風間ファミリーの秘密基地
この日の授業が終わり、無事に帰りのHRが終わると、俺と大和、京、ユキはモロ、岳人と短く会話を交わした後秘密基地へ行くことにした。
川神市の一角……多馬川のすぐ近くに1つの廃ビルがある。
そこは俺達風間ファミリーの秘密基地だ。
廃ビルの管理でごくマレにある“近所の人に監視させるシステム”俺達はそのアルバイトだ。
そして、その報酬としてこのビルの5階を秘密基地として使っている電気は通っていないが水道は通っているので何かと便利だ。
「こうやって見ると、入り口はガッチガチに封鎖されているように思えるけど」
「裏手に1つだけ、中に入れるドアがある、と」
言うと、大和と京は裏手のドアを開ける。
「では本日も警備を開始しますか」
「アイアイサ〜〜」
大和が言うと中に入っていきユキはそれについていき、京と俺も2人に続いて廃ビルに足を踏み入れ、見回りを開始した。
「5階まで異常なし。目的フロアに到着」
廃ビルの5階が、風間ファミリーの秘密基地。部屋の中を掃除して、私物を持ち込んでいるのだ。
「これはこれは3人とも、ごきげんよう」
クッキーが出て来て挨拶する。
秘密基地のソファで寛ぎながら、俺達は買ってきたお茶を飲みながら、天井を見上げる。
「やはりここは落ち着く……」
「外界から遮断されているのがいい感じだね」
そうしていると、不意に京が、
「ねぇ、大和、信也、ユキ。そろそろ進路調査、始まるね」
二人に言った。
すると大和は、
「そうだな。俺は取敢えず進学かな」
などと適当に答え、それとは対象的に俺はというと、
「俺も進学してから将来のことを考えるさ」
すると京とユキは、顔を赤らめて俺に視線を向ける。
「私は主婦かな」
「僕も信也限定の主婦〜」
「Zzz」
恐るべき反射速度で、俺は寝たフリをした。
京とユキはそれに対し、ジト目で視線を向ける。
「寝たフリは禁止。ネタフリならいいよ♪」
「ネタフリならいいよ〜〜♪」
「違いが分かってしまう」
即座に俺はそういった。
「でもさ……なんか」
京は今度はランプを丁寧に磨きながら言う。
「進路とか社会とか…どんどん世界って広がるよね?」
「いきなり壮大な話だな。世界と来たか」
大和が言うと、京は気怠そうに続けた。
「なんだか疲れる毎日」
「うんうん、わかるよ〜僕も毎日が面倒…」
ユキも京に続いてそういった。
大和と俺は、それに相槌を打つ。
「私は、ここと皆がいればそれでいいけど、人との付き合いは大切だって信也もいっていたし、大事にするけど……複雑になっていくよね。大人になるのって面倒くさいね」
恐らく人間誰しもが、思春期のうちは考えることだろう。
「そうな。だが、俺は上手に生きていくぜ!」
「俺も生きていくなら上手に生きていきたいぜ」
大和と俺が自信たっぷりに言い切る。
すると京とユキは、笑顔で反応した。
「頼もしい。そんな信也に守ってもらおう」
「僕達が死ぬまでず〜〜〜っとだよ〜」
「……zzz」
「さらに壮大な話をしていい?」
信也の寝たフリも気にせずに、京は続ける。
「いいぜ」
「おお、話したいだけ話しなよ」
二人が応えると、京は頷いて話し始めた。
「もし、生まれ変わったら何になりたいとか考えたことある?」
「パンダ。チヤホヤされながら笹食いたい」
「俺は……雲だな。自由気ままに空に浮かんでのんびりしたい」
「私は、例えば水槽の中の魚とかいいな。そこにいるのは夫婦の二匹だけ。きっと楽しいよ。仲良くエサもらってせまいスペースを2人でゆったり泳ぐ」
「僕はウサギかな〜。寂しいと死んでしまうから皆と一緒にいられるといいな〜」
大和、俺、京、ユキの順で、三人共個性的な意見をあげた。
「ダメ人間の発言だな」
京の意見を聞いた大和は、呆れ果てた様子で言う。
京はそれに対して、いつものペースで返した。
「今のは泣くところなのに」
「怖いわ!」
「まぁ、普通に考えるとな」
そんなことを話していると、不意にドアが開かれモロが入室する。
「あー負けた負けた。最近のゲーセンはレベル高い人しかいないような」
「あ、やっぱり来た」
京が言う。
「新しい漫画いくつか出ていたから」
そう言って本棚に漫画を並べる。
「5人いるけど、麻雀でもやる?」
「退廃的だねぇ」
京の誘いに対して大和が言うと、モロは椅子に座ることなくドアの方を向く。
「ボクは悪いけど家に帰るよ。また金曜に来る」
モロは直ぐに退室していった。
その後俺たちもやることが無くなったので寮へと帰って行った。