小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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私は部屋に戻ってから用意をして雀荘に向かった。
もうこの仕事をするようになってから数ヶ月さすがに慣れてきた。
母もあれ以来来ないようになっていたから、仕事に慣れるのはとても早かった。
お客さんがひとしきりいなくなってから同じ従業員の男の子達が聞いてきた。
「そういえば、知花ちゃんてっ桜井さんと寝たの?」
私はどきりとした。
なんでそんな事知ってるの?
「なんでそんな事聞くんですか?」
私は内心どきどきしながら聞いた。
「最近店の中では有名だよ?」
「そうそうたまに桜井さんに帰り送ってもらってるみたいだしね」
「それに知花ちゃんまだ彼氏いないし誰でも怪しむよね?」
駄目・・・・
言っては駄目。
言ったら沙耶とけんたとはもう今まで見たいに一緒にいられない・・・・
そうやって頭では分かっているのに口では違う事を言っていた。
「そうだとしたらどうするんですか?」
「マジで!?」
「付き合ってるの?」
「いえ、付き合ってはいないですよ」
「本当に?体だけてっ事?」
言ってしまった。
ここはけんたと同じ職場なのに言ってしまった。
いつかはばれるのに自分から言ってしまった。
でもこれで二人から離れなくちゃいけないんだろうか?
私は言って怖がっていたはずなのにそれと同時に開放感がなんだかあった。
「それじゃ失礼します」
まだ色々聞きたそうにしている同僚達をほったらかして私は店を後にした。
どうしよう・・・・
これですべてが無駄になってしまう。
私はその夜なんだか眠れなかった。

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