小説『ソードアートオンライン〜2つのスキルを持つ蒼の剣士〜』
作者:レイフォン()

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第37話 中層プレイヤーのアイドル・シリカ


〜レンSIDE〜


シリカと共に彼女が宿を取っている第35層 ミーシェに戻ってきた。


大通りを通り、転移門のある町の広場を抜けて歩いていると数名のプレイヤー達が話しかけて来た。
俺にではなく、シリカにだ。しかも全員が、だ。


シリカに話しを聞くと、声をかけてくるプレイヤー達は全員、自分の事をパーティーに誘ってくるそうだ。
これは、迷いの森を1人で抜けようとするのも頷ける。このぐらいの年この子は偶に、調子に乗って自分1人でも……そう考える子が少なからずいる。……まあ、そのせいで使い魔がいなくなったのだ。二度とこんなことはしないだろう。


「あ、あの……お話はありがたいんですけど……」


シリカは断るのに必死だ。まあ、こんなに何度も誘われていたら疲れてくることもあるし、仕方ないと言えば仕方ない。
今、SAOをプレイしているプレイヤーの8割ほどが男性。残りの2割が女性だ。そのうち、女性プレイヤーの大半は攻略組にいる。うちのギルドに6人。黒猫団のサチ、青龍連合のイリナ。ディアベルのところのハルカ、ナツメ、カミラ。ヒースクリフのところにも数名いるとみたいだし、美女・美少女は大体が上の階層にいる。こういう中層にいるシリカはアイドル的な感じなのだろうな。


「……しばらくこの人とパーティを組むことになったので……」


俺に抱きついて言うシリカ。男達の眼が俺を捉え、睨んできた。まあ、こういう眼は慣れているさ、アスナと結婚してからも増えたし……と言うか俺を見て、気づかない辺り、俺の事を知らないと見る。ま、ここまでそんな情報は来ないか。来るとしてもギルドの名前ぐらいだ。


「おい、あんた」


両手剣を背中に背負った青年が結構高圧的な態度で話しかけてくる。


「いきなり出て来て、抜け駆けはやめてもらいたいんだがな。俺らはずっと前からこの子に声かけてるんだ。順序って物があるだろう」


「順序って、この子は飾りでもなんでもないだろう」


「……あぁ?」


「その言い方、まるでこの子がただの置き飾りのような言い方だ。そう言ういい方は彼女に失礼だと思うけど?」


「ぐっ!」


あ、自覚はあるんだ。他の奴らも俺に言われて思い当たる節があるのか、俺から目を背けてる。
恐らくだが、シリアがいるだけでいいと言う所か。飾りじゃないんだぞ彼女は。


「で、では!」


「うおぉ!?」


袖をつかんで足早にその場を立ち去ろうとするシリカに引っ張られる形で、俺達はそこから離れた。北の通りに入り、プレイヤーたちの姿が見えなくなった所でやっとシリカは息を付きこちらに向き直る。


「すみません、迷惑を……」


「ああ、気にすんな気にすんな。特に何とも思ってないよ。それにこういうのは慣れているし。にしても凄い人気だな」


「そんな事……あんなの、ただのマスコットみたいなもので誘われてるんです。なのに、良い気になって、自分が強くなったと勘違いして、調子に乗って一人で森に入って、それで……」


ネガティブになっているなおい。


ピシンッ!


「はうっ!?な、何するんですか!」


ネガティブになっているシリカの額をデコピンする。それが痛かったのか額を押さえるシリカ。


「やめろ、そう言うネガティブな考えは。ピナが戻ってきたら怒られるぞ?」


ポンポン


今度は頭を軽く叩いてやる。……懐かしいな、こういう事は。リアルであの子の頭もよく叩いたり撫でたっけ。


「おっと、すまん。知り合いによくやってたことだからつい……」


「いえ……」


落ち着いたのか、シリカは笑顔に戻る。うんうん、やっぱり、笑顔がよく似合う。


しばらく歩いていると、(風見鶏亭)と名のついている宿屋に着いた。多分シリカが泊まっている宿なのだろう。


「あ、レンさんのホームはどこに……?」


「48層だけど、シリカのこと、心配だから今日はここに泊まるさ」


「そうですか!」


シリカが嬉しそうに笑う。


「ここのチーズケーキが結構いけるんですよ」


「へぇ、後で詳しく教えてくれ。知り合いにも教えるからよ」


和気藹々に話しをして宿に近づくと、宿の隣にある道具屋から、五、六人の集団がぞろぞろと出て来た。その最後尾に居た女が、こちらに気づくと、シリカが顔を伏せる。知り合いか?と思っているとあちらの方から声をかけてきた。


「あら、シリカじゃない」


声をかけられ、無視するのもなんなので立ち止まる。だが、なるほど。こいつがロザリアとか言う女か。


「……どうも」


「へぇーえ、森から脱出できたんだ。よかったわね」


彼女は口の端を歪める様な、皮肉げな笑い方をしながら話を続ける。


「でも、今更帰ってきても遅いわよ。ついさっきアイテムの分配は終わっちゃったわ」


「要らないって言ったはずです! ──急ぎますから」


シリカは早く話を切り上げたいのだろうが、彼女はそれを許さないようだ。シリカの肩を見て、また同じ笑みを浮かべる。


「あら?あのトカゲ、どうしちゃったの?」


トカゲって……ピナのことか?竜とトカゲを一緒にするのは失礼だと思うが。


「あらら、もしかしてぇ……?」


「死にました……。でも!」
 

シリカがロザリアを睨みつけながら言った。


「ピナは、絶対に生き返らせます!」


そう断言した彼女の瞳には強い意思がこもっていた。これなら精神的にも大丈夫だろう。この先生きて行くには精神力も必要だろうしな。


「へぇ、てことは(思い出の丘)に行く気なんだ。でも、あんたのレベルで攻略できるの?」


「俺が一緒に行くんだ。危険は低いさ」


俺が割り込んで言うとロザリアは俺の身体を見る。見ると一瞬、驚いた表情をするが、笑みを浮かべた。
どうやら俺の装備がかなり高価だとか思っているんだろうな。


「あんたもその子にたらしこまれた口?見たトコ装備は強そうだけどねぇ……大丈夫?」


「47層なんて俺一人で十分さ」


「ははっ。ホラを吹くのもいい加減にしたほうがいいよ」


「人の強さも測れないんだ。あんた、大したことないな」


「……なんですって?」


「シリカに聞いたよ。戦わないでずっと後ろに居たんだってな。自分より年下のシリカが戦っているのに……恥ずかしいとは思わないのか?シリカの方がよっぽど、精神的に大人だな」


「……ふん!せいぜい頑張る事ね!」


俺の事を睨みながらロザリアは去っていった。



――――――――――


レンの正体に気づかないシリカやロザリア達。まあ、中層にいるプレイヤー達の知っているのはギルドの名前ぐらいです。事実、アニメや原作でキリトのことを見ても気づかない人たちがほとんどでしたしね。


コメントをくれたnaokiさん、ALO編でリーファが出るのかということですが、もちろん出ます。と言うか出します。絶対に出します!

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