小説『ソードアート・オンライン〜『猛獣使い』の少年〜』
作者:クロコト()

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SIDEカイト


――第五十五層・主街区


「カイトくーん!こっちだよ〜」

「あ〜はいはい。転ぶなよ〜?」

俺たちはキリトたちがくっついてから大体2週間がたった。

今の前線は55層。

俺たちが前線復帰してちょこっと頑張ったらこの結果だ。

いやぁ〜みんな良くついて来てくれたと思うよ、うん。

だって、俺たち夫婦で全速力で走ったからな。

そりゃもう、速いこと速いこと。

「で、カイト君。この人がね?依頼があるんだって」

アスナが紹介してくれたのは優しそうな雰囲気を纏った一人の男性。

・・・・・依頼?何だろう?・・・・それより・・・・・

「アスナ・・・・・お前・・・・受けたのか?」

「うん!・・・・・・問題あった?」

可愛らしく首を傾げるアスナ。

チクショウ!かわいいじゃねぇか!!・・・・じゃなくて!

「罠かもしんないだろ?・・・・・まぁ、見たところそうじゃないっぽいが・・・・」

男は明らかに焦っている。

しかも、なんと言うかこう・・・・・嘘をつける人間じゃなさそう?

・・・・・本当の悪党は悪党っぽく無いって言うけどな。

「あ、貴方があの『百獣王』ですか!?た、頼みます!助けてください!!」

「うおっ!?ちょっ!お、落ち着いて!話は聞きますから!!」

男が急に足元にすがってきた。

両足をがっちり掴むもんだからバランスを崩しそうになる。

「あ、ありがとうございます!そ、そのですね――――」





―――数分後―――





「―――と言うわけなんです・・・・助けてください」

「あ〜要するに、そのタイタンズ何とかってやつのメンバーをこの回廊結晶で黒鉄宮へぶち込んで来いってことですか?」

「は、はい・・・・・大雑把には・・・」

うーん、今いるパーティーにはビーストテイマーがいるとか・・・・・あってみたいな。

「でも俺って顔割れしてないか?」

俺は結構有名人らしい。

アルゴに聞いたから間違いない。

何でも俺の写真が中層プレイヤーの間で一枚5000コルの値段がつくとか?

良いやつ(頑なにどんなのかは見せてくれなかった)だと3万コルはくだらないとか。

「うーん・・・・・・そうだよね〜。けど、大丈夫だよ!使い魔を連れてなければいいんだから!!」

「それ、たぶん出来ねぇぞ?」

「そっかぁ・・・・あ、その『竜使い』ちゃんをコロッと堕としてきちゃダメだよ?」

「大丈夫、俺は決してなびかないから」

「『俺は』?ってことは『竜使い』ちゃんは堕とすかもってこと?ダメだよ、そんなの!!」

アスナがグイッと俺に近づいてきた。

「わ、分かったから!努力するから・・・・・ね?」

俺がアスナをなだめていると、後ろから声を掛けられた。

「・・・・・・・痴話喧嘩か?お前ら」

「二人とも、仲が良いね」

「キリトにサチじゃん。なに?デートですかい?仲睦まじいねぇ」

まあまあ、手までつないじゃって。

ラブラブですなぁ。

「お前、性格変わってるぞ?なんかこう・・・・・オヤジ臭い」

「リアルじゃまだ15なんだが?」

「えっ!?カイト君年下!?」

「へ?アスナ年上だったの?同い年ぐらいかと思ってたけど」

「そっかぁ・・・・・私ね、今たぶん16なの」

大胆なカミングアウトですこと。

「一つ上か。でも、関係なくないか?」

「そーだよね。私はカイト君が好きだもん!!」

おふぅ。笑顔で言われると照れるぞ、コノヤロー!

「あ、あの〜」

「あ、すいません。―――そうですね、受けましょうか。任せといてくださいな」

「ッ!!ありがとうございます!!」

さぁ〜て。悪い子にはお仕置きしなくちゃな。


その前に。

「誰を連れてけば一番分からないかな?」

案外小さくなったローズとかは、わかんないかもな。




SIDE OUT




SIDE???




――迷いの森――



「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

私―――シリカは、迷いの森で最強クラスの敵を三体、一人で相手していた。

レベル的には問題ないんだけど、まさかあの瓢箪の中が回復アイテムだったなんて・・・・

おかげで非常用の回復結晶までつかっちゃったし、使い魔のピナが回復してくれているが、心もとない。

あと2、3発食らったらアウトだと思う。

「ガアァァァァ!!!」

敵が手に持った棍棒を振り下ろしてきた。

「キャッ・・・・!」

突然のことで反応できず、当たってしまった。

チラッとHPバーを確認する。

その色はもうレッドゾーンだった。

つまり、次攻撃を食らったら―――

「よ、避けなくちゃ・・・・・!?」

私は手に持っていた短剣がないことにいまさらながら気がついた。

「ゴガアァァァ!!」

「ッ!!!」

軽いパニックに陥っていた私は次来る衝撃に身構えていた。


その時。


「キュル!!!」


ドカッ!!

