小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

私は扉を閉めようとしたら、桜井さんの足で邪魔された。
「なんで閉めようとするかなぁ」
「いや、なんとなく・・・・危険だなとっ・・・・」
「危険てっ今日はそんな事しないよ。ちょっと聞きたい事があっただけだよ」
「聞きたいこと?何ですか?」
「とりあえず、部屋に入れてよ。ここだと話しにくいし」
そういって私の部屋に入ってきた。
私は冷蔵庫に入っていたペットボトルのお茶を桜井さんに渡した。
嬉しそうに桜井さんは微笑んだ。
「わーい!ちょうど喉が渇いてたんだ。ありがとう」
そう言って桜井さんはお茶を飲んでいた。
「あの、それで話してっ?」
私は早く帰って欲しかったから聞いた。
「うん、聞きたかったのはね。知花ちゃん小さい頃DV受けてた?それとも今もかな?」
私は動揺を隠すように手を握った。
なんでこの人は知っているのだろう?
まぁ前までは近所では私たち親子は悪い意味で有名だったから知っていてもおかしくないが、
寮に引っ越してきて誰も知っている人はいないはずなのに・・・・
「図星?やっぱりそうなんだ。その顔だと。僕もね小さい頃父親から暴力を受けていたから分かるんだ」
要するにこの人は何が言いたいんだろう?
「だけどそれを知ったからてっ知花ちゃんにどうこうしようと思ってるんじゃないよ。ただ何かあったらこの携帯で電話しといで、電話帳に俺の携帯番号登録しといたから」
そう言ってまた私に軽いキスをして部屋を出て行った。
私は桜井さんが出て行った後もしばらく放心状態だった。
何故か私は涙を流した。
意味の判らない涙を流した。
どうして私なんかにかまうの?
今まで私の周りにいる人たちは私の事を無視してきたのに・・・・
最近は沙耶といい桜井といいどうして私の心を揺らすの?
なんで?
どうして?
結局私は泣きながら眠った。
私はその時から桜井さんの事も沙耶の事も好きになっていたのかもしれない。

-5-
Copyright ©水士 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える