小説『真剣で私に恋しなさい!〜転生させられしもの〜』
作者:レイフォン()

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ドイツからの転入生



転入生が来る日、今日もまた風間ファミリーは皆でのんびりと登校していた。


「あ、またモモ先輩への挑戦者がいるよ」


モロが声をあげると、一度は目の前で仁王立ちする男性を見る。


「お、今度のはずいぶんと若い兄ちゃんだな」


言うとモモ先輩は男へと向って言った。


すると、男は必要以上に威勢良く声をあげる。


「シャース!俺は殺人空手を身につけ、野生のイノブタを一撃で仕留める程の使い手っス!シャース!名は鈴木健太、出身地は群馬!武神・川神一族をこの手で倒し、その話をハリウッドで映画化してもらうのが夢っス!」


初対面の相手に対しての挨拶にしては異様に説明が長いが、風間ファミリーは敢えて誰も突っ込まない。


「信也、今度の相手はどのくらい強いんだ?」


大和が尋ねると、モモ先輩以外の面子の視線が俺に集まる。


すると俺は、面倒そうな表情で、


「いや、全くと強くねえよ。殺人空手って言っても、立ち振る舞いからして我流っぽいし、イノブタくらいなら達人なら指一本だ。多分、モモ先輩なら……」


「あおぉーーーっっ!!!」


言い終える前に、男はモモ先輩に殴り飛ばされた。


「……一瞬だろうな…」


空手家は、一撃で星になった。


それに対してモモ先輩は、微笑を含んだ表情で呟く。


「我流だったな。自称空手だろうが…面白い馬鹿だ」


「信也の言う通り、今日はソッコー片付いたな、行こうぜ」


大和がクルリと振り返ると……、


「っ!?」


誰かにぶつかってしまった。


「すみませんでした」


大和が直ぐさま謝ると、ぶつかった相手の明らかに堅気には見えない服装の外国人も彼に謝る。


「私の方こそよそ見をしていた。今のは果たし合いという奴だな、面白かった。若者の謝り方もきっちりしているし、ここからうっすら見えるのはフジ山。やはりこの国に来て良かったな。フフフ……」


