小説『真剣で私に恋しなさい!〜転生させられしもの〜』
作者:レイフォン()

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激戦! 百代VS燕…戦いの果てにいる勝者




俺と燕は舞台に立っている。なぜかというと、

「武神・川神百代への挑戦権を与えられました優勝者達
いよいよエキシビションマッチの始まりです!」

大佐がそう言うと俺は舞台から下がる。

「あれー。お前は戦わないのか信也?」

モモ先輩が俺に聞いてきたので答える。

「おう。元々この大会に出たのは燕の頼み事だったこともあるし、優勝したから俺の役目は終わりだ。
故に俺は舞台から降りているというわけだ」

「なんだよー燕と一緒に戦って私を楽しませろよ〜」

愚痴を言うモモ先輩に燕は言う。

「フフ、私だけで楽しんでもらえないかな?」

「なんだ燕、余裕じゃないか。これは正式な勝負で、今までのような稽古のようにはいかないぞ。時間切れはない。

白黒つくまで徹底的にな」

「もちろんっソレは私が望む所だよん」

「いい度胸だ。正式に勝負したかったから丁度いい」

微笑むモモ先輩に燕は言う。

「―――2つだけ、勝負前にいいかなぁ」

「うん?なんだ」

疑問を持ちながら燕の話を聞くモモ先輩。

「まず1つ。モモちゃんと一緒に遊んでて本当に楽しかったよ。勝負後も…変わらぬお付き合いをお願いしたいな」

「ふっ、まるで死亡フラグだぞそんな言い方」

燕の言っているセリフに突っ込みを入れるモモ先輩。

「そして2つめ。私が今まで無敗だったのは何でだと思う?」

「作戦をしっかり立てているからだろ?」

モモ先輩の言ったことに頷く燕。

「うん、まぁ限りなく正解に近いね」

「燕は…」

モモ先輩の言葉に俺が付けくわえる。

「燕は策を練り、そして勝つと確信した相手以外とは正式には戦わないってとこだろ?」

「その通り!さすがは私の許嫁だよん」

「…と言う事はだ。…今の私には勝てると?」

「そうなるかな」

それを聞き、目つきを変えるモモ先輩。

「…牙を剥いてきたじゃないか」

「モモちゃん…いえ、川神百代」

燕もそれに対し、目つきを変える。

「とある方からの依頼で。試合で負けて欲しいってさ
松永の家名と、お仕事を兼ねて!いざいきますか!」

「(―――誰の依頼だ?)」

モモ先輩は燕の言う“とある方”が誰なのか疑問を持つ。かく言う俺もだ。

「(…待てよ?九鬼家がスポンサー…九鬼揚羽は元四天王…1年前…もしかして、燕に依頼した人って…)

「そろそろ準備はいいな、2人とも」

俺が考え事をしていると話が進んでいる。

「いつでも!」

やる気満々なモモ先輩に対して

「あ、じゃあちょっとだけ待ってくれます?」

待ってという燕である。

「うーん気勢を削ぐなぁ」

「ごめんごめん。ほらこっちも100%本気だからさ
平蜘蛛を使うんで準備させて頂戴なっ!」

「!」

“平蜘蛛”と聞き、驚くモモ先輩。俺もどんなものなのか楽しみだな。

そうしている間に燕は腰の装備品を外していく。

カチャ、カチャ!

