『今まで一人で勉強できなかったくせに。…ちゃんと勉強しろよ』
「わかってる、今までの勉強を思い出しながら頑張るよ」
『お前は書かなきゃ暗記できないからな。読むだけじゃ駄目だぞ』
「わかってるよ、大丈夫」
『それから…』
それから…、そう言った蒼の声は心なしか少し震えている。
俺は気付かないふりをして蒼の言葉に耳を傾け続ける。
「うん」
『…それから、体調管理はちゃんとしろよ。お前、すぐに体調崩すから』
「うん、気をつける」
『最初はいろいろ慣れないだろうから、絶対無理すんなよ』
「わかった、ありがとな」
『それから…、……っ』
蒼の声が、震えた。
息を吸う音が大きく聞こえるのはきっと気のせいじゃない。
『…それから…っ、さ…』
「うん…」
『…早く、帰って来いよ…ッ』
うん、と答えると、蒼はいつもより上擦った声で、はは、と小さく笑った。
『馬鹿だな、俺…。泣きたくないから電話したのに…っ、結局、泣いてるし…』
「…」
『…ごめん、な…ッ』
「…いいよ」
だって、俺も泣いてる。
次々と止め処なく、涙が溢れて来る。
それを拭うこともなく、ただ涙は頬を伝った後に膝に落ちて行くばかりだ。
きっと拭ったって意味がない、しばらくこの涙が止まることは無いだろう。
『…俺、』
「…」
『やっぱ、お前が好きだ…ッ』
「…うんっ」
『ごめん…っ、すげえ、好き…』
蒼の言葉が、俺の胸に染み渡る。
胸の奥から何かじわじわと熱いものが溢れ出し、それに全身を包まれるような感覚。