小説『君の隣で、』
作者:とも()

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俺は蒼に貰ったクマさんを飾ってはいないけれど、きちんと丁寧に閉まってある。

蒼はあの貝殻をどうしたのだろう、もう捨ててしまっただろうか。

そう考えると俺は少し寂しい気持ちになり、無意識の内に黙ってしまっていた。

そんな俺を薫はしばらくの間見つめると、俺から視線を逸らし、重そうに口を開いた。

「…直也」

「ん?」

「今日誘ったのは親のプレゼントを買うのに付き合ってほしいからとか、クリスマスだからとかそんなんじゃなくて…本当は話したいことがあったからなんだ」

「…」

「聞きたいことがある」


薫はそう言うと、再びレジに向かって歩き始めた。

彼の言葉はどこか真剣で、俺は少しの間を置いて、わかった、と一言返し、薫の後をついて行った。






あの後手袋も無事に買い終わり、俺達はこのデパート内にある小さな喫茶店へと足を運んだ。

テーブルに案内された後、店員は暇なのか、メニューを見ている俺達の隣に立ってずっと待っている。

今この喫茶店にいる客は俺達だけだ。


「んー、じゃあ俺はソーダフロートで」


メニューを畳みながら店員の方へ向きそう言うと、店員は黙々と伝票に書き込んでいく。


「さすがおこちゃま」

「うるせえ」

「俺は…ミルクティーにしようかな」


俺の時同様、黙々と書き込んでいく店員。


「…はい、かしこまりました。少々お待ち下さい」

「はーい」


薫もメニューをパタンと閉じると、店員は机に置かれた二つのメニューを手にとって奥へと下がって行った。

…もう一度言うが、今この喫茶店にいる客は俺達だけだ。

俺も薫も黙ってしまうと自然と沈黙が訪れる。

別に普段なら薫との沈黙なんて何も居心地の悪いことなんてない、しかし今は真剣な話をしようという前だ、酷く落ち着かない。

俺は店員が置いていったお冷やを手に取り、一口含んだ後、何かを話そうと口を開いた。


「…えーっと、話っていうのは…」

「あ、ああ」


俺の言葉に薫は視線を漂わせながら、なかなか話し始めようとはしない。


「あー…、えーっと…その…、うーん…」

「なんだよ、話さないのか?」

「いや、その…今思うと俺が聞いていいことなのかなあ、なんて思って…」

「えっ、呼んでおいて今更過ぎ!」


薫の言葉に俺は思わずこけそうになる。

さすがにこけられないのでつっこむだけにしておく。

「もし話したくなければ、嫌だって言ってくれればいいから…」

「分かった。ちゃんと言うからなんでも言ってみろ」

「…あのさ」


薫は一口水を飲むと、テーブルの上で手を組み、俺と視線を合わせた後、こう言った。


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