小説『君の隣で、』
作者:とも()

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全ての試験が終わった。

まだ12月中旬の手前なのだが、進学校である我が高校は大学入試に備えて早めに学期末試験を行うのだ。

だから俺達は試験終了の開放感に満ち溢れ、後は冬休みを待つだけなのだが、3年生はといえば試験が終わった後も気を抜くことなく勉強を続けなければならない。

むしろ今からが勝負どころ。

本当に大変だと思う、2年後を想像したくない。



そして今日は俊吾がセッティングした合コンの日。

俺達は夜の7時に集まり、街中にある小さな飲食店へと入った。

俊吾が予約してくれていたのだろう、座敷へと案内された。

男性陣は俺、蒼、俊吾、薫、あと俊吾の友達が二名、女性陣はN高の七名だった。

俺は一番右端に座り、その隣に蒼が腰を下ろした。



やっぱり断っておけばよかったと思った。

N高はお坊ちゃまお嬢様が通うというので有名な高校だ、今前に並んでいるのはド派手なメイクをし、露出度の高い服を着た子ばかりだ。


あれ、本当に俺達と同い年なのかな。

ここにいるの、皆高校生だよね?


俺は前に並ぶ目の周りが真っ黒な女子達を眺めながら、気付けば手を物凄い力で握っていた。

手汗が凄かったけど、そんなことは気にしていられない。

実は俺はこの手の女子が大の苦手だった。

苦手というかなんというか…怖い。

進学校である我が高校には地味な女の子が多いが、清潔感があるからまだそっちの方がいい、全然いい。



俺が一人でびくびくしていると、俊吾が司会をどんどんと進め、お互いの自己紹介が終わり、それぞれ自由に話しながらご飯を食べようということになった。

俺は気を紛らわすために何か食べようと割り箸を割ると、俺の気を察してか、蒼が俺の取り皿を手に取った。


「どれがいい?届かないだろ、取ってやるよ」


いろいろ緊張していたせいか、思いがけない言葉に俺はびっくりして蒼の顔を見る。

そんな俺を見て蒼は苦笑いを零しながら、俺の耳元に顔を寄せて小さな声で呟いた。


「お前、派手な女苦手なんだろ」

「げっ、なんで分かったんだよ」

「顔見りゃ分かるよ、…俺も苦手」


そう言った蒼に、俺も苦笑いを零す。



それからは、俺は蒼と喋りながらご飯を食べていた。

俊吾と俊吾の友達が盛り上げ役となっていたので、女子達はみんなそっちの話を聞いている。

今日どうしても俺と蒼に来てほしかったらしく、今日は俊吾の奢りということで話がついていたので、俺達は気兼ねなくどんどん箸を進めた。

「蒼、あれ取って、あとあれも」

「はいはい」


俺は蒼に凭れながら左手の方にある料理をいくつか指すと、蒼は当たり前のようにどんどん取り皿へと移してくれる。

それを見ていた前に座る女の子が、ふいに口を開いた。


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