小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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朝目が覚めると桜井さんはいなかった。
私はベッドから出て服を着ると台所に向かった。
台所の机の上にはメモ用紙があった。
「仕事があるから行ってきます。今日一日はお店休みな 桜井」
やっぱり桜井さんは優しいな・・・・
だけど私の中は変わりつつあった。
そうこれが人を好きになるという事なんだ。
私はあれから人を好きになる事を怖がり好きにならないようにしてきた。
だけど大きくなった私はなんだか安堵した。
これがとてもつらいものだったとしても乗り越えられるかも知れない。
そう思うようになっていた。
沙耶に会おう・・・・
何故なら初めてお店の中でずっと話しかけてきたりお茶に無理やり誘ってきた沙耶が桜井さんと同じ位に好きだったから。
それに今まで私は沙耶にひどい事ばかり言っていた。
昔の私のようには沙耶にはなって欲しくなかった。
プルルルル 
「嬉しい!知花ちゃんから電話してくれるなんて!でも昨日お店休んだよね?何かあったの?」
私にそこまで喜んでくれるなんてしかも心配まで・・・・
私は桜井さんが沙耶の事が好きなのが少し分かった。
「何にも無かったよ。用事があっただけ」
私は沙耶にそう伝えると昼間にお茶しに行かないと言った。
「わーい!初めてのお誘いだぁ〜待っててね!急いで支度するから!」
「そんなに急がなくて良いよ」
「はぁい」
そう言って電話を切った。
やっぱり沙耶は可愛い・・・・
なんだか安心するし桜井さんと同じ匂いがする・・・・
だけど私とは違う・・・・
太陽の香り・・・・
早く会いたいな。
私は久しぶりにお茶するのが楽しみだった。

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