第24話 妖刀村正
リズが専用武器を手に入れて数日が経過した。
その間にリズは手に入れたヘパイストスで武具を作っている。
俺とアスナは『鍛冶神の工房』で手に入った素材を使って現在使っている装備…俺のは蒼天シリーズを強化してもらい、アスナも白天シリーズを強化してもらい、俺の防具である蒼天シリーズは蒼極天シリーズになり、アスナのも白天シリーズから白極天シリーズへと強化された。
俺の蒼極天シリーズは強化された事によって【異常状態無効化】に加え、【戦神の加護】、【敏捷+50%】、【高速換装】、【技能連撃】というスキルが付いた。
俺的には【戦神の加護】と【高速換装】、【技能連撃】はありがたい。
【戦神の加護】はフィールド及び迷宮区などでモンスターと戦う場合、戦えば戦うほど、攻撃力と防御力を強化していくスキルだ。
【高速換装】は戦闘中に武器などを変えたりするのが飛躍的の早くなるスキルだ。
俺は剣・刀・鎌を使うからありがたいことだ。
そして、【技能連撃】はソードスキルを2回連続で別々の技を使える事が出来る。これもありがたいな。
アスナの白極天シリーズは、白天シリーズの時も敏捷重視されていたが、アスナに聞いたら【敏捷+80%】が付いているそうだ。
他にも【異常状態無効化】、【戦神の加護】、【硬直時間減少】のスキルだそうだ。
【硬直時間減少】はその名の通り、ソードスキルを使った際、硬直する時間が減るとのことだ。
この強化してくれたリズはもう、元気100%で商売している。
そして、俺とアスナ、一緒に来ているバーグとラナ、コバル、ラナの使い魔の4人と2匹で第44層 死に塗れた戦場というフィールドに来ている。
ここは以前、俺がスケィスを倒した死屍魔天のようなフィールドだ。
色とかは普通なのだが、屍が転がっていたり、人魂のようなものが浮いていたりするフィールドだ。
このフィールドは、何故かモンスターが出現しないフィールドらしいが、1体だけ出てくるそうだ。
この事はクラインからのメッセで知った。
クライン達がレベル上げのためにここに来たそうだが、何故かモンスターが出現しないので帰ろうとしたら黒い影に襲われたとのことだ。幸い、犠牲者はいなかったが全員のHPケージがレッドでやられる所だったそうだ。
このフィールドに来てからムードメーカーのラナが怖がってバーグの後ろに隠れたり、アスナも俺の腕を掴んで歩いている。これにはさすがの俺とバーグも困っている。バーグは豪快で気さく、曲がった事を嫌うが女性が絡むとどうも駄目そうだ。
特にラナのような元気いっぱいな女の子が怖がって自分の後ろに回ったりする事には慣れていないので焦っている。
バーグの目が語っている。レン、助けてくれと。だが、俺は目で言う。これも試練だ、と。
それにバーグは涙目になっているのを俺は無視して、フィールドを散策している。
宝箱もないし、モンスターもいない…どういう事なのだろうか?
そう、考えていると…
ズズズズズズズズ
屍の山から何かが出てきた。しかし、姿が見えない。
「アスナ、少し離れて」
「えっ?う、うん」
ザザ…
アスナが俺から少し離れるのを確認し、俺は剣を2本構える。
クラインは姿を見る隙もなくやられたとのことだ。つまり、相手はかなりの速さで俺達プレイヤーに接近してくると見た。
ザザザザザザザッ!
「っ、そこか!」
ガキィィィィィン!
見えない敵を音で識別し、攻撃を剣2本で抑える。
ギギギギギ!
[オォォォォォォォォォォオオオオ!]
「輝け!クラウ・ソラス!」
剣の1本であるクラウ・ソラスの固有スキル:【光り輝く不敗】で俺が受け止めている剣を持った敵の正体を暴く。【光り輝く不敗】は周囲の目を眩まし、隠れた敵(「隠蔽」スキル)も探し出すことができる。
スゥーーーー…
姿が見えて来たか。
[オォォォォォォォォオオオオオ!]
敵の正体は…
「なっ!?武者…いや落ち武者か!」
カーソルにもしっかりと【落ち武者】と表示されていた。
けど、どういう事だ?何でこいつのHPケージがどんどん減っている?
そう考えていると
[オォォォォォォォオオオオオオオオオン!]
ジリリリリリィ!
「なっ、何だ!?いきなり力が増した…」
ドサッ
膝をつく俺。くっ、俺に膝をつかせるとは!
「オラァアアアアア!姿が見えればこっちのもんじゃぁ!スネークバイト!」
バーグは姿を現した落ち武者を横から突き刺し、
「うりゃぁああああああ!」
ドスーン!
叩き付けた。
落ち武者は頭から地面に叩きつけられ、HPケージが一気に2割持っていった。
だが、何でこんなモンスターがHPケージを4つも持っているんだ?
