クリス、風間ファミリーに入る
「拝啓、父上………かしこ」
[まあ、なんでこんなことしてるんだろう]
「お友達がまだいないからです〜」
[ファイトだぜ、今日こそ、あの風間グループに入れてもらうんだろう？]
「そ、そうですが」
[入れてＹＯ、ＹＯＵ言っちゃいなよ]
今日も、友達１００人計画を頑張っている、由紀江であった。
金曜集会の次の日。土曜日に予定通り河原で野球を俺達はしていた。
「四番、ファースト、島津ーっと（←打者）」
「ガクトか。空振りとりやすい相手かな（←投手）」
「ウルァ！ 来い京。ヒョロッ球を太平洋にまで飛ばす」
「ガクト。そんなことできるのは俺かモモ先輩ぐらいだぞ（←審判）」
「確かにな。それに結構いい球投げるぞ京は（←捕手）」
「ライトー、レフトー、センター、よろしくねー」
「任せとけー。ズバッと投げろい（←ライト）」
「どんな球来ても捕るよー（←レフト）」
「バッチコ〜イ（←センター）」
皆もそれぞれのポジションでスタンバイしている。
「痛烈な当たり以外、内野ゴロはアウトだからな」
「ゴロなんて論外！ 俺様はＨＲのみ目指す！」
一方、一緒に野球をしていないキャップとモロはクリス一緒にいた。
そのクリスは遊んでいる俺達を見物している。
「野球……か」
「まぁテキトーな投手対打者勝負なんだけどな、俺達いつもこーやって遊んでるだ」
クリスはキャップが勧誘することになった。まぁ、発案がキャップなのだから当然だな
「それっ、ハンサムには打てないボール！」
京がボールを投げる。
「マジで（空振り）」
「１ストラーイク！！」
俺がストライクを宣言する。
「ずりいぞ。マジメにやれ京」
「断る」
ガクトが文句を言うも京はほとんど気にしていない。さすがにこのままでは、勝負にならない。そこで俺は京に言った。
「京ーー！ 真面目に勝負してやってくれよー」
「承る」
京は俺の要求には応じたようだ。相変わらず従順というか、何というか……俺が言うとやってくれるのね。
「なんかもうね……絶対打ってやるよ」
京がボールを投げた。今回はしっかり投げた。
しかし、
「フン」
カキィィーーーーン！
ガクトがバットを振り抜くと良い音が聞こえてくる。
「あれ、打たれた？」
「行った！ これは球場だったら文句なくバックスクリーン直撃だろ」
確かに。ガクトの言うとおりここが球場だったら直撃していたであろうな……ここが球場であればの話だがな。
「甘いなガクト。快速の外野を忘れてはいけない」
そうここは河原なので球場と違ってフェンスがないのだ。だから河原が続く限りボールを追いかけることができる。ゆえに、
「はっはー！！！ ジャンピング、キャーッチ！」
「アウトー」
「あ、僕の球〜。もう、取らないでよワン子〜」
運動大好きっ子であるワン子がキャッチする。
しかし、まさかユキの守備範囲であるセンターまで取りに行くとは…さすがワン子だな、
「センターの仕事も奪うとはビバ、ワン子。私の勝ちね」
「ちょっ、あれ入ってる飛距離だろ、ワン子ずりぃ」
ガクトが俺に向かって抗議してくる。
「ガクト、男なら諦めろ。見苦しい。アウトはアウト。アーウート」
「あ、今のイラッときた。ちょっと打席立て信也」
「何だ？ 俺とやろうってのか」
ガクトに勝負を挑まれたので受けて立つ。俺はバットを構えガクトの投げるモーションを待つ。
「くらえっ！俺様超豪速無敵最強球！」
なんともまあ長い技名だな。そっちがそれなら……
「はっはぁあ！！俺様の美技に酔いな！」
ストレートど真ん中に来た球を軽くバットを振って撃ち返す。すると、ガクトの顔面にクリーンヒットした。
しかも、ガクトの顔面に当たった球はこっちに跳ね返ってきたので…
