小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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あのまま眠ってしまったのだろうか?
私が瞼を開けると体に重みを感じた。
私の胸の辺りに誰かの腕があった。
ふと横を見るとけんたの顔があった。
あぁ寝る所がなかったのか・・・・
悪いことをしたな。
そう思いけんたの腕を払い私は起き上がった。
二番目の彼女。
彼は昨日そう言った。
なんだか悲しかった。
所詮二番目なんだと再度確認したようで余計悲しかった。
私はおとなしくベッドから降りて灰皿の前でタバコを吸った。
ハァ煙草の煙を出しながらため息をついた。
「意外とおっさん臭いのな。知花てっ」
後ろから声が聞こえた。
声がした方向を見るとけんたが頭を掻きながら私の方を見ていた。
「もしかして知花ちゃんさ昨日の事聞いてた?」
「ううん、何かあったの?]
「何も聞いてないんなら良いんだ。とりあえずお風呂に入りなよ」
「分かった」
私は返事をするとおとなしくお風呂まで案内をしてもらってお風呂に入った。
お風呂から出てくるとけんたはもう仕事着に変わっていた。
「じゃあそろそろ仕事だから家を出ようか?知花も家に帰って用意をしないとまずいんじゃない?」
「あっ!そうだ。今日は麻雀の仕事だった」
「なら家まで送っていくね。それと昨日沙耶が知花の事心配してたからメールだけでも打っておきな」
けんたはそう言うと玄関のドアに鍵をかけた。
車で家まで送ってもらうと、車を降りる時にキスをしてきた。
「じゃあね」
けんたはそう言って去った。
昨日沙耶と唇を重ねたその唇で私にキスをするの?
なんだか嫌だな・・・・
そう思い私は部屋に戻った。

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