小説『ISー『転成した極限野郎』』
作者:Melty Blood()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


【重吾side】

重吾「ん……」

重吾は目を開け、ぼんやりとした視界で目を動かす。

此処は何処だろうか……楯無との勝負で負けてしまい、医務室でも連れてこられたのか?

重吾「う、動けない……」

未だ霞む視界。そして頭が回らず寝ぼけた状態の重吾は、身体を動かし身をよじる。

しかし身体は何かにグルグル巻きにされた様な圧迫があり。首は動かせるが腕や足などは動かない。

そういえば妙な浮遊間がある気がする……そう、頭に血が登り、逆さまで吊るされているバンジージャンプした後の様な感覚が………。

重吾「って!?……ホントに吊るされてるゥゥゥッ!?」

霞む視界や思考がやっと覚醒した重吾は、自分の身体の状態を見て驚愕の声を上げた。

まず目を引くのは今の自分の状況。

身体はロープで固くグルグル巻きに縛られ、今居る部屋の天井にあるフックの様な物に引っ掛けられ、吊るされている。

一体何がッ! 何が自分の身に起きたというのだ!?

楯無「あら、目が覚めた?」

重吾「さ、更識さん!?」

部屋にまた気配も無く現れた楯無に驚く重吾。

そんな重吾を見た楯無は、そばにあった椅子に腰掛け、バッと何処から取り出したのか分からない扇子を開いた。

重吾「すみません。ちょっとこれ解いてくれませんか?」

楯無「ん〜………や〜だ♪」

重吾「何でですか!!」

楯無「だって面白いじゃない」

重吾「………もしかしてこれやったのって……」

楯無「え? 私だけど?」

重吾「解けェェェ!!! 今すぐ解けェェェ!!!」

楯無「先輩にその口の聞き方は無いな〜♪」

重吾「やめてェ!! 揺らさないで、 吐いちゃう吐いちゃうッ!!!」

…………

…………………

……………………………

………………………………………


重吾「ぜぇ……ぜぇ……」

やっと楯無に開放され、地に足をつける事が叶った重吾は、近くにあったソファーに身体を預け、気持ち悪さが支配する身体を休めた。

楯無「ごめなさいね。はいこれ」

ニコニコとした顔からは全く謝罪の気持ちが伝わってこない、多分本人には楽しかったという気持ちしか無いのだろう……自分がどんな目に合ったかも知らずに……。

重吾「……ありがとうございます」

差し出されたミネラルウォーターのペットボトルを受け取った重吾は礼を送り、キャップを開けてそれを口に含む。

冷たい水が喉を伝っていく感覚が心地よく、幾分か気分が和らいだ。

楯無「さてと、貴方はIS学園に入学する事が決まりました。そしてその事について少し話しがあります」

今重吾が座っているソファーの向かいに椅子を持ってきた楯無は、腰掛けると唐突にそんな話しを切り出してきた。

重吾「IS学園に入学できるのかぁ……やった〜♪」

楯無「ふふッ♪」(やだ可愛い///)

