小説『真剣で私に恋しなさい!〜転生させられしもの〜』
作者:レイフォン()

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願いと企みと





――第3者 SIDE――


七夕…一般的に考えればロマンティックな日だが…川神学園の体育館では、カーテンによって仲を見れなくされていた。
その中では…

「おい今夜、あいにくの曇りらしいぞ」

「あー残念!それじゃ織姫と彦星は会えないねぇ」

「くくっ、心から…心からお悔やみ申し上げます!」

「天気悪くて残念がっているバカップルを創造するとご飯も美味しく頂けるってもんだぜぇ」

ここには、モてない男達が集まり、俗にいうリア充達の不幸を喜んでいた…そんなことしているからモてないと分からないのであろうか。
ここでは、魍魎の宴と言う、モテない男達が集まって、今のようにひがんだり、女の子達のグッズを(勝手に)買いあさったりしている…犯罪集団である。

そんなモテない男達を束ねているのは童帝こと福本育郎である。
童帝が現れると魍魎達は騒ぐ。

「水上体育祭は終わったが…真の祭はここからはじまる。
今回もグッズは大漁だ魍魎ども。銭の準備は十分か?」

その一言に、体育館にいる魍魎達は騒ぎだす。

『十分だぜぇ!!!さぁ早く売ってくれぇ!!!!』

体育館には野郎しかいないのでムアッとした熱気に包まれている。

そんな魍魎の中には…

「…なんか人増えたね。どんどん規模が大きくなるなぁ」

「なにげに毎回楽しみにしている俺様がいるぜ。
モてるキャップや信也は入れない聖域だぜ!ザマミロ」

「威張る事じゃないと思うけど…あ、はじまった」

などと…風間ファミリーの一員であるガクトとモロがいた。
ガクトは、信也がこんな所に興味ないと知らないのであろう。



その後、宴の前に童帝の臣下の1人…ヒゲが魍魎の1人だった生徒を連れてきて、処刑(男として)したのであった。




宴がはじまると男達は興奮していた。だが、臣下達の話によるとどうやらいつもよりも盛り上がってない…いや、正確に言えば、食らいつき方が少ないようだ。
それもこれもどうやら、ある人物のグッズを買うために温存していると言う。

その人物とは

「今回の台風の目!松永燕グーッズ!!」

『うおぉおお!!!!!!』

燕の名が出ると盛り上がる魍魎達である。九鬼絡みである義経・弁慶・清楚・それに九鬼紋白などは危険なので出品

できないので燕のグッズは期待の星なのだそうだ。

最初のグッズは水上体育祭の水着写真(ポーズ&サイン付くであった)
童帝によると、撮影がバレたが、納豆小町のグラビアとしてであればOKであるとのことだ。
その事に皆は買収されているけど、それでもいい!とのことだ。

だが、彼らにある恐怖が近づいていた。




――体育館・外

「ったく。あいつらはこの中で何をしているんだか…」

そう、信也がいたのだ。しかも、ため息をついてやれやれと頭を振っている。

そこへ、

「あ、八神君?」

「ん?」

信也は自分の名前を呼んだ方向に向くとそこには、千花と小島先生がいた。

「小笠原と小島先生なんでここに?」

「この中でやっているの知っているの八神君?」

「ん?ああ、ムアッとした熱気を感じるが?」

「…どうやら本当の事だな」

「ん?中から人が減っている?気付かれたか」

「行きましょう先生!八神君!」

千花は2人にそう言い、体育館の中に入る3人。






「こらぁ!教師の小島だ!全員神妙に……って誰もいないぞ」

「やっぱり気付いて逃げた…か!」

シュン!

信也は何かを感じ取り、気で作った糸を外へと走らせる。すると…

「うっきぃやああああ!」

ドサッ!

「あ!サル!」

「福本!」

信也の前には福本…童帝が転がってきた。
しかも、その拍子に懐から燕のサイン付きの写真が出てきた。それを見た小島先生は…

「この……俗物がぁああああ!」

パチィィィン!

「あぅぅうんっ!…ウッ!」

ドサッ

鞭で叩かれ、あまりの痛みに気を失う福本であった。

「全く。信也。お前がこの写真を持っていろ。サイン付きと言う事は本人が知っているのであろうが、松永にあった

ら渡しておけ」

「わかりました。先生は?」

「私はこの俗物を説教だ」

シュルシュルシュル…ギュ!

