人気者、燕
学校に来た俺達はワン子に燕が朝の川神院での稽古の事を話してくれた。
どうやら、幼少時代のワン子のように稽古で吐きそうになることはなかったようだ。
「…と言う事が朝あったわけさ」
「私とユキが信也の布団に潜り込んでいる時にそんな事が」
「暑くなってきたというのによくやるな」
「朝から頑張って偉いケド宿題やってない理由にならぬ」
「確かに。せめて少しやっていればいいのにな」
「ふぐっ!」
「山口県ではバレンタインに河豚を送るという…」
「なんと!」
「嘘だよーん」
「なんだと!」
朝から元気だなクリスは。俺なんて起きたら京とユキが布団に潜り込んでいて、しかも京に限っては俺のズボンを降ろしてパンツに手をやってたからな…もう少し起きるのが遅かったら…………食われてたな。
「わ、分かってるけどそこを曲げてうつさせて…」
京にお願いするワン子。
だが、京がそんな簡単に…すぐに貸すわけない。
「うつさせて?」
「ください…」
「ください?」
「くださいワン…」
泣き顔で語尾にワンをつけるワン子。
それを見て呆れるクリス。
「仕方ないなぁ…」
「宿題やってこないと完全に犬扱いだな」
すると、大和は頑張っているワン子を応援しないとなといい、ワン子は大和には明日の分の宿題を見せてもらおうと言うとするが、
「大和、甘やかさないでね」
「無論、わかっているさ。試験前の勉強に付き合うよワン子。これが俺のしてあげられること、さ」
それを聞いたワン子はがっくししている。
「ぐぅ…いつものオチ…こういう時は連携技完璧ね」
この日も学校を終えた。
――屋上
俺は帰る前に屋上で空を眺めている。
そこへ、
「やっほぉー信也」
「燕か」
俺の隣に燕が座る。
「稽古始められたんだってな」
「うん。今日からね。いやー流石は天下の川神院。基礎鍛錬も結構ハードだったよん」
「でも、バケツのお世話にはならなかったんだろ?」
「あれ?誰に聞いたの?」
「ワン子…あー一子って言えばわかる?」
「百代ちゃんの妹だね。なるほど、そう言えばあの子とは同じクラスだったね」
「ああ。まぁ頑張って」
「うん。さーってと、信也の顔も見たし…私帰るね!じゃあ!なットウ!」
シュン!
そういいながら屋上から消えて言った燕であった。
――秘密基地――
「ってわけで、米子も出雲大社も良かったぜ」
旅から帰ってきたキャップの話を聞いている。
何でもまゆっちが出雲そばを食べた言って呟いてたのと自分が食べたくなっていつの間にか出発していたとか。
んで、土産がまゆっちには本場の出雲そば。他の女性陣には和菓子。モロは妖怪グッズ。ガクトはしじみエキス。大和には出雲特産の野菜の葉など。皆はキャップに礼を言う。んで、俺には…
「燕の…納豆小町のポスターか」
「ああ。何かお前、松永先輩と仲良いし、これがいいかなーって思ってな」
改めてポスターを見る。これを見たら普通の納豆と松永納豆…どっちを買うと言われたら松永納豆だろうな。
燕は3年生だけでなく、1年生、2年生でも人気だしな、本人も美人だし。
「それで…信也は松永先輩のポスターをもらえてうれしいん?」
「うれしいのか〜?」
……京とユキの目の色が…怖いんだが。
「というか、いつから燕の事を呼び捨てにしているんだお前」
……しまった。皆の前では名前を呼ばないようにしようとしてたのに。
「い、いや〜屋上にいると良く会うから名前で呼んでいいよん…と言われて。
「ふ〜ん」
「ふふ〜ん」
「へぇ〜」
「ほぉ〜?」
「はぅ〜」
「ふぇ〜」
…6人の目の色が……真剣と書いてマジで怖いです。
「まぁ…いいか。それにしても楽しいぞ!あいつが稽古を一緒にしているとな!」
モモ先輩が上機嫌で話をするのであった。
俺は今日、京達に襲われるんじゃないかと言う気持ちが高く、あまり寝れなかった事を言っておこう。