「…蒼と、何かあった?」
俺は薫の言葉に一瞬、全身が硬直する。
しかしなんとかすぐに思考回路を回復させた俺は、薫に返す言葉を懸命に探した。
よく考えると、いつかは誰かに聞かれるであろうことだったのだ。
特に薫は学校でも俺や蒼と仲がよかったので、俺達の関係の変化に気付くのも当たり前のことだった。
隠すことはできない、俺はそう判断した。
「…うん」
「やっぱりそうか」
「分かるよな、やっぱり。はは…」
俺は薫に心配を掛けさせまいと自然と笑おうとしたのに、口から出た声は作り笑いだと言っているような声だった。
そんな俺を見て薫は眉間に皴を寄せる。
「別に無理して笑わなくていいよ。…最近のお前さ、俺と話してる時もどこか上の空だし、たまに無理して笑ってるなって思う時もあったから」
「…」
「…お前のこと、心配なんだ」
「薫…」
薫の優しさが俺の胸にじーんと広がっていく。
俺、今二人っきりなら泣いていたと思う。
てか俺、最近泣いてばかりだな、女か。
でも二人っきりではないので泣かない、店員さんがソーダフロートとミルクティーを持ってきた。
「…何があったか、聞いてもいいか?」
店員が去った後、薫がそう言う。
俺は迷った、薫は蒼が俺を好きになったことが原因だなんて想像もしていないだろう。
同性を好きになった蒼を嫌わないだろうか、と俺は馬鹿なことで悩んでいた。
けれど次の薫の言葉で、俺に迷いは無くなった。
「あんなに仲の良かったお前らがこうなったんだ、いろいろあったんだろ。俺は何を聞いても受け止めるから」
なんでこんなにいい奴なんだ、薫は。
薫の言葉に胸が打たれて何も言えずにいると、薫は俺の気を和らげるためか、柔らかい笑みを浮かべた。
本当に、薫は最高の友達だ。
俺は薫になら何を話しても大丈夫だと確信した。
「…誰にも、言わないでくれよ」
俺は一度深く深呼吸をすると、これまでのことを全て薫に話した。
……………
「…そっか」
薫は俺の話を落ち着いた表情で聞いてくれていた。
俺が話し終えた後も薫は表情を変えずに数回軽く頷いて見せる。
「…蒼のこと…」
「馬鹿、嫌ったりするわけないだろ。俺は同性愛とか否定しないよ、相手が男でも女でも本気で好きになれるって凄いことだと思うし」
薫が蒼のことをどう思ったのか少し心配になったが、俺が何を言おうとしたか理解した薫は笑顔でそう言った。
その言葉に俺は安心したが、次に発せられた薫の言葉に俺は驚くことになる。
「てか、正直言うと、なんか納得した部分も多いっていうか、やっぱりなって感じ」
「えっ」
俺は驚きの余り立ち上がりそうになったが、どうにかそれを押さえる。
けれど声までは押さえ切れなかった。
「は?えっ、ちょ…、お前気付いてたの?」
「気付いてたってほどじゃないけど…、まあ、なんとなくな」
話している最中に薫が驚かなかったわけだ。