小説『君の隣で、』
作者:とも()

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◆第三話





時は流れ12月上旬。

俺は現在、蒼の部屋で勉強している。

あまり勉強が得意な方ではない俺が何故勉強しているのかというと、現在試験期間中であるためだ。

試験開始から二日目、二週間前から蒼に勉強を教えてもらっているため、今のところは無事に各教科をクリアしている…と思う。

今日も午前中の試験が終わった後に一度家に帰り、昼からは葛城家にお邪魔して蒼の部屋で勉強しているのだ。

中学の頃から試験期間はこうやって蒼にお世話になっている。

中学に入学してから初めてのテストで俺が物凄い点数を並べたからだ。



しかし今日はいつもと違い、俺と蒼の他に俊吾と薫も加わっている。

明日ある英語の試験は俺にとってはもちろん、俊吾と薫にとっても大いに頭を悩ませるほど過酷なものなので、それならみんなで蒼に教えてもらおう、ということになったのだ。

どうせいつも俺に勉強を教えているから人数が増えても問題はない、と蒼も快く引き受けてくれた。



蒼、俊吾、薫は、蒼が出した小さなテーブルで勉強している。

俺もそちらに混ざって勉強したかったが、そうすれば少し狭くなってしまうので、今日はベッドで寝転がりながら教科書やノートを開いている。

少し文字が書きにくい。




「蒼、ここわかんねえんだけど」

「ああ、ここはな、このthatが……で、この前の………」

「ふむふむ」


蒼は隣に座る俊吾の教科書を覗き込む。

シャーペンでいろいろ書き込みながら説明する蒼に、俊吾は何度も頷く。

やっぱり蒼は教えるのも上手いな、と思いながら、俺は自分の手元に視線を戻す。

俺は沢山チェックされた箇所を覚えるために、ひたすら何度もノートにそれらを書き写していた。

蒼は試験の度、これは覚えておいた方がいいという箇所を俺のためにチェックしておいてくれるのだ。

本当に蒼には頭が上がらない。



「…よし、そろそろ休憩すっか」


蒼の言葉に時計を見上げると、針は3時を指していた。

いつもこの時間に一度休憩をいれるのだ。

リラックスするために俺はぐっと腕を伸ばした。


「何か飲み物入れてくるわ」

「手伝おうか?」

「いや、大丈夫」


立ち上がった蒼に俺もついて行こうとしたが、やんわり止められる。

では、ここは甘えることにしよう。

パタンと扉が閉じられ、とんとんと蒼が階段を下りる音が聞こえる。

俺は教科書とノートを閉じた。



今日の試験は苦手な教科だったので、結局徹夜で勉強をしたのだ。

さっきまでは勉強に集中していたために眠くならなかったが、今になってどっと眠気が襲ってくる。

少し寝ようか、そんなことを考えていたら俊吾が口を開いた。

-12-
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