重吾「ああすみません。話しってなんですか?」

話しが逸れかけたのに気付いた重吾は、謝罪を送って話しを戻す。

楯無「ん〜とねぇ……貴方『生徒会』に入らない? 私が率いる生徒会のメンバーに加わらないかしら?」

ーーー生徒会。

それは高校なら必ずある職務で、学校行事の提案や方針を決めたり、生徒達に関する書類などを整理したりする。とても名誉ある仕事だ。

だけど重吾の答え決まっていた。

ーーーそうーーー

重吾「嫌です」

楯無「なんでよこのケチッ!!」

重吾「えぇ〜だって〜……」

重吾の中での生徒会の印象は、雑用だっりとか書類の整理だとか面倒くさい事をしなければならないという印象だったので、正直な所やりたくない。

楯無「そう……本当にやりたくないのね……」

重吾「はい、すみませんが」

楯無「だったら!!!!」

重吾「ッ!?」

急に大声を発した楯無に、重吾はビクッと肩を震わす。

楯無「これを見てもそう言えるのかしら?」

重吾「これ?」

ゆっくりと椅子から立ち上がった楯無は、奥にあるもう一つの部屋へと繋がる扉に向かい、指をパチンっと鳴らした。

しかしいくら経っても何も起こらず、部屋の中が静寂で満たされる。

楯無「ちょ〜っとごめんなさいね」

楯無はそう言うとダッシュで奥の扉を開けて中に侵入し、扉をバタンと閉めた。

一人残された重吾は暇な時間がきたと、手を握ったり開いたり暇つぶしを開始する。

楯無「さあさあお待たせしました」

数分後。奥の部屋からやっと出て来た楯無は、ゴホンと咳払いをして重吾を据える。

楯無「そう……本人にやりたくないのね……」

重吾「そっから始めんの!?」

楯無「これを見てもまだそう言えるのかしら?」

再び奥の扉に向かって指を鳴らす楯無。

虚「……………///」

すると扉がゆっくりと開き、一人の女の子が顔を真っ赤にして出てきた。

重吾は女の子を見た瞬間顔を驚愕の色に染める。

女の子が超絶に可愛いかったとか……まあ可愛いが……そんな事で驚いたのでは無い。問題はその女の子の服装にあったのだ。

重吾「め、メイド服だとォッ!?」

一度は夢見るメイド服。

それを今、この場で実物を見ている重吾は鼻息荒く。メイド服を着ている女の子を凝縮した。

フリフリのスカートに、黒と白で統一されたそれは、まさしく神が想像せし物とも言える。

虚「………あぅ……///」

重吾の視線に耐えきれなくなったのか、女の子は更に顔を赤くして顔を逸らす。しかしそれが重吾をヒートアップさせ、悪化させるハメとなった

今の重吾は目が血走り、鼻息があり得ない程荒く。街を歩けば必ず職務質問を受けそうで、この上なく気持ち悪い。

楯無「もし生徒会に入ったら……こにメイド服虚ちゃんを毎日拝めるわ!!」

虚「お、お嬢様! 流石にそれで入る訳ーーー」

重吾「入りましょう」(キリッ

虚「えぇぇぇ!?」

重吾と楯無は固く握手をしあい、約束を結ぶ。

楯無( これで仕事が楽に……)

重吾( メイド服……美少女のメイド服……グゥエヘヘヘ♪ )

虚「もおぉぉぉ!!!!」

そんな不純な動機で満たされいる二人を見た虚は、ぶつけようの無い感情を大声に乗せて吐き出したのだったーーー

【重吾side】

風が暖かな風と、新たな出会いを運んでくるーーー桜が舞散り、美しさと儚さを魅せ、心に芽吹く気持ちを震わせる。

こんな素晴らしい季節の春は、生涯に一度だけだろう。

そう、この入学式というスタートを踏むライン。若者達が一気に華やかになるこの日は、本当に一度だけだ。

重吾「ふぅ〜……疲れた」

ーーー重吾は手元にある書類をトントンと揃え、窓から見える桜の木を見ながらそんな声を漏らした。

晴れて生徒会のメンバーに加わった……というより卑怯な手段で入れられた重吾は、早速楯無にこき使われまくった。

書類の処理や、生徒会室の掃除や、楯無の肩揉みや、楯無のパシリや、楯無の……………。

重吾( あれ? 何か俺メチャクチャな使われかたしてね? )

