小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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あれから数日経っていた。
幸い私の言った事がまだけんたの耳には入っていなかった。
何故ならあれからけんたに会ったが何も聞かれなかった。
今日も夜にけんたが部屋にやってきた。
「知花。おまえさ、俺の事好き?」
ベッドの上で私にけんたが聞いてきた。
大好きだよ・・・・
大好きな沙耶に嫉妬をするほどに。
だけど本当の気持ちは言わない。
だってまたけんたはあの表情をするでしょう?
悲しそうな表情。
私は二人に幸せになってほしいだけ・・・・
なのにこの前私はけんたの事を店の従業員達に言ってしまった。
おかしいな・・・・
なんだか自分で考えてる事とやっている事の違いにおかしくなってきた。
「好きじゃないですよ」
私は言った。
「そっかぁ残念だな」
「何を冗談言ってるんですか。けんたは沙耶命でしょ?」
「沙耶命か・・・・確かにね」
けんたは笑っていた。
嬉しい・・・・
一時だけでもこの時間を大事にしたい。
だって私達に残された時間はあと少ない。
私が私達二人の約束を破ったから、しかも店の従業員達に言ってしまったからあと数日でけんたの耳にも入るだろう。
耳に入ったら、私達の関係はすべて壊れてしまう。
その時には私は他の店に移り、この寮からも出て行くつもりだ。
だから私は最近新しい物を買わないようにしていた。
私は色々な事を考えながら、沙耶とけんたの色々な思い出を思い出しながらけんたに抱かれた。

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