小説『影は黄金の腹心で水銀の親友』
作者:BK201()

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第十六話 裏切りと本質



前書き

ティトゥスが咥えている煙草の種類はマルボロ。マイルドセブン?メビウスなんて名前に変えて外国に売れるわけねえだろ。
アルフレートは煙草を吸わない上に、酒はワインの類は嫌い。理由はまあ神の血だからね……

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少し時間を遡りアルフレートとティトゥスの戦いまで戻る。

「ちょっと待ってくれよ。煙草(シガレット)に火を点すから」

「まあ、そのぐらいならいいが…随分と格好も変わったな。元となった魂は煙草なんて不味いだけだと言ってただろうに」

「それはそれってことさ。それじゃあ、五分ぐらい待ってくれよ。今から火を熾すから」

そう言った直後アルフレートは粒子を重ね合わせティトゥスの目の前で火花を散らす。

「これで火は点いただろ」

満足か、とばかりにアルフレートは鼻で笑う。ティトゥスの方はというとバレたかといった風に顔を顰めていた。

「君の性格を僕は知ってるんだよ。相手を苛立たせて不意を突く。だからきちんと話し合う気は僕には無いんだ。不毛だろうだからね」

未だに司狼は動かない。玲愛を助けるためにはアルフレートを突破せねばならず、その上で再び地下道を通るために今いる位置まで戻らなければならない。

「さて、煙草を吸い終えるまで約三分…その間にゾーネンキントを逃がしてくれよ」

「半分もあれば十分だ。お前のほうこそこそしくじんじゃねえぞ」

司狼とティトゥスは互いに役割を決め動き出す。ティトゥスが構えたデザートイーグルでまずは牽制。大きな音が教会の鐘を鳴らすかのように鳴り響く。アルフレートは全く動じることなく影で弾丸を弾き、弾丸のようにした影で撃ち抜こうとする。

「―――『物質生成(Die Generation des Materials)』―――」

詠唱による自己暗示。ティトゥスは自身の魔力を高め正面に霊的加護を得た薄い壁を作りだした。

『物質生成(Die Generation des Materials)』、ティトゥスが持つ聖遺物の能力。銃弾、アサルトナイフ、軍刀、銃そのものまで、それが近代的な小火器による歩兵用兵器、或いは身近日常に溶け込んでいる簡素なモノであれば聖遺物の加護を持たせ生成できる。つまり限定的な無機物生成能力。今作り出した壁も良く見ればこの教会の壁を模したものであることが見て取れた。
もちろん生成するには魔力と明確なイメージが必要であり彼は普段から使っている銃弾以外の生成には数秒の時間を必要としていた。

「ほう、銃弾以外を作れたのか」

「自分の分体だろうにそんな事も知らなかったのかい?」

「興味もなかったしね。それに…」

足元の影が螺巻き、先端が螺旋状の槍のように形を変える。

「その程度の小細工で何とかできる筈も無いだろう」

二人を刺し殺そうと螺子のように鋭く巻いた影槍を放つ。それは容易く壁を貫いた。しかし、当然というべきか討ち抜かれるのを良しとすることも無くティトゥスはそれらを難なく回避し零距離まで近づき銃弾を放つ。同時に司狼も走り出す。

「だったらこれでどうかな?結構効くんじゃない」

そう言って連続で銃弾を放つ。しかし、手に持っている銃の種類は拳銃のはずなのに放たれた弾丸は散弾だった。アルフレートも驚いたように目を見開くがそんな暇は無いとばかりに顔、腹、脚、そして男性の急所を狙って撃ち吹き飛ばした。そして、そのまま追撃を仕掛ける。吹き飛ばされ倒れたであろう位置に銃弾を浴びせ続けた。しかし、