「これが破滅への輪舞曲(ロンド)だ！」
もう一度ガクトの顔面目掛けて撃ち返した。
「がふっ！」
バタン
同じところをぶつけられてガクトは倒れた。
「アレはどうかと思うが……楽しそうだ」
野球を見ていたクリスがキャップに向かって言った。
「そう思うならクリスも仲間に入れよ」
「いいのか？」
クリスが期待が篭った目でキャップを見る。
「皆で話し合ってＯＫが出てるんだ。歓迎する」
「ありがとう、いきなりこんなに友達が増えるとは嬉しいな」
モロが俺達の所に駆け寄って来た。クリスとキャップの話が終わったのだろう。
「クリスと話ついたよー。入るってー」
予想はしていたが、クリスは風間ファミリーに入るって事になったようだ。
「おう、よろしくなーー！！」
「それじゃあ今夜は島津寮でプチ宴だな。川神院から肉を持ってそっちにいくぞ」
モモ先輩が俺に話しかけてくる。
「つまり、俺に料理しろと言うんだな…」
「当たり前だろう？ 他に誰がするんだ、それに信也の作る料理は美味いからな」
モモ先輩にそう言われると悪い気はしない。しょうがないか。久しぶりの新メンバー介入だし。腕によりを掛けて作ってやるぜ！
「そしてその後は、親密度を深めるために一緒に風呂だ！」
…………絶対にセクハラする気だな。
「クリス、こっち入るってさー！」
「おー、あっさり加入してきたわねぇ。クリー！ このグループじゃアタシが先輩。そこんとこよーく考えて敬いなさいよー！」
「犬か……やはり何回見ても納得いかないな」
「……ワン子に文句があるわけ？」
クリスの言葉にモロが反応する。クリスのワン子に対する言葉にムッときたのだろう。モロは仲間思いでいい奴だしな。
「あ、そうではない。断じて違う。ただ学長や百代殿と比べると同じ一族とは………」
クリスは自分のワン子に対する感想を口にする。
「あぁ、ワン子は養女だから」
「え！？」
キャップの一言にクリスの表情が驚きに変わった。
「ワン子元々孤児だったのを引き取ってもらって。で、その引き取り手もおばあちゃんだったんで亡くなって。で、モモ先輩……つか川神院が引き取った」
「そうだったのか……」
キャップからワン子の身の上話を聞いたクリスが暗い顔になった。
「？ 別に悲しい話しでもないぜ。ブルーになんなよ」
「地元の人達は大抵知ってることだしね」
キャップ達がクリスにフォローを入れる。
「そうとも知らず無神経な発言を昨日したんだ。川神院でお前だけ浮いている……と直にいった……」
「ワン子にか？ それはひどいな、いじめっこー」
キャップがからかうように煽りを入れる。
「う……あ、謝ってくる」
クリスはワン子に謝りに行こうとするがキャップがそれを止めた。
「冗談だって！ 今更蒸し返すなって！」
「大丈夫。ワン子、クリスが入る事反対してないし、過程はどうあれ今は家族だしねー」
「そういえばあの時、大和が犬の頭を撫でていた」
「さりげなく気に掛けてるな、流石軍師大和だな」
「そうだったのか……」
クリスは昨日自分がワン子に言った言葉を反省しているようだった。
「いつまでそんな顔してんだ。気にすんな」
キャップがクリス言葉をかけてクリスは皆がいる場所へと向かった。
「クリス、これからよろしくな」
「ああ、こちらこそ」
こうして、クリスは俺達と遊ぶ事になった。
ちなみにその頃、島津寮では…
「……クリスさん、いませんでした」
1人、寮に由紀江はいた。
「外に遊びに出かけたんでしょうか？」
[昨日転校してもう友達（ダチ）できたのかな〜]
「異国で初日で友達作り…凄い技術（技）です！」
[それなのにウチのまゆっちと来たら……]
「うわああああああ！！！」
1人、泣いていたのであった。