俺の言葉に驚いたらしい蒼はしばらく何も言わずに黙っていたが、あまりに泣いている俺に呆れたのか、うんざりしたような声で言葉を発した。
『馬鹿、どんだけ泣いてんだよ…』
「だって…、ううぅ…ぐずッ」
『てか、なんで今言うんだ、馬鹿野郎…ッ、泣きたいのは俺の方なんだからな…っ!』
泣きたい、そう言いながら、もう泣いてるじゃないか。
なんて、そんなつっこみを入れられる程今の俺には余裕など無かった。
「仕方ないだろ…ッ、一昨日、気付いたんだからあ、俺だって訳わかんねッ…、…ぅわああっ」
『五月蝿いっ、馬鹿、直也のあほ、…うっ、ほんと…馬鹿…ッ』
電話越しの蒼も、かなり泣いていた。
滅多に泣かない蒼が、一生分じゃないのかっていうくらい泣いている。
もう何が何だか分からなくなって、俺は意味の分からないことばかり言っていた。
泣きながら話すもんだから途中から声が出なくなって、最終的にはただ泣くだけだった。
蒼も何も言わなくなって、電話越しに聞こえるのは嗚咽とたまに鼻をすする音。
戻ってきた父さんは顔をぐちゃぐちゃにさせて泣いている俺を見て慌てふためくし、母さんは周りの目を気にしてトイレで手を洗った時に使ったであろうハンカチを俺の顔に擦り付けてくるし。
それでも俺は電話を切ることなく、ただ泣き続けた。
そうしている内に搭乗時間となり、かなりぐだぐだな感じで蒼とのお別れは終わってしまった。
搭乗した後もしばらく俺は泣き続け、周りの視線が痛かったと後から母さんに怒られた。