まあ今更気にした所で、入ってしまった以上自分の義務は果たさなければならない。殆どが楯無に関してだが………。

虚「井伊月君。そろそろ入学式が始まってしまいますよ?」

部屋の奥から眼鏡を掛けて、母性溢れる感じを醸し出す女の子が出てきた。

彼女の名は、"布仏 虚"。重吾と同じ生徒会メンバーであり、IS学園の一年生になる重吾よりも二つ上の先輩。

そう、重吾がこの生徒会に入る理由を作った本人であるメイド服の美少女だ。

まぁ今はメイド服を着ていないが……これには理由がある。最初の内はちゃんと着用していたのだが、数日経つと泣きつかれてしまったのだ。

流石に女の子に泣きつかれてしまっては仕方が無く、重吾は渋々メイド服を着なくていいと言ってあげた。

重吾「ヤッベ!? もうこんな時間!!」

書類整理に集中しすぎて時間を忘れていた重吾は、入学式に遅れない為、直ぐに準備をする。

重吾「じゃあ行ってきます虚先輩」

虚「あ、待ってください」

部屋のハンガーに掛けていたIS学園の制服の袖を通して生徒会室を出ようとした重吾を、虚が引き留める。

虚「ネクタイがちゃんと結べてませんよ」

重吾「す、すみません///」

重吾に近付いた虚は、そっと制服のネクタイを手に取り、捻じれていたネクタイを丁寧に直す。

直されている最中重吾は、近くに居る虚を意識しすぎて顔が真っ赤になり、顔を上に向けていた。

重吾「じゃ、じゃあそれでは///」

まだ若干顔が仄かに赤く。それを悟られまいと、重吾は早足で出口を出る。

虚「そんな急ぐと転けてしまいますよ」

重吾「大丈夫大丈夫ーーー痛ったァァァッ!!?」

虚に注意されたにも関わらず、目の前に意識を向けず走っていた重吾は案の定、曲がり角に気付かないで思いっきり顔をぶつけてしまう。

重吾「大丈夫大丈夫〜」

酒を飲み過ぎて酔ってしまった様によろよろと歩く重吾は、頭の上で星を回しながら入学式会場をおぼつかない足取りで目指した。

【虚side】

虚「全く……井伊月君はどこかぬけているんですから困ります……」

擬似酔いどれ状態で出て行った重吾を、まるで初めて我が子を一人で小学校に行かせる時の母親様に見送った虚は、頬に手をやり細い息を吐いた。

虚「でも何故か井伊月君を見ていると……なんていうかこう……保護欲を掻き立てられるような……」

ーーーそこで虚はハッとする。

自分は何を言っているのだ。これではまるで、自分が母親になったみたいではないか。

ブンブンと頭を振った虚は、一旦頭をリセットする為、今日の入学式と共に訪れる新入生について考えた。

今年入学してくる新入生の中には虚の妹、"布仏 本音"が居る。どんな子かは会えば分かるかもしれないが……もの凄くのほほんとした子だ。それはもう、とてつも無く……。

本音も重吾と同じく一年生から生徒会メンバーに加わる予定だが、果たしてちゃんと働いてくれるだろうか? やれば出来る子ではあるのだが、本音の場合はそのやる気を出すまでに時間がかかる。もし仕事しないのであれば、心を鬼にせねば。

楯無「あら、井伊月君はもう行ったみたいね……ふぁぁ……」

虚「お嬢様……一体何処に行っていたんですか」

生徒会室の入り口から入ってきた楯無にジト目を送る。

楯無「ちょっと春のポカポカ日差しが暖かくて……ね?」

虚「ね? じゃありませんよ全く……」

遠回しにサボり宣言をしてきた楯無に、虚は深いため息を漏らした。

真面目な彼女からすれば、サボるなどという行為は万死に値するだろうが……この楯無に何を言ったとしても無駄に終わるだろう。

楯無「ん〜……さてと、井伊月君と本音ちゃんの歓迎パーティーの準備。しましょっか?」

大きく背筋を伸ばした楯無は、手に持っていた扇子を広げて口に当てる。

そうだった。今日は密かに計画していた二人の入学祝いと生徒会加入のパーティーをする予定だった。

虚「お嬢様……変な事はしないでくださいよ?」

楯無「どうかしら〜♪」

とても楽しそうに笑みを浮かべる楯無。そして直感で「あ、これはなにかするな」と悟った虚は、再びため息を漏らし。パーティーの準備を進めるのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【重吾side】

ーーー場所はIS学園の廊下。

先ほどまで、新入生である女子達に埋め尽くされていたこの廊下は、女の子のフェロモン的な香りを残して静まり返っていた。

重吾「ふふ〜ん♪」

そんな、変態が居れば必ず事件を起こしそうな廊下を、重吾は鼻歌交じりにスキップしているーーー

妙にハイテンションだがーーーフェロモン的匂いにやられたのか?

重吾「んなわけッ!!ーーー何言ってんだろ俺……?」

スキップを止めた重吾は、誰かに怒鳴り声を上げーーーかけたところでやめた。

重吾「な〜んか失礼な事言われた気がしたんだよなぁ……」

ポリポリと頭を掻いた重吾は、「まぁいっか」と考え、止めていた足を再び動かす。

ーーー今目的として向かっているのは生徒会室。

入学式が終わったら生徒会室に来いと、会長である楯無に言われていたので、今はその真っ最中。

ーーーきっとまた『こき使われる』のだろう……。

重吾「かいちょ〜。虚せんぱ〜い。只今戻りましたよ〜」

生徒会室の扉を開け、中に入室する。

未処理の書類などが散乱するこの部屋は、いつ見ても整理が出来ていない。整理したしても……次の日には魔境と化すこの空間は最早異次元の様な場所だ……。

しかしそんな魔境に、見間違いでなければ、今日は二匹の『ウサギ』さんが居た。ピョコンと伸びた愛らしい耳に、モフモフしたくなるような尻尾。そして山の様に盛り上がった『胸』。

ーーーそれは何処からどう見ても可愛いウサギさん………胸?

