小説『君の隣で、』
作者:とも()

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『…ごめん、今だけでいいから…』

「蒼…ッ」

『今だけ、言わせて…っ』

「っ…」

『…好きだ…ッ』


好きだ、…その言葉が俺の胸を強く締め付けた。

蒼の言葉が切なくて、ただ胸が苦しくて、俺の涙の勢いは増す。

そして、この想いも…溢れてしまった。





「今だけなんて、言うなよ…!」



電話の向こう側で、蒼の息が止まる。

自分でも何を言っているのだろうと思った。

言わないと、伝えないと決めていたのに。



けれど今の俺にとって、そんな過去の決意はもうどうでもよかった。

ただ想いが次々と溢れる。

それに従うままに。



もう、止められない。



「蒼…、俺のこと、好きでいて…っ」

『…』

「ずっと…、ずっと…ッ」

『…直也、それって…どういう…』









「俺も…、好き…ッ」










もう、取り返しはつかない。

伝えてしまった、蒼に…伝えてしまったのだ。

この想いを止めることも消すことももうできないのだと、誰に言われたわけでも決められたわけでもないけれど、ただ俺は確信を持ってそう思った。

俺は蒼が好きで、これからもずっと好きで、そしてもうすぐ蒼のいない世界に行くのだ。

そんな現実が俺の胸に寂しさ、悲しさ、切なさ、その他もろもろの感情を生み出し、それがぐちゃぐちゃになって俺の中を掻き乱す。

俺は訳が分からなくなってただ泣くしかなかった。

もう、子供みたいに泣いた。

周りの目なんてどうでもいい、気にしている余裕なんか無い。


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