鞭で縛りつける小島先生。

「ではいくぞ小笠原」

「はい!じゃあ八神君」

そういい、信也の前からいなくなる2人であった。信也は写真を見る。

「……貰っておこう」

写真を懐に仕舞うのであった。



――第3者SIDE OUT――





――屋上

「あ〜良い風が吹く」

あの後、俺は屋上で風に当たりながら横になっていた。

「本当にね。考える事は同じだねぇ」

そこへ燕が隣に現れた。

「燕もここに来たか」

「うん、屋上は私のお気に入りスポットになったからね…そういや今日は七夕だけど曇りっぽいねぇ」

「ああ。燕は何か祈るのか?」

「うん。おとんのビジネスが上手くいきますようにって」

いや、それってお前自身の願い事じゃないだろうに。

「燕自身の願い事だよ」

「私は…うーん…無病息災で過ごせますように?かな。後は自分で叶えてゆくよん」

「ほぉ?」

「信也は何か願うの?ガールフレンドが出来ますように、とか」

燕に問いに困る俺。

「そうだな。将来の事はまだ分からないし…彼女ねぇ。幼馴染4人にクラスメイトのお嬢様、後輩にクローンの3人、それに燕…俺の周りには魅力的な女性ばっかりだもんな。彼女って言っても困るな」

「そういえば、私と信也って一応、許嫁なんだっけ」

「ああ。その事もあるしなぁ」

本当に困っているんだよな。燕が俺の事をどう思っているのかも分からないし、京やユキのように超がつくほど積極的ってわけでもない。俺はいったい、誰と付き合ったりするのかな?

「…ふふ、本当の許嫁になるかもね」

「…ん?」

燕が何かを言った気がしたが声が小さくて聞き取れなかったな。

その後、俺と燕は屋上から去った。







7月13日からあっら期末試験は金曜日まで行われ、終了した。

テスト地獄から解放された俺達学生は週末を迎えていた。

そして今日は川神院では“風鈴市”という祭が行われているので、俺達は色々とやっている。
ガクトは男のお好み焼き、キャップは朝顔を売り、ワン子・クリス・まゆっちは風鈴を売り捌くのを手伝っている。京とユキは、お菓子や飲み物などを売っている。

「今の所迷子なーし」

「迷子なーし」

「100万円もする18金製の風鈴異常なーし」

「こちらも異常なーし」

俺・燕・モモ先輩・大和の4人で川神院全体の見回り…警備をしている。

「お客が多いけど皆マナー良くて気持ちいいねぇ」

「まぁここでマナーの悪い人がいたら……修行僧やモモ先輩などに叩きだされるからな」

「……そりゃ、マナー悪い人は来ないかもね」

俺が言うとそれに納得する燕。

「しっかりやってんるネ。おかげで助かってるヨ」

「どういたしまして。いつも鍛えてもらってるお礼です」

「じゃあワタシは違う場所も見回ってくるネ」

ルー先生はそういいながら見回りに行った。

「…ふむ。はいモモちゃん質問。ずっとあのポーズなの、ルーさんって」

「あのポーズだと気の巡りがよくなるらしい」

何だと!?あのポーズにそんな意味があったとは…。

「ん、あそこで泣いている男のコは迷子じゃないかな。様子見てきますね。先輩達はそのまま警備を」

「行って来い弟」

大和はそう言って迷子のコの所に。

「あ、私はちょっと電話してくるねん」

「んじゃ、俺は飲み物でも飲んでくるわ」

燕と俺もその場から一旦離れた。







――第3者SIDE――

信也達が警備をしているその頃、川神院の中では。

「風鈴市か…その名の通り風情ある祭りですね」

「もはや市の名物じゃよ。TVも取材に来るぞい」

「こういう祭も必要だが、折角の暑い夏だ。例のド派手な祭の方はどうなった鉄心?」

川神院の中では鉄心・ヒューム・クラウディオが話をしていた。

「うむ。企画はまとまったぞい。こんな感じじゃ」

鉄心は書類を2人に見せる。

「これは…思い切った祭にしたものだな」

「普通にやるだけじゃ芸が無いからのう。色々な駆け引きが生まれると思うしの、夏休みを盛り上げてくれるじゃろ

う」

「うむ…よし俺に異存はないが…開催日が早いな」

頷く鉄心。

「そこだとスタジアムを押さえられるんじゃ」

「クラウディオやれるか?相当強行軍になると思うが」

「簡単な事でございます」

ヒュームの言う事に笑顔で答えるクラウディオ。

「そう言ってくれると思ったぞい」

「早速、諸々の手配致しましょう」

「(これでいい…下地は整えたぞ…後は実行に移すのみよ)」

さまざまな思惑が交錯し、週末が過ぎて行くのであった。

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