不敵に笑うと、外国人は去って行った。


「なんだ、今のは?不思議な人だな」


「……ふむ、歩き方からすると軍人だな」


「春だから。変な人も出るさ」


大和が漏らした言葉に、俺と京が応える。


一方でモロがふと思い付いた様子で、

「美少女ゲームだとさ、朝ぶつかった相手が転入生だったりするよ」


などとアホなことを言う。


すると、それを聞いた百代が笑い出した。


「はははっ♪オッサンと大和のフラグが立ったのか」


一方で京は変な妄想をしている。


「あの軍人×大和……はぁはぁ」


「やめい!変な妄想するな!」


大和が若干怒りながら京にツッコミを入れていた。


「今回はちっとも大和が羨ましくないぜ」


岳人は笑いながら言うと、俺も笑った。


「ははは!大和、ドンマイ」


「笑うなあ!!!」


そんな風に雑談しながら、俺達風間ファミリーは今日もダラダラと登校した。










学園に着き、俺達はクラスへといった。


その日のHRは、いつもより早めに始まった……。


「それでは、お待ちかね。転入生を紹介しよう」


ウメ先生が言うと、教室中がざわめき出す。


そんな中、ウメ先生がドアの方を向いて声をあげた。


「入りたまえ」


途端に、ガラガラと音をたててドアが開かれ、


「グーテン・モルゲン」


ドイツ語の挨拶と共に、朝大和とぶつかった外国人が入室する。


それを見た途端、教室中ざわめきが大きさを増した。


「え?あ、あの人が転入生だっていうの?……ちょっと老けてる感がないかしら?」


「そこが問題じゃねーよ!」


ワン子の的外れな疑問に、岳人が直ぐさまツッコミを入れる。


それを引き金に、クラス中が困惑し始めた。


一方で、彼と面識がある大和達は、


「ああ!?あの時の!」


「おお、君か。また会ったね」


外国人が反応すると、信也が何故かピザを食しながら、困惑した表情で声をあげる。


「ドイツのオッサン軍人を加えて、この学校は何を補強するつもりだよ……。むぐむぐ」


そんな中、ウメ先生が呆れ果てた様子で生徒達に言い聞かせる。


「皆勘違いしないよう。この方は転入生の保護者だ」


すると、クラスメイト達は安堵の表情を見せた。


「あ、そーなんだ、びっくりしたなぁ。もぐもぐ」


「こら熊飼!HR中だぞ!ピザを食うな!」


HR中にピザを食っていたクマちゃんに、容赦無くムチが振り下ろされた。


「あ、ごめんなさい!驚いてお腹空いちゃって」


「罰は百たたき。これも日本の伝統ですな」


通常なら驚愕の瞬間を見ると、外国人は何故か感動する。


「あの、ご息女は?」


痺れを切らせたウメ先生が尋ねると、外国人は、


「ご安心を。時間には正確な娘です。間もなく駆けて参りましょう」


窓を指差して言われると、自然とそこには視線が集中する。


転入生クリスティアーネ・フリードリヒは、その美麗な容姿に良く似合うきらびやかな金髪をはためかせ、颯爽とグラウンドを駆けた………馬で。

「クリスティアーネ・フリードリヒ!ドイツ・リューベックより推参!!この寺子屋で今より世話になる」


良く通る美しい声が、グラウンドに響き渡る。


それを見て2―Fの男子は、


「おおお金髪さん!可愛いくね、マジ可愛いくね!?」


「超・当たりなんですけどぉぉぉぉぉ!!」


ヨンパチ、岳人などはテンションを急上昇させ、一方で色恋になど興味もない筈の翔一も、ケラケラと笑い出した。


「だっはっはっはっ馬かよ!面白ぇあいつ面白ぇ♪」


それとは対照的に、俺、大和、モロなどの正面な人間は、苦笑すらも出来ずにいた。


信也達が再びグラウンドへと視線を戻し、校門を潜る人力車を見た次の瞬間には、呆れ果てて溜め息も出ない様子でいた。









「クリスティアーネだ。よろしく」


馬から降りてクラスに来たクリスは黒板にドイツ語と、カタカナで名前を大きく書いた。


「日本語が全く違和感がないな。たいしたものだ」


「リューベックに居た昔の友達に日本人の友達がいました。その人達と接している内に覚えたのです」


「うむ、円滑なコミュニケーションが望めるな。よし、質問があれば挙手していけ」


先生が生徒達に質問の許可を出す。


「はいはい!!」


岳人がすぐさま手を挙げる。


「では島津。品位をもってな」


「オッスオッス!えーと、くりすてぃあーね?」


「自分としてはクリスと呼ばれることを希望する」


「クリス。彼氏はいたりするのか?」


岳人は未だ教室に父親が居ることを忘れ、親が聞けば必ずリアクションするであろう質問をのっけから聞いてしまった。


「そんなものいるわけないだろうがっ!!」


案の定フランク中将は怒り、拳で壁を殴った。パラパラと天井から埃が落ちてくる。


「父様の言うとおりだ」


「さ、さいですか……」


「クリスにちょっかいを出す者は軍が一欠片の存在も残さず駆逐する」


「GUN?」


聞き慣れない単語に目を丸くする一同。


「父様は任務に私情を挟まない素晴しい軍人だ」


「今めっさ持ち込んでたでしょうが!」


ヨンパチがツッコミを入れた。


「ふふふ」


クリスは楽しそうに笑みを浮かべている。


「何だか機嫌良さそうね?」


「大好きな日本にようやくこれれたからな。それに会いたい人に会えるからな」


「ちなみにその会いたい人って?」


「この学園に通っている八神信也と言う男子生徒だ」


………………えっ?俺!?


「何故俺なんだ!?」


「久しぶりだな!信也!!元気だったか?」


「………会ったことあったか?」


俺がそういうとクリスは悲しそうな表情をした。


「な、何ッ?!私を覚えていないのか?ほら、5年前にリューベックで会ったじゃないか!」


「5年前……?………あっ、そういえば父さんの仕事についていった時に女の子を助け……ああ!あの時の女の子!そうか、クリスか!久しぶりだな!」


俺は昔のことを思い出し、笑顔でクリスに言うと、


「お、思いだしてくれたか///それは何よりだ」


顔を赤くして笑顔に答えてきた。


俺達の笑顔を見ていた京・ワン子・ユキは、


『……………』


絶対冷凍の視線を俺とクリス…特に俺に浴びせている。


「………(汗)」


3人の視線に気づいた俺は汗を流す。


ちなみに、男子達は俺とクリスのやり取りを見て、フランク中将に「あんたの娘が男に抱きついているけどいいのかよっ!!」って言っているが……


「うんうん、彼ほどの者なら安心してクリスを任せられるな!彼だったら!!」


『何故だああああああああああああ!!!!』


絶望したように叫んだ。


「しかしだなクリス、大勢の前で男性に熱い視線を浴びるのとそんな表情をするな」


「っ!?///」


クリスは俺から視線を外し、前に戻った。


クリスが落ち着くと、


「父君、そろそろ」


「そうだな。皆、娘をよろしく頼む」


そして中将は教室から出ていった。即行で戻ってきた。


「クリス、なにかあれば戦闘機で駆けつけるからな」


「駄目だこの親、早く何とかしないと……」


今度こそ帰ったと思った…………ら三度戻ってきたら、


「信也君。もしクリスと交際することになったらこの番号に連絡してくれ。軍の特別回線だ。何なら私のことをお義父さんと呼んでくれて構わない」


「そんなの俺に渡していいのかよ!?それ軍の回線だろ!?だめだろ?!俺は一般人……ッていねえし?!」


俺のツッコミを無視してフランク中将は今度こそ帰っていった。後に残されたのは呆然とする俺以下2−F一同と顔を真っ赤にしているクリスだけだった。


「……他に何か質問のある者はいるか!」


なんともいえない空気を払拭するようにウメ先生は大声を出した。ここぞとばかりにワン子が手を挙げる。


「はーい質問!何か武道はやっているのかしら?」


「フェンシングを小さい頃からずっと」


「YES!!梅先生提案。転入生を歓迎してあげたいと思いまーす」


ガバッと勢い良く立ちあがったワン子はそい言い放つ。


「ふふっ、血気盛んだな川神。だがそれは面白い。クリス、そこのポニーテールがお前の腕前を見たいそうだ」


「!!……なるほど、新入りの歓迎、か」


「川神学園には決闘っていう儀式があるの。自分のワッペンを机に置く」


ペシッと軽快な音を立てワン子は自分のワッペンを机に置く。


「おもしろい。その勝負、受けて立つ!!」


クリスが力強く言うと自分のワッペンを机に置く。


「受理したぞ!!」


「きっぱりしてて気持ちがいいや」


「マジッ決闘、久しぶりにみれるんだ」


クラスの皆は久しぶりの決闘を見ることができることに騒いでいる。


「待て、肉体を使用する決闘の場合は職員会での了承が必要だ」


「ほっほっ。小島先生話はきかせてもらったぞい」


いつの間にか姿を現したのか爺さんがなぜか居た。


「学長。いつの間に………」


「いいよワシの特権で了承するぞい。今すぐやんなさい。ワシが責任もって見届けよう」


そんな訳で決闘が受理され、今すぐに決闘を始めることになったのであった。

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