ミッション!窓割り犯人を叩き伏せろ!
あの義経達との出会いの次の日。俺達は爽やかな朝の登校をしていた…のだが、
「モモ先輩こっちむいてー!超むいてー」
朝からモモ先輩のファン達のうるさい声で台無しだな。
まぁモモ先輩はちやほやされて良い気分みたいだが。
そして、モモ先輩はファンの1人を御姫様抱っこして先に学校へ向かった。
そんなモモ先輩を見てガクトが言った。
「羨ましいな……1人でいい。群れからはぐれたのを捕獲できれば」
そんなガクトを置いて俺達は学校へ。
――川神学園・廊下――
靴を履き替えて廊下を歩いていると異様に騒がしかった。
「何かあったのかクマちゃん?」
「ああ。朝からこんなに騒がしいなんて珍しいからな」
ちょうど騒ぎの中から出てきたクマちゃんに俺と大和は問い掛けると、ケーキを食べながら答えてくれた。
「今度はこのガラスが割られてたんだって、もぐもぐ」
クマちゃんが指差した方を見ると、そこには無残に割られた窓ガラスがガムテープやらで応急処置されていた。
「何またか。いい度胸してやがるな」
「おーおー。ついにこんなことまでするとわな…学長も黙っていないだろうな」
「うん。八神君の言う通り、さすがに学長怒ると思うよ。もぐ、んーケーキ美味しい」
「朝からガトーショコラかよ、すげぇなクマちゃん」
「うむ。朝からケーキと言うのにツッコミたいが、うまそうだな」
「クーベルチュールがたっぷりと使われていて最高なんだ」
俺と大和は味見にクリームと生地の所を食べる。
「美味い。これ、甘味を引き出すために隠し味として蜂蜜か何かを入れているな」
「おぉ、八神君わかるんだね。はい、おすそ分け。八神君は味、分かっているようだし、大目に上げるよ」
そう言われ、俺と大和はケーキを貰って、教室に入る。
ガラッ
教室に入るとワン子とユキが俺達に近づく。
「お、何それ美味そうじゃない信也、大和」
「クマちゃんに分けてもらったケーキ。ワン子少し食べるか?」
「ユキと京も食べるか?」
「うんうんっ、欲しいわ!」
「信也の白くて美味しいものを私にた・べ・さ・せ・て♡」
「わーい!美味しそう〜」
俺はケーキを2個貰ったから1個を半分に切り、2人の口元にもっていく。
「「頂きます…もぐもぐ…う、美味い!!」」
2人は目を光らせる。京も目が輝いている。やはり女の子は甘いものが好きなんだな。
「あ…ニヤリ」
京がクリームの付いた俺の手を見て、笑う。
「ん…ちゅ…ぺろ」
そして、あろうことか俺の手を舐め始めた。
「わわ!京、大胆だわ…」
それを見たワン子が顔を赤くする。心なしかクラスにいた女子数人と男子数人が見ている。
「ちゅ…美味しかったよ信也♡」
「…はぁ」
京、お前教室とかでんなことするなよ…と言ったら、なら、寮だったらいいんだね!?とか言いそうだし、言わずに言おう。
と、思いながら俺も貰ったケーキを食べる。もぐもぐ…うん、美味い!味も覚えたし、材料とか何をつかっているかも覚えたし今度作ってみるか。
チラっと大和達の方を見ると、クリスが悔しそうに大和を睨んでいた。
あはは、ぶつぶつ言っている間にケーキなくなったか。
――放課後――
図書室で本を読んでいると、キャップからのメールがきた。内容は“久しぶりの依頼をとったぜ!2-Fの教室に集合だぜ!”と言うものだった。
本を棚に入れ、教室へ向かう。
教室へ着くと俺以外のメンバーが全員揃っていた。
「あらま。俺が最後か」
「よっし!これで11人揃ったな!喜んでくれ! 久し振りに“依頼”が来たぜ」
それを聞いて他のメンバーが喜ぶ。特にモモ先輩が。
「あの、依頼というのは?」
新入生と言う事もあってそう言う事を知らないまゆっちが聞いてきた。
「俺達、部活の練習試合の助っ人なんかで雇われる時があるのさ。それを依頼って呼んでる」
「大抵お目当てはモモ先輩と信也とかの運動能力だけどね」
まゆっちの質問に大和とモロが答える。
「彼氏の振りをする依頼とか男が頑張るのも色々あるんだぜ。フフン」
「彼氏の振りの依頼をこなしているのはキャップと信也だけどね」
…彼氏の振りをする役をした日の夜は京とユキに夜這いされかけたけどな。
「つまり、よろず屋。何でも屋か」
「そういうことだ」
上手い表現のクリスに同意しておく。
「報酬は食券で受け取る。今回は1人上食券8枚」
「おお、リッチ!結構規模がでかそうな依頼ね」
「討伐クエストだな。“窓割り犯人を叩き伏せろ”」
「それ、依頼に回ってきたんだ」
「まぁこの依頼は俺達向けだな」
武力と頭脳が揃っているからな。
「よくもぎとったな」
「もぎとる?」
「他にも何でも屋やっている連中多いからな。依頼はまず競りにかけられるんだ」
「それで競り落としたチームが責任持って依頼を果たしていくわけだ」
「今秋になって、校内の窓ガラス割られてるだろ」
「川神学園では初らしいぞ。ガラス割なんてのは」
「ウエェ〜イ!命知らずな奴らなのだ!」
確かにな。この川神学園を標的にするとかバカだろ。
「犯人達を懲らしめて捕縛しろってさ」
「セキュリティ会社は何してんだ」