そう、考えながらも俺は後退する。
姿が見えるようになったので、クラウ・ソラスを伊邪那岐(イザナギ)に持ち変える。
伊邪那岐(イザナギ)と武御雷(タケミカヅチ)の二刀流だ。
[ガオォオオオオオ!]
コバルが火炎弾を転がっている落ち武者に放つ。
「いけえ!ミルちゃん!」
[コォオオオオ!]
ラナが自分の使い魔のストームバードのミルに攻撃をさせる。
翼を動かし、竜巻を発生させ、発生した竜巻はコバルの火炎弾を吸収し、炎の竜巻となる。
「おお、コバルとミルのコンビネーションか」
「さっすがミルちゃんだよん!」
ラナはいつのも調子に戻っている。本人曰く、戦闘でテンションが上がっているからだそうだ。
[オォォォォォォン…オォォォォォン!]
怨念のような声を上げながら立ち上がる落ち武者。
だが……やはりおかしい。さっき俺とバーグが与えたダメージよりも大きいダメージを……もしかして。
俺は落ち武者の持つ鮮やかな色の刀を見る。
もしかして、この刀を装備しているからか?と
だからダメージを与えていないのにHPケージが減っているのかと…そう予想する。
「なあ、皆。気付いているか?」
俺は皆の意見がききたくて聞くと…
「ええ。あの落ち武者…攻撃していない間もHPケージが減っているわ」
「しかも、それに従ってあの刀のオーラ?のようなものが大きくなっている気がするぜ」
「おそらくだけど、あの刀はHPを消費する事によって攻撃力とかを上げるんじゃないかな?」
「皆もそう思うか。さっき、あいつの攻撃を防いだ時、段々力が増していた時もHPケージが減っていた。つまり、俺の予想が正しければあの落ち武者の持つ武器の名は…妖刀村正だ」
そう俺が予想を言うと皆が俺を見る。
「どうしてそう思うのレン?」
「俺は今まで数多くのゲームをしてきた。その中で武器の中にムラマサという武器などがあったんだが、全てのゲームに共通するのが『HPが少ない時・HPを消費することで……攻撃力が上がる』などがあった。だからだよ」
「なるほどな。俺も伊達にゲーマーじゃないが、俺もそう言うゲームでムラマサを使ったことがあるぜ」
バーグも俺と同じゲーマーであることはギルド設立時に聞いたので知っている。
「ただ、やばいな。おそらくあの異常な減り方…俺達が与えたダメージも攻撃力に加算されているぞ」
『なっ!?』
「恐らくだが、先ほど俺が述べた例が両方ともあの村正にはあるとみて間違いない。となるとだ、今のあいつのHPケージが4つの内2つまでになっている。かなりの攻撃力であることは間違いない」
俺はそこでといい、伊邪那岐(イザナギ)を見せる。
「この伊邪那岐(イザナギ)のソードスキル:封印術・十握(ふういんけん・とつか)で落ち武者のスキルを全て一時的に封じる。武器の方は何ともならんがな」
カチャ
「それと武御雷(タケミカヅチ)で動きを止める。動きが止まっている間に落ち武者に攻撃を入れてくれ」
『了解!』
「よし、全員、引き締めていくぞ」
俺のいった事と共に俺達は落ち武者との距離を縮める。
[オォォォォォォン!]
落ち武者が俺達を見る。
カチャ
そして、妖刀村正を構え、
[オォォォォォォォン!]
突っ込んできた。
「はぁああ!雷帝の栽きぃ!」
ザシュ!
突っ込んできた落ち武者にカウンターの雷帝の栽きを食らわせ、
「からの封印術・十握!」
グサッ!
落ち武者の胸元を剣で突き刺す。
[オォォン…オォォォォオン!]
ガタガタガタガタ!
「おいおい、麻痺レベル5だぞ!?それでも少し動けるとは…が、今だ3人とも!」
俺はその場から下がり、
「はぁああああ!」
「うりゃぁああああ!」
「切り刻むぅうう!」
3人のソードスキルが炸裂。
ザシュン!
「コバル!」
「ミルちゃん!」
使い魔ズに声をかけ、コバルが氷を、ミルが竜巻を起こし、氷の竜巻が落ち武者を襲う。
カチ、カチカチカチ
落ち武者が氷のを見て、俺は二刀を構える。
「これで…」
二刀流ソードスキル:クロスエッジで切り裂く。
「終わりだ!」
ザン!ドサッ!
斬られ、HPケージが0となる落ち武者。その場には村正が地面に突き刺さっており、俺はそれを引き抜くと刀の武器として手に入る。
「妖刀村正か。あまり使いたくはないな(ピンチの時以外はな)」
俺達は目的を達成したので帰る事にした。
その後、クラインに影の正体をメッセで送ると「ずりぃなお前等…まあ、仕方ないけどよ。お前等が心配だったが…よかったよ無事でよ」と送り返してきたのだった。
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ムラマサ……ロックマンエグゼ3の時などにはお世話になったものですよ。
4の時は暗黒チップとなっていたので使っていなかったと記憶していますよ。