小説『ISー『転成した極限野郎』』
作者:Melty Blood()

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ーーーIS学園廊下。

一夏「クッソ、あいつ等! 何やってんだよッ!!」

鈴、セシリア。そしてラウラがISでの乱闘をアリーナで行っていると聞いた一夏は、教室を勢いよく飛び出して廊下を疾走していた。
全力で足を動かし、廊下を歩く女生徒達の間をぬって休む暇無く走り続ける。
その顔には苛立ち……そして焦りの色が浮かんでいて、一夏の走る速度をどんどんと加速させた。

一夏「速く……速く……ッ!!」

ずっと全力を出して走っていた為、自分の足が限界を迎え出す。
無理に動かし続ける事で痛む足だったが、一夏はそれでも駆けるのを止めずに、痛みを歯で噛み締める事で堪えた。

一夏「つ、着いた……!」

アリーナの入り口前に到着した一夏は、乱れる息を整える前に扉を開けて中に侵入する。
入るとそこはいつも訓練などに使用するアリーナでは無い、瓦礫が散らばり煙が立ち上る戦場跡地が広がっていた。

一夏「何だよ……これ!?」

その光景に一瞬時が止まった一夏だったが、直ぐに鈴とセシリアを思い出し、名前を呼びながらその姿を探す。

鈴「いち……か……」

一夏「鈴!? 大丈夫かッ!!」

声が聞こえた方を振り向くと、足や腕に痛々しい痣などを負った鈴が横たわっていた。
側に駆け寄った一夏は優しくその身体を抱きかかえ、鈴の怪我に表情を歪める。
セシリアは!? と、辺りを見渡し確認を取ると、鈴同様身体に怪我を負い、気絶したセシリアが見つかった。

鈴「一夏……他…にも……生徒…が…」

そう全てを言い切る前に意識を手放した鈴は、一夏に抱かれてグッタリと頭を垂らす。

先ずは二人を運ばなくては。

そう考えた一夏は、気絶している二人を何とかして背負い気絶している二人を医務室へと運ぶ。

一夏「ラウラの奴は……一体何がしたいんだ…」

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ーーーアリーナ。

一夏が鈴とセシリアを医務室を運んでいる最中。アリーナでは重吾とラウラが戦って……いや、ラウラの一方的な『暴力』が行われていた。

ラウラ「何故だ……何故反撃しないッ!!」

重吾「君を止めに来ただけだよッ!! 戦う理由なんて……ッ!!」

ラウラの攻撃をエクストリームガンダムのシールドで防ぐ重吾は、手を休めないラウラに苦悶の表情を浮かべる。
止めにきたはいいが、何もせずただジッと耐え続けるというのは酷だ。反撃しようにも重吾は止めるという名目で来たので、手を上げるという行為だけは一切出来ないし行いたくも無い。

ラウラ「舐めているのか? 馬鹿にしているのか? それとも……ッ!!」

シュバルツェア・レーゲンの大型レールカノンを構えるラウラ。重吾はヤバイと瞬時に判断し、その場を離脱する。
瞬間。大型レールカノンから放たれた弾丸が重吾の居た地面を抉り取り、一本の深い溝を作り上げた。

重吾「止まってよッ!! じゃなきゃ君もッ!!」

そう叫んだ重吾の声になど耳を貸さず、ラウラは続けて大型レールカノンから弾丸を見舞う。
舌打ちを漏らした重吾は迫ってくる弾丸をシールドで受け止めたが、圧倒的スピードと重量で放たれるそれに弾き飛ばされてしまった。

ラウラ「戦う意思が無い奴が出てくるなッ!!」

重吾「でも止めなきゃ君はしでかそうしたんだよ!! やっちゃいけない事をッ!!」

プラズマ手刀をビームサーベルで受け止めた重吾は、ラウラの目を見つめてそう言い放つ。
だがラウラにはそれが不快でいて苛立ちを憶えさせるものだった。その『偽善者』を体現するかのような重吾の目が……自分を見つめるその目が酷く。

ラウラ「癪に触る奴だ貴様はッ!! 再起不能にしてやるッ!!」

強烈な蹴りを放ち重吾のどてっ腹に直撃させ、良い感触だとラウラは目を細めて笑みを浮かべた。
蹴りに悶絶して歪んだ表情をする重吾に、もう一度更に強い蹴りを喰らわせ地面に叩き付けた後、大の字に倒れこむ重吾の左腕に、ブースターを加速させる事で威力を増した膝蹴りをヒットさせる。

ーーーボギンッ

鈍い音がアリーナに響く。それが何の音で、何が起こって鳴った音なのかを理解した重吾は、左腕を押さえて地面をのたうちまわった。

重吾「があぁぁぁあああッ!! 腕がぁッ!!」

ジンジンと左腕が熱を帯だし、凄まじい痛みで涙がこぼれ出す。
『痛い』その感情だけが今の重吾を支配し、苦しめた。骨が折れたのか折れていないのか理解したく無い。折れていない、そうであって欲しい。だが動かない左腕が何よりの証拠で、腕の骨が折れたのだという事を物語っていた。

ラウラ「良い声で鳴くじゃないか……だから弱いんだよ貴様等は」

重吾「君は…君は何処かおかしいよ…普通じゃない……」

ラウラ「何を言ってるんだ貴様、私の何処がおかしい……ええ?」

重吾「あぁあぁっぁあぁあッッッ!!!!」

折れた左腕が蹴りつけられ、襲ってきた壮絶な痛みに意識が飛びそうになる。
もういやだ。やめろ。だが重吾の願いはラウラに伝わる事は無い。ただ弱者のように虐められ、叫び声を上げさせられるだけだ。

ラウラ「左腕だけでは寂しかろう……右腕も一緒にしてやる」

口元を吊り上げ、異常者にも見える程の恍惚な表情を浮かべたラウラ。
そんなラウラの足が、重吾の右腕に蹴り落とされようとした……その時!!