ピナが私と攻撃の間に飛び込んできた。

「ぴ、ピナ!?」

私は慌てて吹き飛ばされたピナに近づく。

「きゅ、きゅる・・・・」

弱く鳴いて、力なく倒れこんだ瞬間。


パリーン・・・・


ピナの身体はあっけなく散ってしまった。

「私を一人にしないでよぉ・・・・・ピナァ・・・・・」

私の後ろで、容赦なく攻撃のモーションに入る敵。

避けようと思えば避けられる。

けれど、足が動かない。

私を支えてくれたピナがもういない。

その現実が、私の脚を凍りつかせた。

「ゴガッ・・・・・!」


パリーン・・・・・


突然、目の前の敵が霧散した。

良く見ると、他の二体まで。


その後ろには―――


「間にあ――ってないか・・・・ごめんな?君の友達、助けられなかった」



黒いローブのようなものを纏い、肩に赤い龍を乗せた男の人だった。




SIDE OUT


SIDEカイト


「間にあ――ってないか・・・・ごめんな?君の友達、助けられなかった」


今の俺はローブを着て、しかも、装備をサブの短剣にして竜使いの前にいる。

本人は助けられたが、使い魔は・・・・・

「いえ・・・・私が悪いんです・・・・ありがとうございました。助けてくれて」

「ねぇ、そのアイテム。名前ついてる?」

「名前・?・・・!!『ピナの心』・・・・ふぇ・・・・」

あわわわわ!!泣かれちゃ困る!!

「な、泣かないで!心だったら蘇生する可能性があるから!!」

「ほ、ホントですか!?」

「本当だよ。最近分かったことだからあんまり知られてないんだけどね」

「ど、どうやって・・・・?」

うん。どうやら泣き止んでくれたようだ。

「47層にある『思い出の丘』ってとこに使い魔蘇生用のアイテムがあることが分かったんだ」

「ホントですか!?・・・・あ、47層・・・・・」

ぐはっ!また落ち込んでしまった。

「俺が持ってたらあげたかったんだけど、そのアイテムは使い魔を亡くさないとでてこないらしいから」

「・・・・・ありがとうございます。情報だけでも嬉しいです。レベルを上げていけばいつかきっと・・・」

あ、一番大切なことを言い忘れた!俺のバカァ!!!

「わ、悪いんだけど・・・・・蘇生できるのは死んでから三日以内なんだ」

「み、三日!?そ、それじゃあ・・・・」

「う〜ん・・・・・あ、そうだ」

たしかあれがあったはず・・・ビンゴ!

俺は、竜使いちゃんにウィンドウを出した。

「―――っ!?こ、これって?」

「その装備を使えばレベルを十個は底上げできる後は俺が手伝えば何とか・・・・」

「な、何でそこまでしてくれるんですか・・・・?」

おぉ。こんな子までこんな慎重にするのか。

SAOはすごいな。

「同じ、ビーストテイマーとして放って置けなかったのと・・・・」

「と?」

「その・・・・・・・・君が姉ちゃんに似てるんだよ、凄まじく」

俺の姉ちゃんは凄まじいほどの童顔。

一つ上なのに俺より下、しかも小学校6年生ほどに見られてしまう。

本人はすごく気にしているようだが、実際そう見えるんだからしょうがない。

「・・・・・・・ぷっ!」

「あ、笑った!ひでぇ!!」

「ご、ゴメンナサイ・・・・でも・・・・ふふっ!」

でも、まぁ。ようやく笑ったし、いいか。

「すいません、何から何まで。私、シリカっていいます」

「俺はカイト。よろしくな、シリカ」

名前を言った瞬間に少しシリカが怪訝そうな顔をした。

うそっ!?名前だけで!?

