◆第四話
合コンから三日経った。
あの日から毎日沙希ちゃんからメールが来る。
内容は明らかで、蒼の連絡先を教えてほしいといった内容だった。
蒼が断ったことを思い出すと俺はどうしても教える気にはなれなくて、蒼はメールとか嫌いだから、といくつか理由をつくって断っていた。
蒼と毎日一緒に登下校しているが、沙希ちゃんの話は一切出さない。
というか、沙希ちゃんのメールには少しうんざりしてきたので、沙希ちゃんの話を俺がしたくなかったのだ。
教室に入るやいなや、俺は先に来ていた俊吾に腕を引かれた。
俺も蒼も頭の上にはてなマークを浮かべたが、俺はあっという間に俊吾に腕を引かれて廊下へと出た。
少し歩き、誰もいない空き教室へつれて来られると、俺が何かを言う前に俊吾が徐に口を開いた。
「沙希ちゃんが蒼のアドレス教えてほしいってずっと言うんだけど」
何の話をするのかと思えば、俊吾はいきなり沙希ちゃんの話をし始めた。
俺の小さな悩みの種の一つなので、沙希ちゃんの名前が出た瞬間、俺は少し頭が痛くなった。
「俺だって言われてるよ」
「俺が蒼に頼んでも駄目なんだ、メールなんて面倒くさいって蒼の奴が」
「そういう奴なんだよ。蒼だって迷惑だろうし…」
「由紀ちゃんにも頼まれたんだよ」
俊吾があまりにも思い詰めた顔で言うもんだから、断固として拒否しようとした俺は仕方なく耳を傾ける。
「沙希ちゃん、本気で蒼のことが好きになっちゃったみたいでさ、あれから思い詰めてるんだって。お前くらいなんだよ、頼めるの」
「…」
「どうしても駄目って言うならいいから、一度蒼に聞いてみてくれないか?お前にしか頼めねえんだよ」
お願いっ、と俊吾は顔の前で手を合わせる。
沙希ちゃんはそんなに蒼のことが好きだったんだな、少し気があるだけかと思っていたのに。
そう考えると、俺は勝手に理由をつけて断ってきたことを申し訳なく思ってしまった。
「わかった」
俺の言葉に俊吾はありがとう、と笑顔で返した。
本当は嫌だった。
何故かは分からないけど、沙希ちゃんが蒼に近付けるように計らうことを考えたら少し胸がむかむかした。
でも沙希ちゃんは思い詰めてしまうほど蒼のことが好きなのだ。
それくらい蒼のことを想っているのだ、俺が勝手に判断していいものじゃないと思うし、一番蒼と仲がいいのは俺だから、俺が頼んでも駄目だったら沙希ちゃんも諦めがつくかもしれない。
いつ蒼に話そう、と考えているとチャイムが聞こえたので、俺達は足早に教室へと戻って行った。
「えっ、雨!?」
今日の授業を全て終え、HRが終わり、俺はいつも通り蒼と下駄箱へ向かった。
スニーカーに履き替えて校舎を出ると、外は雨。
さっき教室で見た時は降っていなかったのに、そりゃあ今にも降りそうってくらいに曇ってはいたが。