雛美はまた画面と向き合っていた。
会話もなく、静まり返った室内にキーボードの音だけが寂しく飛散する。
「…………」
「…………」
気まずくないけどヘンな沈黙が流れる。
(なんとかしなきゃ……)
反射的にそんな思いに駆られた。
「……雛美ちゃん」
「なに?」
「その……用事って?」
「あ、うん。ちょっとこれ見て。……どうしたの? ポカンてして」
「あ、いや……別に」
あまりにも一心に操作していたから無視されると思ったら、返事が返ってきて逆に驚いた。
頼み事って言っても雛美のことだからくだらないことなんだろうなって思ってたけど、今回は違うのかもしれない。
そんな風に思ってた。
「ほら見てよ」
雛美にうながされるまま画面を見る。
「アメーバピグって……またぁ?」
「まあまあ。この前はごめんって。今度は葵衣ちゃんが怒るようなことしないからさ。とりあえず話聞いてよ」
「だからこの前はイライラしてただけで怒ってたわけじゃないってば……」
「ごめーん! この前のことは謝るから怒らないで? お願い。ごめんね、葵衣ちゃん」
さすがにしつこくてイライラした口調で言うと、雛美はこちらの顔色をうかがってなだめるように言ってくる。
「えーなにそれー。こんなんで怒るわけないじゃーん。てかこんなことどうでもいいから早く話進めてよ」
とりあえず話が進まないから、笑いながらテキトーにやり過ごしておいた。
謝ることで私をなおさら不機嫌にさせているとは、当の本人は思ってもないだろうけど。
というか絶対ふざけてる。……まぁ、雛美のことだから実はふざけてるように見えて本気で謝ってんだろうな。ふざけながら本気で謝ってるって可能性もあるけど。
どっち道、こんな謝り方で私のイライラがおさまるわけなかった。
雛美にいじられるのがメンドーだから絶対に表情には出さないように気をつけながら話を進めていく。
「うん♪ じゃあ続けるね。お願いなんだけど、葵衣ちゃん、ピグやってくれる?」
「……え」