「さ、さぁ。行こうか」

「あ、はい!」

俺は急いで声をかけて、そっちのほうから気を逸らさせた。

「ガウ!」

「キャッ!え、え〜っと?」

突然ローズがシリカの肩に乗った。

珍しい。コイツだけは俺以外の誰にも懐こうとしなかったのに。

「ははは。懐かれたみたいだね」

「は、はい。へぇ〜ピナとはまた違った感触・・・・」

うん。なんか更に元気が出てきたみたいだな。

俺たちは、地図に従って迷いの森を出た。







「へぇ〜ココが35層のねぇ〜」

「ここにある、風見鶏亭ってお店のチーズケーキがすっごく美味しいんですよ」

「そうなのか?うん、楽しみだな」

ちなみに、見た目が怪しいのに何でこんなに話しかけてくるのか聞いたところ、


「見た目が人の全てではありませんから!なにかやんごとなき理由が無きにしも非ずかも!!」


とかいわれた。

つまり、それは見た目が怪しいことを肯定するってコトか?まぁ、いいけど。

「シリカちゃ〜ん!!」

およ?誰か来た。

なるほど。人気者ってのはこーゆー子の事を言うのか。

フリーになったって噂がもう広まったのか。

「あ、あの・・・・暫くこの人と組むんで・・・ゴメンナサイ」

「えぇ〜そりゃないよ〜」

うん、なんかごめん。

横取りしたみたいになっちゃったな。

「おい、あんた」

一番背の高い両手剣士が睨みながら話しかけてきた。

身長が俺より高いところを見ると、190台前半ぐらいか?でっけ〜。

「俺たちのほうが先に勧誘してたんだ。抜け駆けしてもらっちゃ困るな」

「抜け駆けって・・・そんなの知らねぇよ。あんまりしつこいと嫌われるぞ?」

「なっ!コイツ!!」

わー!掴みかかってきたー!

「ガウア!!」

ボウッ!

ローズの口から小さい火球が!?

「あっちぃ!?な、何すんだよ!!」

「ローズ!?何やってんの!?」

「ガウ!ガウガウ!ガウア!!」

な、何だ?何が言いたいんだ?

チクショウ!こんなときに通訳役がいれば!!

「て、てめぇ!!その赤いのはテメェのか!?」

「あ、あぁ。そうだが?」

「なめた真似しやがって!デュエルだ!!」

「はぁっ!?何でだよ!?」

「あ?何だ怖いのか?所詮ローブで顔を隠すような臆病者だもんな」

あ、ムカ。

「いいじゃねぇか、クソヤロー。泣いて後悔しても知らねぇぞ」

「は!泣くのはどっちかな!!」

俺たちは、不安げな表情を浮かべるシリカを尻目に広い中央広場に向かった。


SIDE OUT



SIDEシリカ




「本当にいいんだな?後悔するぞ?」

「はっ!誰が腰抜けになんか負けるか!!」

「腰抜けじゃねぇっていってんだろ!!」

先ほどからずっとこんな調子。

ローズと呼ばれた赤い龍は私の肩に乗っている。

カイトさんは確かに強い。

あのドランクエイプを一撃で倒しちゃうくらいだから相当なんだろうと思うけど・・・

今対峙しているあのプレイヤーはボリュームゾーンの中ではトップレベル。

本気で攻略組入りを狙ってるほどのプレイヤー。

いくらカイトさんでも、危ないと思う。

いつの間にかデュエル申し込みが受諾され、カウントダウンが始まっていた。

「俺が勝ったら大人しくシリカちゃんから離れろ」

「・・・・・いいぜ。負けるわけないからな」

カウントが0になり、試合開始のブザーが鳴った。

その瞬間。

ドンッ!!!という音と共に

「えっ!?消えた!?」

カイトさんが消えてしまった。

い、一体ドコに!?

ビー!!

「お、終わった?」

良く見ると、いつの間にかカイトさんが相手の後ろにいて、相手はその両腕の肘から先が斬りおとされていた。

「いやぁ〜やっぱ短いのは慣れねぇや」

「お、お前・・・・一体・・・」

「あん?まだいたの?帰ったら?」

「くっ・・・・!」

相手は尻尾を巻いて逃げていった。

「ん〜・・・・やりすぎた?」

「カイトさん!」

私は急いでカイトさんの所へ向かった。

「ん?あ、ごめんね。怖がらせちゃったかな?」

「い、いえ。カイトさんはいい人ですから」

「ははは。こんな見た目の男にいい人だなんて、物好きだねぇ」

「も、物好きって!酷くないですかぁ!?」

「わぁー怒ったー。こわーい!」

すごい棒読みで言った後、カイトさんが逃げていった。

そこにはさっきの凄まじいスピードはなく、私でも追いつけるほどだった。

「待ってくださいよー!!」

私は、カイトさんを追っていった。


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あとがき

どうも、お久しぶりです。

最近、性懲りもなく新しいものを書き始めてしまい、そっちばっかり書いていました。

待ってくれていた方には、大変申し訳ないことをしてしまいました。

これからは、順番に更新していこうかと。

この小説もようやく原作に戻ってきたので、早く書き上げれそうですし。

じゃあ、次回はハイスクールD×Dの方ですかね。

では、コメントもらえると嬉しいです。

さよなら〜



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