小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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ここはどこだろう?
なんだかいい香りがする。
お香かな?
私が目を覚ますとしらない部屋にいた。
起き上がりよく部屋を見るとなんだか質素な部屋だった。
部屋には冷蔵庫とベッドだけという本当に起きて寝るだけの部屋。
けんたの部屋?
私はふと思った。
私の部屋はもう少し生活観があるがさほど変わらなかったからだ。
だけどけんたの部屋なら当の本人は?
それに沙耶はどうしたんだろう?
私は部屋にあるドアに手をかけようとした。
「待って!部屋の向こうには知花ちゃんが・・・・」
「大丈夫。まだ起きないよ」
部屋の向こうから沙耶らしき声とけんたらしき声が聞こえた。
もしかしてしてる?
私は泣くのをこらえるためベッドに逃げるように戻った。
布団をかぶると同時に涙が何故だか溢れてきた。
あぁどうして?
ここに私がいるの?
私も愛されたい。
だけど愛される事が怖い。
そんな複雑な事を考えながら事が終わるのを泣きながら布団の中で耐えていた。
ガチャ
誰かが部屋に入ってきた。
「知花?まだ眠ってるの?もう沙耶は帰ったよ?」
けんたの声だった。
私は声を出さずに涙を流しながら布団を頭までかぶっていた。
「やれやれ、どうして俺達はこんなに不器用なんだろう?俺がお前を愛せたらどんなに幸せになれたんだろね?だけどやっぱり俺は沙耶が好きだからごめんね。ゆっくりおやすみ。二番目の彼女さん」
そう言ってけんたは部屋を出て行った。
二番目の彼女・・・・
やはり涙は止まらなかった。

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