「…あは、あははははは」
…全然、ごまかせていない。
俺の口から出た笑い声はまさしく作り笑いとでもいったような…、とにかく嘘臭い笑いだ。
馬鹿、俺の馬鹿、下手くそ。
ああ、真由ちゃんにもバレバレだ、少し顔を顰めている。
「何、喧嘩でもしたの?」
「…ま、そんなとこ」
厳密に言うと違うのだが、事情が事情なだけに事細かに説明するのは抵抗がある。
蒼に告られたなどと、蒼の姉である真由ちゃんに言うべきでは…。
「あ、もしかして蒼に告白された?」
……うん?
「なんだ、そういうことかあ。どおりで蒼も元気がなかったわけだ。もう、打たれ弱いんだから」
「え、ちょ、真由ちゃん…?」
全くあいつは、と言いながら真由ちゃんは大袈裟に溜め息を吐いて見せるが、俺は全く話についていけない。
俺が混乱しているのに気付いた真由ちゃんは、笑いながら俺の肩をバシバシと叩く。
「あ、あたしね、蒼があんたのこと好きなの知ってるから。気にしないで」
気にしないで…、いや、気にする気にする。
仲のいい姉弟だとは昔から思っていましたよ、…でもなんでそこまで知ってんの?
いくらなんでも姉が弟の恋愛事情を…、しかもお隣さんの同性の幼なじみを好きだという恋愛事情を知っているなんて…。
「あっ、もしかして今日暇だったりする?」
急に話が変わったが、俺の頭の中はなかなか切り替わらない。
とりあえず一度こくりと頷いて見せた。
「今から買い物に行くんだけど一緒に行かない?聞きたいこともあるし」
「…いいよ、俺も聞きたいことあるし」
じゃ、決定!と真由ちゃんは嬉しそうに言った。
恐らく荷物持ちをさせられるんだろうけれど、この際問題では無い。
聞きたい、真由ちゃんがどこまで知っているのか聞きたい。
聞きたいことが本当に多すぎる。
「じゃっ、さっさと準備して」
「はーい」
外で待ってるからあ、と言う真由ちゃんの声を聞きながら、俺は後ろ手に玄関のドアを閉め、着替える為に二階へ向かった。