一夏「てぇめぇぇぇぇ!!!!」

ラウラ「また弱者が来たか……」

専用機である白式を纏った重吾が現れ、それを見た重吾はそこで意識を手離した。

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ーーーー医務室。

左腕に違和感がある。固い何かに腕を覆われ、動かせないようになっているようだ。
それに地面が妙に柔らかい。まるでベッドの上で寝ている感じと思ってしまう。

重吾「…………ほんとに寝てんじゃん」

ゆっくりと身体を起こした重吾は、自分が今居る医務室を見渡し息を吐いた。
腕が動かないと思ったらギプスが巻かれている。
それを見て腕を折られた時の痛みを思い出した重吾は、無事である右腕で左腕を摩り顔を顰めた。

重吾「あ〜こっぴどくやらちゃったなぁ……身体中痛いし……お腹も空いた…」

ベッドから降り、痛みに耐えながら歩く。すると自分の他にも誰か居るのか、もう一つのベッドがこんもりと膨らんでいた。
不思議に思い近づくと何かブツブツと文句を漏らす声が聞こえ、それが女の子の声だと気づく。
人差し指でツンツンと突いてみると、膨らみがブルっと震えて布団が跳ね上がった。

鈴「何すんのよこのぉぉぉッ!!!!」

重吾「う、うわぁぁッ!!? お化けぇぇぇッ!! 助けて会長ぉぉぉぉッッ!!!!」

鈴の雄叫びと重吾の絶叫。その二つが医務室に轟き窓ガラスを震わせた。

鈴「誰がお化けよこの馬鹿ッ!!」

重吾「痛いッ!!」

ビンタを喰らわされた重吾は、自分が居たベッドまで吹っ飛ばされる。その時一瞬だが走馬灯が見えたのは重吾だけの秘密だ。

重吾「もうやだ帰りたいよぉ……虚先輩の紅茶が飲みたいよぉ、のほほんさんと一緒にケーキが食べたいよぉ……」

鈴「気持ち悪ッ!? 男がめそめそすんじゃないわよッ!!」

重吾「す、すんません……」

鈴の怒声に一気に恐縮してしまった重吾は、気を取り直して表情を引き締める。
それを見て鈴もフンッと鼻を鳴らすと、自分のベッドに座り込んで眉を顰めた。

重吾「え〜とさ……」

鈴「鈴よ、鳳 鈴音」

重吾「鈴さんか。怪我は無い?……大丈夫?」

鈴「そういえばアンタが助けてくれたっけかな? ありがとね。それと……助けてきたアンタが私より怪我するってどうゆう事よ……」

重吾「いやぁ〜」

確かに助けに来てやられてしまうなんて情けない。だけど重吾はラウラと戦いに行った訳では無く、止めに行ったという事を忘れないで欲しい。
言い訳のように聞こえるかもしれないが、重吾は決して手を上げてなどいなかったし、言葉による説得を試みていた。
しかしその結果こんな怪我を負ってしまい、全てが無駄になってしまったのは本当に情けないとは思う。

鈴「まあISもやられちゃったし、今度のタッグトーナメントは無理かな」

重吾「……それを言うなら俺のだって動かないよ。ラウラさんにこれでもかってぐらいにボロボロにされたしね」

「それに腕もこれだから」と、ギプスで覆われた左腕を掲げて笑った重吾。そんな重吾を見てため息を漏らした鈴は、腰に手を当てて重吾を据えた。

重吾「そういえばもう一人女の子がラウラさんと戦ってた気が……」

そう言って重吾が頭を傾げると、奥歯に物が挟まったような表情した鈴。
どうしたのか疑問に思った重吾だったが、嫌な予感がしたので敢えて指摘はしなかった。
そうえばずっと気になっていたが……医務室の一角。その場所に位置するベッドがカーテンのレースで見えなくなっている。
多分誰かが寝ている姿を見られるのが恥ずかしいとかでカーテンを閉めたんだと思うが、そのカーテンの隙間から滲み出るオーラが普通では無い。

まるで『負』だ。

全ての負を収束してより濃い物になったオーラが、その一角のベッド周辺に漂っている。
ゴクリと息を飲んだ重吾は、好奇心と恐怖心のせめぎ合いに立ちながらも、自身の内から溢れ出てくる好奇心には勝てなかった。

重吾「…………ッ!!」

手に掛けたカーテンを一気に引いた重吾は、その顔を驚愕に染める。
ベッドに居たのは普通の可愛い女の子だ。綺麗な金髪を持っていて、とてもナイスなバディを誇っている……『ただ』の女の子だ……。

セシリア「なんなんですのあの人は!! 一夏さんを種馬ですって? なんて事を言ってくださるのかしら全く! うふふふ!! ああもう本当に最高ですわ。今度あった"ピー!!"して"ピー!!"やりますッ!!」

重吾「……………」

ーーーシャッ

カーテンを無言で閉めた重吾はその場に立ち尽くした。顔が微動だにせず表情に色が無い。
後ろに居た鈴も同じように、口をポカンと開けて呆然としていた。

重吾「ご飯……ご飯食べに行かない?」

鈴「…………行く」

そうして医務室を出て行った二人は、しばらく何も喋らず無言で廊下を歩いたのだった。

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