「で、蒼にはいつ告られたのよ」
「えっと…、半月ほど前だったと思う…」
「なんて言われたの?どんな感じで?」
「えっ…それは…」
結局この後、俺は真由ちゃんの質問に一つ一つ答え、結果として蒼と何があったかを事細かに全て話してしまった。
恋路が関わると女は凄い…、聞き出すのが上手すぎる。
あと真由ちゃんに関しては年上ということもあるから、経験の差もあるのだろうけれど。
とにかく俺は自分でも驚くほどすらすらと今までのことを真由ちゃんに話してしまった。
まあ、と溜め息交じりに呟いた真由ちゃんは、テーブルに腕を置いて言葉を続ける。
「急にいろいろあってびっくりしたと思うけど、あの子ずっとあんたのこと好きだったから。分かってあげて」
「うん…」
真由ちゃんから直接話を聞くと現実味があるというか何というか…、いや、今までも十分現実としてちゃんと受け止めていたけれど。
「あの子なりにいろいろ悩んでたのよ、たまに相談してきてたし」
「相談?」
「うん。直也、高校に入ってから結構女と絡むようになったでしょ?そのことで話を聞いたこともあったし、あとは…」
「…そうなんだ。…ああああ、そうなんだあ…」
俺は自分の顔を両手で覆い、項垂れた。
人には弱味を見せない蒼なのに。
姉と謂えども、真由ちゃんに相談させてしまうほど俺は蒼を追い詰めていたのだ。
蒼は何年も俺が好きで、何年も俺を見ていて、それなのに俺は何も知らずにただ蒼に甘えてへらへらして女の話もして…。
今まで蒼が一緒にいてくれたことの方が何だか不思議に思えてきた。
「まっ、元気を出せ少年。青春に悩みはつきものだ」
ぽんぽん、と俺の頭に手を置いてそう言う真由ちゃん。
軽く言うけれど、俺にとってはとても重みのある問題なのだ。
「…で、蒼はさ、もう直也とはいられないって言ったんだよね?」
「…うん…」
隣にいさせてほしいと言った俺を、蒼は拒絶した。
どうすることもできずに、俺はただその現実を受け止めるしかなかった。
あれからいくらか時が経ったが、蒼との距離に慣れることはないし、隣に蒼がいない寂しさが消えることも無い。
「…やっぱさ、蒼も辛かったと思うんだ。報われない恋だし…」
「…」
報われない、恋。
きっとそれだけでも辛いはずなのに、蒼は俺の何気ない言葉や行動によって何度も苦しんだことだろう。
「だからね、蒼が距離を置きたいって言うならそうしてあげてほしいの。直也も辛いかもしれないけど…。きっと時間が経てば、また元の関係に戻れるわよ、あんなに仲が良かったじゃない」
「…そうかな…」
「そうよ。今は一人で心の整理をする時間が必要だと思うの。…だからしばらくは…ね、あたしからもお願い」
一人で心の整理をする時間…。
確かに必要な時間かもしれない。
…蒼だけではなく、俺にも。