小説『君の隣で、』
作者:とも()

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「お前がフランスに行くって分かっていたら、俺はあんなこと言わなかったのに…。最後まで親友でいられたのにな」


そう言いながらくしゃりと前髪を掴む蒼は、少し泣きそうに見えた。

もう日も落ちて暗いから、気のせいかもしれないけれど。


「最後に嫌な思い出つくらせてごめんな。やっぱ俺はお前の親友にはなれないのかもしれない」

「…馬鹿、そんなことないって」


珍しくマイナス思考な蒼に、俺は軽く背中を叩く。

蒼がそんなことを言い出すなんて、俺は全く想像もしていなかった。

蒼の気持ちはもちろん迷惑ではない、俺は蒼が再び俺の元へ戻ってきてくれたような気がして嬉しくなった。


「俺は蒼のこと、親友だと思ってるから」

「直也…」


蒼は俺の方を見て、どこか申し訳なさそうに俺の名を呟いた。

そんな蒼を励ますようににっと笑うと、蒼は、ありがとう、と小さく呟きながら優しく微笑んだ。

俺の大好きな、蒼の顔だ。



やっぱり蒼の隣は温かくて、俺の一番の場所だと再確認する。

離れることになったのは本当に残念だが、最後に仲直りできて俺はよかったと思う。


「あのさ、直也」

「ん?」

「明後日…、空港まで見送りには行けない、ごめん」


謝る蒼に、俺が笑顔で言葉を返す。


「いいよ、学校あるだろ。飛行機の時間も昼だから合わないし」


少し残念に思ったが、蒼からその言葉が聞けただけでも俺は嬉しかった。

今までのままならそんな言葉を交わすこともなく、俺は日本を発っていただろう。


「それもあるけど…、俺、絶対に泣くからさ」


苦笑いを零しながらそう言う蒼に、俺は見送れられた時を想像した後、俺もだ、と言葉を返す。

そして二人で顔を見合わせて笑った。


「携帯、まだ使えるよな?」

「ああ、今月いっぱい使えるから大丈夫」

「じゃあ、電話するな」


そう言って俺の頭をくしゃりと撫でる蒼。

電話、今の俺にとっては十分過ぎるくらいだ。

楽しみに待ってる、俺がそう言うと蒼は俺の大好きな顔で笑ってくれた。



気が付けば家の近くまで来ていた。

このまま普通に家に帰ってしまうのかと思うと、俺は蒼と離れるのがとても嫌だった。

明後日国境を越えて離れてしまうというのに俺はまだ蒼に縋ろうとしているのか、俺はそんなことを考え少し自嘲気味に笑った時だった。

「直也」


俺の家の前に来た途端、立ち止まる蒼。

声の調子が先ほどよりも幾分か真剣なような気がして、俺の肩は少し硬くなる。


「な、何?」

「…俺さ」


俺の方を向いた蒼の顔を見上げる。

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