「反撃してもいいんだよな?」

「やってみなよ―――」

斬戟によってティトゥスは吹き飛ばされる。咄嗟に銃を斬線に置いたため斬られることは防げたものの銃は拉げており全く使い物になりそうに無かった。

「あ〜らら、ぶっ壊れちゃったよ。ていうか容赦ないねぇ。何かイラつく事でもあったのかい?」

「君そのものだよ、全く……正直君と会話してるだけで力が抜けてくるって言うか、しんだくなってくるよ」

「随分と辛辣だねぇ」

言葉では余裕を見せるも斬戟によるダメージは確かに体に残っていた。拳銃が使い物にならなくなっただけではなく、受けた衝撃によって体がふらついている。

「さて、君は正直失敗作だったかな?これで終わりにするとしよう」

時間を掛けさせられたせいで苛立っていたのか足で腹を踏み抜く。ティトゥスは咳き込んで苦しそうにするが特に興味を示すこともなさそうに首筋に影を当てる。それを確認してすぐさま『物質生成』によって新たな銃を作り出す。今度は二丁拳銃で応戦とばかりに連射する。唯、彼は右手に持っていた銃で放つ弾丸は殆ど外していた。命中した弾丸も動じることなく防がれる。

「上を見てみなよ」

その言葉を聞きアルフレートは振り返って天井を見ると同時に元は天井であっただろう瓦礫が落ちてきた。

「チッ―――!?」

右手で外していた弾丸は全て正確に天井を崩すように狙っていたものだった。聖遺物の加護を受けた弾丸はその威力を高めており、天井の一部を崩していたのだ。
アルフレートは咄嗟に避けたものの床にぶつかった瓦礫が土煙を上げており見失う。

「ほら、捕まえたよ」

「違うな、捕まえたのはこちらだ」

ティトゥスは後ろに回りこんで零距離で撃とうとしていた。しかし、それを読んでいたアルフレートは自分の後ろの影を針鼠のように斬戟を放つ。

「おっと、危ないッ!」

バックステップで直撃を避けるティトゥス。しかし、それで終わることを良しとせずアルフレートの足元に爆弾を設置する。
『Sマイン』、ドイツが作り上げた対人地雷の中でも凶悪な爆弾。本来の地雷ならば地面から上に爆発するため大概は死亡率よりもその後の生活に負担をかけるようなものが多い。そんな中、致死率が当時最も高かった地雷とも言われている地雷、それが『Sマイン』だった。感知した瞬間五メートルから十メートルまで浮き上がりそこで爆発し、大量の金属片を飛ばす。その殺傷力の高さは保障つきだった。

「本日は瓦礫と共に鉄の雨が降ることでしょう、ってね」

「クッ―――」

Sマインがアルフレートに襲い掛かる。煙から出てきたアルフレートは傷だらけになっていた。普段なら防ぐなり避けるなり出来たであろう攻撃。しかし、アルフレートは疲弊していた。トバルカインによって受けたダメージ、ヴィルヘルムによる吸精。これまで表立って出してはいなかったがとうとう限界まで到達していた。

「……ガァ……ツゥッ…」

「こいつで終わり…バイバイ」

止めを刺そうと銃を構えるティトゥス。しかし、突然影が蠢きだす。

「痛ってえなァ、畜生がッ!!」

留まることが無い影が触手のように動き全方位に影が向けられる。ティトゥスにも当然それらは向かってくる。

「新技?へぇ、そんな技あったの?」

全身を影に包まれるアルフレート。それは余りにも不自然な動きを見せながらティトゥスに狙いを定め攻撃を仕掛ける。

「これはッ…ちょっとばっかし危ないかなッ!」

そして首を掻っ切ろうとしたとき銃声と共に鎖がアルフレートに向かってきた。

「よォ、ぎりぎりセーフってところか?」

「まさか、全然余裕さ。もう少し時間掛けてくれてもよかったんだけどね」

銃弾と鎖を放ったのは司狼。右肩に玲愛を担いでおり、左手に構えたデザートイーグルでアルフレートであろう影に当てていた。

「それで、ありゃなんだよ?」

「知ってたら対処できてたよ。って言うかどう考えてもまともじゃないでしょ、あれ」

「確かに、でもまあ先輩は救出できたし、逃げたほうがいいってことかね」

事実、先ほどから狙いの定まっていない影が闇雲に動いているだけで二人は会話をする余裕すらあった。

「そうするべきだろうね。これ以上ここにいてもしんだいだけだろうし」

そう言って二人は地下通路に向かうべきだと判断するが当然それを見逃すアルフレート?ではなかった。

「逃がすかよ、お前ら全員ここで死ぬという運命(必然)にしてやる。|俺()に殺されろ」

アレは果たしてアルフレートなのか、答えは否。あれはアルフレートという偽名を被っていた何かだ。傷つき消耗したからこそ漏れ出した本質。司狼もティトゥスもその殺気を受け今までの比にならないほど危険だと感じていた。
右腕を突き出し二人を諸共殺そうと構えたその時、