「何でも、逃げる犯人を取り押さえたら他の仲間に突き飛ばされたらしい。ただの雑魚じゃないぞ。情報をまとめる。敵は3,4人のグループ。逃走は自動車を使用。警備員が音を聞いた」
「それで十分だ。今夜早速警備しろって事だな」
「ちなみに依頼主はヒゲだぞ」
「ヒゲ?」
「2-S担任。ヒゲ生えてるからヒゲ。ひねりねー」
んで、武器は虚異質のレプリカを自由に使っていいとの事だ。それを聞いたらワン子が喜んでいた。
っというか、学校の事だから宇佐美先生が解決させればいいが、本人曰く、面倒だとのことだ。
それで俺らに依頼として回ってきたというわけだ。
そして、
「ふふふ。これで少しは楽になるぞ」
「ちょっと危険な依頼だぞ。俺様に任せておけ」
「冗談言わないでよガクト、アタシはやるわよ」
「むしろガクトが危ないんじゃないかな」
「アッハハハ!言えてる言えてる〜」
「僕は元から戦闘に参加する気ないんで斥候で」
「大丈夫だガクト。皆でやれば問題ない」
「そうそう。仮に強いの出てきても俺やモモ先輩いるしな」
「新・風間ファミリーのお披露目だな」
俺達は全員取る。後はまゆっちとクリスだけ。
「み、皆さんやってますので私もやります!」
俺達を真似て食券をとるまゆっち。
キャップがクリスに受けるか受けないかは自由と言うと、クリスは受けると言う。
「ただ、報酬はいらない。もらわなくても捕まえる」
との事だ。皆貰っているのに1人だけ取らないとは…KYだな。
大和が1枚ぐらい貰っておけと言うが、クリスは見返りは求めないと言う。それを聞いた京がいつもよりも低い声で小さく呟いた。
「A棟、B棟とやられているから次の狙いはC棟だろ」
「私が気を探ってやるさ」
「おそらく相手はバット系の凶器を持ってるから単独ではなくツーマンセルで行動。
こんなもんか。軍師大和なんか意見あるか?」
「ツーマンセルの組み合わせだが…キャップとワン子、クリスと俺、まゆっちとガクト、それに姉さんとモロ。
京は屋上で逃げそうになった相手の車をパンクさせるため、屋上で待機し、その護衛に小雪だ」
「大和。俺はどうする?」
「信也は万が一、逃げられた時のための保険な」
「わかった」
なお、モロは戦闘に参加しないので連絡係である。
「行くぞ。俺達の学園を荒らす奴は容赦しないぜ!」
「ああ。遊ぶ場所を間違えた事思い知らせてやる」
「そして、二度とこんな事をするようなことがないようにお仕置きしてやるよ」
そして、ワン子とクリス、京はレプリカ武器を装備。
「しかし6人ともと武道やってる女子ってのも凄いな。武士戦隊サムライレンジャーと名付けよう」
「私はブラックだろうな」
「レッド! アタシレッド! クリはイエロー決定!」
「良く分からないがイエローは正義なのか?」
「6人ともジャスティス」
「ならば色などこだわらん。イエローで結構」
「私は静かなる色、青希望」
「あ、あの……そもそもどういった内容のお話ですか?」
「そんなまゆまゆは癒し系だからグリーンだな」
「ボクはマシュマロの白だから…ホワイト〜」
6人の女子の色が決まると、
「だははははは! 良く考えたら受けるな!」
「何がおかしい?」
「6人女子なのにピンク似合うの1人もいないとか、つい笑っちゃうだろこれ!ははははは!!」
これを聞いた俺達男子はこう思った。
『思った事を口に出して言うとは…ガクト…南無阿弥陀仏…』
そして、
ドス!ゴスン!バキィ!ズドーン!
ガクトが笑えなくなるのに3秒もかからないのだった。
――川神学園・夜――
俺は京とユキの3人で屋上にいる。まぁ俺は標的が学校内に入ったら下に行けばいいしな。俺達の他にはモモ先輩やモロもいる。
すると、校門に4人の影が見えた。
「敵は4人……丁度良いことに各階に分散したな」
モロはその情報を皆に伝える。
「さて、俺は下に降りるけど…京の護衛は任せたぜユキ」
「まっかせなさ〜い」
「京、狙撃期待しているぜ」
「任された」
頷く京。
「んじゃ、行くか…とぉ!」
俺は屋上から飛び降り、クルクル回り、着地。
「う〜〜ん、100点満点…綺麗に決まったぜ」
そのまま、俺は校門の上に登り、誰かくるかを待つ。
〜数分後〜
校門を誰かが通る。
それと同時に、スパン!という音がする。
「んあ?なんだべ今の音
あ、ああああ!タイヤに矢が?パンクしてるじゃねぇか
だ、誰がどこからこんなもんうちやがった?」
そんな驚く少年の後ろに立つ。
「屋上からさ。京は天下五弓の称号を持っているからな」
「なっ!?て、てめぇは誰だ!」
「年上に向かって、てめぇ…か。年上に対する礼儀もおしえてやるか」
「の、のぉおおおおお!
ドスバキヅスンドカーン!
「あ、あががが…」
気絶しかける少年を…
「ワン子!薙刀で打ち返せ―せや!」
少年を投げる。
「よーし!川神一子、うっちまーす!」
カキーン!
良い音と共に少年が打ち返され、車に激突。
「ウボェ!」
変な悲鳴をあげて気絶した。
そうしていると校内にいたキャップ達が出てきた。
「見事!」
「楽な依頼だった。もうちょい刺激欲しかったか」
などと感想を述べているが…一方では、大和とクリスが言い争っていた。
どうやら依頼は果たしても、結局は大和とクリスの溝は深まってしまったのであった。