なんとか携帯を見つけ、アドレス帳から蒼の名を探す。
メールを打つ気力もないので、俺は迷わず通話ボタンを押した。
しばらく鳴るコール音。
どうか出てはくれないか、俺は心の中で祈った。
『留守番電話サービスに―――』
数回のコール音の後、聞こえてきたのは何度も聞いたことのある女の人の声だった。
やはり、出てはくれなかった。
少しの期待を抱いてみたが、駄目だった。
電源ボタンを押そうとした時、ピーと録音開始の合図が耳に入る。
「…そ、う…」
気付けば俺は、蒼の名前を呼んでいた。
蒼が聞いているわけではない、そう分かっているのに俺は蒼に縋るように話し続ける。
「…蒼…ッ」
もう一度蒼の名を呼ぶ。
何故だろう、胸が苦しくなって涙が溢れてくる。
「…話が…、したい…」
喋るのも辛い、けれど俺は一語一語深く息をしながら何とか言葉を発した。
蒼が聞いてくれるかもしれない、蒼に聞いてほしい。
そんな想いが俺の心の中を満たし、必死に言葉を紡いだ。
「……会いたい…ッ」
泣いているせいだろうか。
最後は声が上擦っていた。
呼吸を整えようと深くゆっくりと息をしようとするが、どうしても呼吸が速くなり、嗚咽が漏れる。
他に何か言わなければ、そう考えている内に録音終了の音が耳に入った。
なんだかその音は俺と蒼の関係を終わらせるような音にも聞こえ、俺の胸を酷く苦しくさせた。
頭が、痛い。
もう一度寝ようと目を閉じると、案外すぐに眠りに落ちることができた。
気分の悪さに俺は目を覚ました。
視界に広がる天井はオレンジ色に染まっていた。
もう夕方だ、この二日間俺は寝てばかりのような気がする、あと泣いてばかりでもある。
ほとんど何も食べていないせいか、胃のあたりがきりきりとして気分が悪かった。
体を動かす気にはなれない、かといってこのままだと再び眠ることもできない。