKまがいな好意でレアアイテムを他のプレイヤーから横取りしたしたりしているんです。その事を2人が知り、調査などをしているのよ」
「なるほどな。青龍連合も大変だな」
「全くよ。大きいギルドになれば質の悪い輩が増えるからね。そう言うのを調査するにも人員を派遣しないといけないし…」
「補佐の立場も大変ねイリナ」
「本当よ…はぁ」
ため息をつくイリナ。よほど大変なんだな補佐の立場は。
「そう言えば……最近のラフィン・コフィン（笑う棺桶）の動きはどう思うよ」
レイヴンがいきなりそんな事を話し始めた。
「あの殺人ギルドか…」
「ええ。こちらのギルドメンバーに数名の被害が出たわ」
「一度、俺とガロンも狙われた事があるんだよ」
『本当！？』
俺とアスナは顔を見合いながら言う。
青龍連合のリーダーと副リーダーを狙うとか……馬鹿なんだかアホなんだか。
「まあ、返り討ちにしてやったけどな！……その後、転移結晶で逃げられてしまったが…」
「レイヴンはツメが甘いんだよ。あの時俺は麻痺状態にさせようって言ったのに『大丈夫だって！』って根拠のない事を言うから」
『じぃ―――』
俺とアスナはレイヴンを見る。
するとレイヴンは俺達からの視線を逸らす。やれやれ。
「俺達がその時戦ったのはラフィン・コフィン（笑う棺桶）のトップスリーのジョニーって奴とザザって奴だった。ジョニーって奴はいかれていたな。人殺しをゲーム感覚でしてたしな」
「……何だと？」
それを聞いて俺の中で何かが冷える感じがした。
そんな俺を心配し、アスナが着物の袖を引っ張る。驚いてアスナを見ると大丈夫？って目で語っていたので大丈夫だと目で言う。
「それで…その後、その2人はどうしたんだ？」
「襲って来たかって？ないない(笑)俺達2人に他のギルドメンバー10人を監獄行きにされたんだぜ？また返り討ちに合うって思って来てないよ。そもそも俺達が殺人ギルドごときにやられるかっての…だーはっはっは！」
レイヴンが言う事に一理あるな。伊達に青龍連合を率いてないしな。ガロンも。
その2人を殺しに行くんだよほどの腕だったんだろうが…この2人は攻略組としてずっといるんだ…経験などはケタ違いだろうな。
「だが……心配だな」
「何がだよレン」
「いや、お前達の殺害に失敗した事への憂さ晴らしに他のプレイヤーを狙わないかってな」
全員が息を飲む。そりゃそうだろうな。
俺もそれはないだろうとは思うが……奴等は殺人ギルドだ。俺達の常識は通じない。
「……この攻略が終わったら一度、俺達・風林火山・血盟騎士団とお前等とかを集めてその事を話しあった方がいいかもな」
「ああ。そうだな。ヒースクリフもに言っておこう」
そんな会話をしていると…
「やあ、待たせたね諸君」
扉を開けると着物姿のヒースクリフとリーガルがいた。
決まっていた位置に座る俺達。
ギルドにはギルドの席。ソロにはソロの。俺達のような2人組も決まった席に座る。
「うむ。座ったね。では、40層フロアボスの攻略会議をするとしよう」
そう言い、指を動かし、情報が俺達の前にも出てくる。
「我々血盟騎士団の調査隊が迷宮区の奥にてフロアボスの部屋を見つけた」
ざわ…ざわ…と会議室にいる皆がどよめく。
「静粛に。念のため、ボスの名前を調べようと部屋に入ったが…入った瞬間、攻撃され名前を見ることができなかったようだ」
「おいおい、なら何で会議をするだよ〜」
誰かがそう言うと。
「確かにな。そこで我々はもう一度ボスの部屋に行き、調査した。しかし、名前がカーソルに表示されなかったのだよ」
「おい、ちょっと待てよ！？カーソルに表示されないって…どういう事だよ！」
クラインがヒースクリフに言う。すると、
「そこは私にも分からない。だが、奴の姿は情報として残すことができた。この姿を見て、どんなものか分かるかな？私には心当たりがない」
再び、指を動かし俺達に情報を見せる。
「！？これって…」
俺はそのボスの姿を見て心当たりがあった。
「レン、何か気付いたの？」
隣に座っているアスナに聞かれ頷く。
「レン君。気になった事があったら言ってくれたまえ」
「わかった」
俺は立ち上がり、ヒースクリフの隣へと立つ。
「ここにいる皆に聞く。皆は平家物語を勉強、または調べた事はあるか？あったら手を上げてくれ」
俺がそう聞くと誰も手を下ない。まぁ、いないと思ったよ。俺は興味本位で調べたり勉強したしな。
「平家物語とこのボスに何かあるのかい？」
リーガルが俺に聞いてくる。俺はコクンと頷く。
「ええ。このボスのモチーフは十中八九、日本で伝承される妖怪や物の怪である伝説の鵺だ。鵺という特徴もあるしな」
「その特徴ってのはなんだよレン！」
「鵺の身体はサルの頭部・タヌキの身体・ヘビの尻尾・トラの手足からできていて、かつては京の都を騒がさせていた伝承がある妖怪なんだよ。ヒースクリフ、どんな攻撃をしたのか分かるか？」
「調査によると…尻尾のようなのからは毒のブレスと噛みつき。爪は麻痺のひっかき。頭部からは炎のブレスなどという事だ。泣き声は気味が悪かったと言う事だ」
「なるほど……攻略する際は毒や麻痺を無効化する装飾品か戦闘前に異常状態無効化にするアイテムなどを使うしかないかもしれないな」
平家物語では弓の達人である源頼政が弓で退治したと書かれていたっけな。
この世界には今の所弓があると聞いた事がないけど…どうだかな。
「ふむ。では、各自アイテムなどを用意し、なければ我々か青龍連合に補給させてもらうんだ。攻略は明日の午後1時だ。それまでに装備などをしっかり揃えておいてくれ。戦闘が始まったらアスナ君の持つ装備のスキルで弱点などを探る事とする……以上！解散！」
明日か。頑張らないとな！
「レン君。二刀流…期待しているよう」
「ヒースクリフもな。神聖剣…楽しみにしているぞ」
手を握り握手する俺達。
手を話すとそれぞれの仕事に取り掛かる。
明日までゆっくりさせてもらうとしよう。
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はい、京の都こと…京都、平安京などを出してみました。
しかも次にボスは京都と関わりのある鵺です。
次回をお楽しみに！