楯無「おかえりなさい井伊月君♪ バニー姿のお姉さんとーーー」

虚「う、虚ちゃんだぞッ♪ ///」

重吾「…………」

重吾は固まった。何かメロスは激怒したみたいになってしまったが、石の様にカチコチになった。

重吾「ふ〜……きっと疲れてんだな俺。ウサギさんに大きな胸があるわけないじゃないか……」

深呼吸して心を静めた重吾。

しかし赤い、顔が凄く赤い。太陽の光をいっぱいに受けて育ったトマトみたいだ。

楯無「ウサギさんだよ〜♪」

虚「ウサギだピョンッ♪ ///」( うぅ……もうお嫁にいけません……/// )

重吾「な、何やってんすかッ!? ///」

自分の勘違いでは無く、これは現実なのだと認識した重吾は、バニー姿の楯無と虚がなるべく入ってこぬよう手で視界を遮る。

今の重吾の心臓はマックスハート。このままでは空気を入れすぎた風船の様に破裂してしまうかもしれない。

楯無「隠しちゃやーよ。お姉さん泣いちゃうぞ?」

重吾「着替えて着替えて!!。出来るだけ早く!! 迅速にお願いしますッ!!」

楯無「うわぁぁ……私達が着替えるとこ見たいなんて……エッチぃ〜」

重吾「言ってねぇよ!! 惜しいけど言ってねぇよ!!」

とにかく服を着てくれと、重吾は懇願する。

すると願いを聞き入れてくれたのか、視界は封じられているので確認出来ないが布が擦れる音が聞こえてきた。きっとちゃんと服を着てくれているに違いない。

楯無「も〜開けていいわよ〜」

重吾「全く……こんな悪ふざけはやめてくださいよ……」

若干やつれた顔をしながら目を開けると、ちゃんと服を着た楯無が確認出来た。

重吾だって男だ、そりゃあ楯無と虚のバニー姿に何も感じなかったって訳じゃあない……だがしかしだ、女の子関連に慣れていない重吾にとっては心臓に悪すぎる。

今度こんな事されてしまったら、重吾のこう……何ていうか出ちゃいけない物が出てしまうかもしれない。

重吾「あれ? そういえば虚先輩が居なくなってませんか?」

さっきまで目の前に居た筈の虚が、突然居なくなったことを疑問に思う。

トイレでも行ったのだろうか?

楯無「なに言ってるのよ井伊月君。後ろに居るじゃない。ほら」

重吾「えーーー」

楯無が後ろを指差し、重吾もそれにつられて振り返る。

ーーーそしてそこに虚は居た……居たのだが!

虚「もう笑ってください……///」

ーーーその姿はピチピチのスクール水着姿だった。

重吾「なんで進化してんのォォォ!!!?」

楯無「グッジョブね」

後ろに佇んでいた虚は、スクール水着に包まれた肢体を必死に隠そうと腕を回すが、全く意味がない。というより胸に回している腕が、ギュゥゥっと胸を押し潰しているのが反則的にヤバい。恥じらいで顔を赤くしている虚もプラスされて天元突破している。

虚「これをすれば喜ぶって……お、お嬢様が…///」(ギュゥゥ

重吾「やめてやめて! 胸が! 胸が大変な事になっちゃってる!!」(ダラダラ

楯無「こっちは鼻血で大変な事になっちゃてるけどッ!?」

顔を真っ赤にする虚と、鼻血で顔を染める重吾。そして、懸命に重吾の鼻血をティッシュで拭き取る楯無。

なんだこれは……魔界か何かか?

本音「ん〜? みんな何やってるの〜?」

重吾達の騒がしさに気が付いた本音が、奥の扉からひょっこり顔を出す。しかしこの惨状を目の当たりした瞬間目を見開き、尻餅をついてしまった。

その時だ。その時重吾はあるものが視界に入ったのが分かった。本音が尻餅をする刹那の時、スカートの隙間から僅かだが見えたそれはーーー

重吾「ピンクかぁ……」(ドクドク

楯無「ティッシュが足りない!! てゆーか井伊月君が死んじゃう!!」

虚「鼻血で死ぬなんて笑えないですよ井伊月君!」

そして鼻血の出し過ぎで意識を落とした重吾は、生徒会メンバーの迅速な対処によって、なんとか一命を取り留めたのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

-3-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




IS <インフィニット・ストラトス> 第1巻 [Blu-ray]
新品 \4780
中古 \800
(参考価格:\7665)