小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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暗闇に私なのか分からない存在がまどろんでいる。
母が鬼の形相で私にへばりついていた。
私は拒もうともせずそのまま暗闇に身を任せた。
せめて桜井さんと沙耶だけでも・・・・
私は無理だから・・・・
この母を誰よりも憎んでいるけど誰よりも好きだから・・・・
でも母を超えるのが沙耶と桜井さんだよ。
本当だよ。
ここは真っ暗で寂しいなぁ。
桜井さん・・・・
沙耶・・・・
「ちゃん!」
誰かが呼んでいる?
だぁれ・
「知花ちゃん!起きて!」
目を開けると桜井さんの顔があった。
「どうしたんですか?」
「どうしたてっすごいうなされていたよ?」
「えっ!」
じゃあさっきのは私の夢なんだ。
「すみません」
「いいよ。それよりも大丈夫?へんな夢でも見た?」
「大丈夫ですよ。母の夢を見ただけですから、桜井さんもたまにあるでしょ?」
「・・・・・君は嫌な事を言う子だね」
「ふふっ。お互い様です」
「君そんな事いう子だったけ?」
「桜井さんのおかげです」
「俺のおかげか。それは俺が嫌な事言う男てっことかい?まぁ知花ちゃんに会った時より良いけどね」
「会った時?」
「うん。君に会った時まるっきり昔の俺を見てるみたいで心配だったんだ。それに女の子なのに笑顔も無かったしね」
「今は違いますか?」
「うん。違うよ。人間らしくなったよ」
桜井さんが微笑んで言った。
私も知らずに微笑んだ。

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