小説『ハツコイ』
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 私はぼーっとパソコンの画面を見つめていた。

 時間は……10時25分。

「あと5分か……」

 ポツリとつぶやき、ため息をつく。

 ママは今風呂、弟の凌介は自室でゲームに夢中。

 だからリビングには私しかいない。

 こたつに足を突っ込み、カチカチとキーボードを打ってく。

 私は雛美から頼まれたことを今実行してる。

 あれから雛美が詳しく事情を……私をピグに誘った理由なんかを話した。

 話によると、今ピグでは友達をピグに誘うと限定アイテムとかアメGっていうアメーバ上のお金が貰えるキャンペーンをやってるらしい。

 そのアイテムやアメGが欲しいから私をピグに誘った……みたい。

 でも私が入会さえすればキャンペーンが有効になるから、別にピグを続けなくてもいいらしいけど。今のところは続けないつもり。なんかめんどくさそうだし。

 正直、ピグに良い印象ないし。

 というか情報が少なすぎてよくわからない。

 雛美は崗東中の生徒にはピグをやってる人はいっぱいいるって言ってたけど……その”いっぱい”というのが具体的にどれくらいの人数なのか、見当もつかない。

 10人くらいいれば多い方なのかなーとかテキトーに思ってるけど……。

 というか、メチャメチャ不安。

 雛美とか「べっちさん」っていう二年生としゃべってるみたいだし。

 私はなるべく二年生と関わりたくないな……なんか恐いし。

 それに今の二年生っていったらあの人もいるし……………………

(…………)

 10時30分。雛美との約束の時間だ。

 今日、帰り際に雛美とピグで会う約束をしていたのだ。

 ただ、雛美はスイミングがあるため、ピグにINできるのは早くても10時30分。

 だからもう来てもおかしくないはず……。

 今まで暇だったから[初心者広場]とかにいたけど、とりあえず自分の部屋(エリア)に戻ってみた。

 [ショップ]や設定を開いたりして家で待機していると、5分後一体のピグ(アバター)がやってきた。

『きいc?』

 向こうのピグから吹き出しがでた。

『うん』
『ひなみちゃん?』

『うんw』

『おおおおおおおww』

『ピグやったんだねw』

『だって』
『ひなみちゃんが今日やってねって』
『いってたじゃん』

『まあねーw』

 雛美のピグが腹を抱えて笑うアクションをする。

 私もしようとしたけど、どのアイコンをクリックしても笑うアクションはでてこなかった。

 それどうやってやるの? と聞こうと途中まで打ったところで、雛美が『ねね』と話しかけてきた。

『なに?』

『ついてきて』

 最初言葉の意味がわからなかった。

 雛美から教えてもらい、雛美のピグのプロフにあったアイコンを押す。 

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