「はいはいストップ、そこまでよ。元に戻りなさいよ。私は寝覚めに彼()のそんな姿見たくないのよ」

突然かけられた女性のものと思われる声。アルフレートはそれを聞くと同時にその殺気を諌め周りを見渡す。すると教会の一角に丁度、血塗れで死に掛けていたルサルカがいた場所に一人の女性が立っていた。

「は〜い、おはよナウヨックス」

「……ウェスパシアヌスか。その様子だとルサルカを喰らったのか?」

ウェスパシアヌス、見た目は妖艶な艶をもつ二十代半ばといったところであり、ボトムレスピットでアルフレートが本来なら恵梨依に司狼のティトゥスと同じように仕込ませておこうと思っていた分体の一人。結果的にルサルカが喰らった後だったのでルサルカに仕込ませておいたのだがそれがルサルカが死にそうになってようやく出てきたのだった。ルサルカ本人を喰らうという形で。

「そうよ。後、その名前は男性名だから嫌なのよね。だからパシアスってよびなさい」

相変わらず彼()以外には横柄だね。と呟きつつ今まで漏れ出し放っていたであろう本質が也を潜める。それによって空気が弛緩し、ほんの僅かに戦闘において最低限の警戒をするレベルで緊張を緩める司狼とティトゥス。しかし、その油断がいけなかった。

「なッ!?」

突然勢いを増した吸精。ヴィルヘルムがシュライバーとの戦闘の際に創造を強めた結果であり、疲弊していた司狼とティトゥスは膝を着く。
そしてアルフレートはそうなることを|知っていた(・・・・・)かのように同時に動き出す。影は玲愛を絡め捕り司狼の右腕から奪い取った。

「しまった!」

ティトゥスが玲愛を奪い返そうと銃弾を放つがそれらは全て防がれる。それどころかパシアスがルサルカから奪い取った『|食人影(ナハツェーラー)』を擬似的に使いこなし司狼とティトゥスの動きを止める。

「手を貸さなくとも勝てたんだけど…」

「いいじゃない、こういうのは早く終わらすべきでしょう」

「こう続々と新キャラ出ると俺の立場ねェな。しかも、それあの女の能力だし。俺が聖遺物奪ったはずなんだけど、どういうことだよ?」

司狼は動けない状況に陥りながらもせめて情報を手に入れようとパシアスに疑問を投げかける。が、パシアスはまるで司狼が居ないかのように反応を示さない。というよりも興味の対象になっていないのだ。

「それにしてもようやく外の戦いは終わりといったところかな?彼女のことを任せてもいいかい?」

「しょうがないから見といてあげるわ。でも速く帰ってこないと二人には逃げられるかも知れないわよ?」

「それならそれで仕方ないさ。テレジアちゃんを取られさえしなければ問題は無いんだし」

外の戦いの音が小さくなっていっていることからそう判断したアルフレートは外に出ようと歩き始める。

「ッ…オレ等のことは無視かよ。戻ってくるまでに先輩ともども逃げさせてもらうから覚悟しとけよ」

アルフレートを瀕死に陥らせた二人を無視し玲愛を捨て置き白の英雄の戦いの勝者に会うために外に出ようとする。司狼の発言は完全に無視しており、というか相手をするのも億劫だったのだろう。疲れた足取りで外に出るのだった。






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後書き

司狼の言ってるとおりこう、新キャラ出まくって君の影が薄くなりそうだよ。分体の持ってる聖遺物は元々聖遺物持ってた相手を喰らった奴以外は火力不足になります。

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