小説『君の隣で、』
作者:とも()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

◆第二話





季節は秋。

少し赤くなり始めた木々の葉が至る所に落ちているが、日差しはまだまだキツイ。



現在俺達のクラスはグラウンドで数日後に控えている体育祭の練習をしている。

俺と蒼は帰宅部にも関わらず、体育部の奴らを押しのけてリレーに出ることになっていた。

入学したばかりの頃に行った体力測定の結果を見ながら、クラスの代表者達がメンバーを組んだのだそうだ。

蒼はアンカーまで任される始末で、心底面倒くさがっていたのを俺はなんとか宥めた。

俺は大勢の前で走るのは中学の大会以来なので、結構わくわくしていたりする。

6人で1チームのこのリレーにおいて、俺は5走者だった。

グラウンドの中心で二人三脚や障害物リレーの練習をしているクラスメイトとは離れ、俺と蒼はトラックに沿ってバトンパスの練習をする。


「こうやってると、中学の頃を思い出すよなあ」


俺が渡したバトンを歩いて渡しに来た蒼にそう言いながら、俺は中学の頃を思い出す。

俺と蒼は陸上部において短距離走がメインの種目だったわけだが、蒼はもちろん、部内でも短距離走に自信のある方だった俺は、蒼と共にリレーで賞を獲ることもあった。

その頃にしていたバトンパスの練習を思い出して、俺は思わず笑顔になる。

そんな俺を見て、蒼も笑みを浮かべた。


「だな。そう考えると結構やる気出るなあ。バトンパス、ミスすんじゃねえぞ」

「当たり前だろ」


にっ、と笑みを浮かべて右手を上げる蒼。

その手の平を自分の右手で叩きながら俺も笑って応えた。



「直也、蒼!通しでパス練習しようぜ」


俺達の元に駆け寄りながら、クラスメイトの俊吾(シュンゴ)がそう言った。

彼はこの高校に入学して出会ったのだが、俺と蒼とウマが合い、よく行動と共にしている。

身長が低く目がくりっとしている彼は、可愛らしい容姿からは想像もつかないほど足が速いのだから驚きだ。


「おっ、了解」

「じゃあこの通しでラストな」


蒼がメンバー全員に聞こえるように言うと、それぞれ返事をしたり手を上げたりして反応を示した。

最初こそは面倒くさがっていた蒼だが、やると決まればちゃんとやる奴だ。

自分の仕事をこなすだけではなく、こうやってみんなをまとめてしまうのだから、やっぱり蒼はかっこいいのだと思う俺だった。




「ああ疲れた。昼飯食おうぜ昼飯」


4時間目の体育が終わり、着替えを済ませた俺達は教室に戻る。

今は昼休み、いつも通り俺は蒼、俊吾、薫(カオル)と教室の窓辺の席に座る。

薫も俊吾と同様、高校に入学して出会った友達の一人だ。

周りからは怖そうとよく言われる薫だが、実はそんなことはなく、口を開けば友達想いのいい奴なのだ。

親しいものに向ける彼の柔らかい笑顔は、男の俺だって癒されるくらいだ。



半数近くの生徒は食堂を利用するため、昼休みの教室は授業の合間にある休み時間と比べると少し静かだ。

それぞれ弁当を開け、食べ始めたところで、俺は先ほどから気になっていた疑問を薫に投げ掛けた。


-5-
Copyright ©とも All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える