小説『君の隣で、』
作者:とも()

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「蒼君と直也君って仲いいんだねえ」

「へっ?」


突然話を振られたもんだから、俺は蒼に凭れたまま目をぱちくりさせる。

盛り上げていた俊吾達は前の女の子の言葉に気付き、話題を俺達へと変えた。


「そうそう、幼なじみだからこいつら仲いいんだよ」

「へえ、そうなんだ」

「学校でもいつも今みたいにベタベタしててさあ」

「してねえ」


俺は俊吾に否定の言葉を返したが、俊吾はにやにやと笑いながら、またまたあ、と言う。

何がまたまたあ、なんだ。

俺は何か言葉を返そうと口を開いたが、その口に蒼がから揚げを詰め込んできた。


「むぐっ」


いきなりのことで驚いたが、蒼が俺の口に入れてきたから揚げは思いのほか美味しかったので、大人しく食べた。


「まあまあ、ウケてるからいいだろ」


周りを見ると女子達は笑っているので、俺もまあいいか、と思い、一度頷いて返した。



それからは女子達も俺と蒼に頻繁に話を振るようになった。

俺もだんだんと女子達のテンションに慣れ、まだ少しぎこちないけれど普通に話せるようにはなった。

蒼はといえば苦手だと言っていた割りにすんなりと話に入り込み、笑顔で言葉を交わしていた。

そこはさすがモテ男、といったところか。

俺の前に座る沙希ちゃんという女の子は、俊吾達の話を聞くのを止めて俺達へと話しかけてきた。

話している内に分かったのだが、他のテンションが高い女子達と比べると少し大人しめの女の子だ。

だから俺も抵抗なく楽しく会話ができていた。



だが、もう一つ分かったことがある。

どうやら沙希ちゃんは蒼に気があるらしい。

蒼へ向ける視線が他の奴に向ける視線と違うことに俺は気が付いた。

そう気付いた後に意識して沙希ちゃんの言葉を聞いていると、その口から出る言葉の数々は蒼のことをいろいろ知ろうとしていたり、仲を深めようとしている言葉だった。

それらの言葉に笑顔で答える蒼。


ズキン。


あ、れ…。

どうしてだろう、胸が少し痛いような気がする。

蒼が好意を持ってもらえて嬉しいはずなのに。



俺は何故か、少し寂しかった。

何故寂しいのかなんてよく分からなかったけど、蒼を少し遠くに感じたような気がした。

俺はこの気持ちの意味が分からない上になんだか不快で、次第に口数が少なくなり、最後の方は黙ってジュースを飲んでいた。









その後しばらくして合コンはお開きとなった。

店の外で一度集まると、俊吾が口を開く。


「さっき由紀ちゃんと話したんだけどさ、これからカラオケ行くことになったんだ。行ける人いる?」


俊吾がそう言うと俊吾の友達、そしてどうやら強制されたらしい薫、女子達全員が行くということが分かった。

俺は少し悩んだが、今日はあまり乗り気ではなかったので、断ることにした。


「俺はやめとく」

「そっか。蒼は?」


さすがにこの後も付き合わせるのは悪いと思ったのだろう、今回は無理に誘うことはなかった。

俊吾が蒼の方を向くと、蒼は迷わずに返事をした。


「俺も帰るわ」

「了解。じゃあここで解散ってことで。また学校でな」

「おう、じゃあな」

「お疲れー」


それぞれ別れの言葉を言った後、俺と蒼は駅に向かって歩き出した。

皆の声が聞こえなくなってから、蒼は俺の顔を見て口を開いた。


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