取り出していく金具を、腰で組み立てていく。

「変身ベルト?」

モモ先輩は訊ねるが、

「残念ながらちょいと違うんだよね…私のは変身じゃなくて…
松永が扱うは機械の力っ…いざ! 装・着!!!」

「なにっ!?」

燕がそう言った瞬間、圧倒的な光が周囲を包み、会場にいる殆どの者がその眩しさに目を手で覆い、燕を見る。

「―――おまたせ。んじゃはじめようか」

「(ムゥ…なんだこの異様な姿は…)」

燕の姿は制服から独特の戦闘服に着替えてあり、右腕に大きな銅色の篭手のようなものを装着している。

「…こんな戦闘服…ずっと隠していたのか」

「そうだよ」

「私を倒すために」

「そうだよん」

「…ヒュームさんが言っていた対戦相手は、お前という事だったのか」





―――観客席

「あの手甲が…平蜘蛛と呼ばれる武器か」

「フハハハ!姉上、よく見ておいてください!」

「なに?」

揚羽は紋白の言った事を聞きなおす。

「姉上に敗北を味合わせた川神百代も、
負ける時が来たのです!」

紋白は一度目を瞑りながら言う。

「武神の鷹揚な所は尊敬しているが…」

紋白は目を開け、自分の思っている事を揚羽に言う。

「1度も負けていないのは不公平である!!」

「では松永燕は…紋が手配したのか」

「はい!実力を見た上で武神の討伐を依頼しました
その代わりに、松永の技術に対し九鬼はスポンサーになりまして…ここ数ヶ月で平蜘蛛も理想形に到達したのです」

紋白の言葉を聞き、顔色を変える揚羽。

「そのようなことをしていたのか…」

「我は姉上が負けたのを聞いて、本当にショックだったのです…」

紋白の言葉を聞いた英雄が言う。

「我とて悔しかった。その気持ちは分かる、しかしな…
!ヒューム、クラウディオ、知っていたな」

英雄の問いに答えるヒュームとクラウディオ。

「はい。武道家としての意見を言わせてもらいますと
川神百代は1度負けておくべきなのです。そうでないと真の強さは得られない」

「私も同じ観点から協力しました」

「かといって俺が倒しては駄目なのです。
同年代に負けてなるべくショックを受けてもらわねば」

「ぬうっ…理屈は分かりますが…姉上」

「とりあえず…この勝負は見届けてみたい
どのように勝つのか…フ…我の血もうずいている」




――――アメリカ

「も、MOMOYOを倒す…?
イッツアクレイジー…」

「しかしこの少女の瞳は…勝ちを確信している。
これは面白い…この勝負…どう転がるか」

「だ、大統領!大変です。衛星の動きに異変が…」

「!?」





――第3者SIDE――



――武舞台

「それでは、はじめーーっ!!!」

試合が開始した。

「そーーら!!!」

百代の鋭い攻撃が、燕を襲う。

バチン!

燕は冷静に百代の攻撃を見切り、軽く拳をあわせた。

「――ははっ、学校での戦いを思い出すな燕!
あの頃と同じ、決定力が無ければ私は倒せないぞ」

「ふふ…だろうね。でも…まずはこれから」

燕はサイドからチューブを取り出し、腰のベルトに差しこむ。

[スタン]

「ぬっ!?」

バチィィ!

燕の手甲に、電撃が走り始める。

「面白い武器でしょう?色々なバリエーションがあるけど…モモちゃんはこれだねぇ。
昔…FFで最強の敵がいたけど雷に弱かったよね。今何かそれ思い出しちゃった」

「ぬっ…初手で電撃の属性で来るとは…!
完全に仕留めに来ておる…ヒューム…あいつの仕業か」

燕の手甲を見て驚く、鉄心である。

バン!

「はぁああっ!」

百代の勢い任せな突撃が燕を襲う。が、燕はそれを簡単に回避する。

ドスン!シュゴーーン!

手甲で殴ると、殴った時に電撃攻撃が百代を襲う。

「ぐあっ…重いな…なるほど……ま、こんな感じだが?」

百代の体少し光、傷が治った。

「出たーっ、武神の名を確実なものにした瞬間回復!」

「ほんと、凄い技だよねぇ…でもさ。それにしたって限界はあるよね。
後何回ぐらい使えるのかなぁ?」

燕の問いに、

「…そだな…1回の戦いで、30回ぐらいか?」

歯を輝かせながら堂々と言う百代。

「あちゃあ30回ベホマを唱えてくるラスボスか…」

「もちろん、そんなに使う前にお前を倒す!」

そう言いながら再び、燕に突っ込む百代。



――スタジアム・観客席

「すげぇな久信…あんなものをお前が作ったのか!?」

零斗は久信の肩を揺らしながら言う。

「そうだよ。…頑張れ燕ちゃん…平蜘蛛は僕の最高な力作だ…
だからこそ、その名前をつけたんだ。2人でなら、武神だって倒せるさ
依頼を受けて川神百代を調べた時は絶望したけどね」



――数ヶ月前

「えーと全てにおいてバランスがとれ、
特に破壊力がまずい。星すら砕くビームを放ち
全世界で危険視されている」

「さ、さすがにデンジャラスな相手だなぁ」

呆れる久信。

「…さらに体力が完全回復する瞬間回復を会得しており、
それを戦闘でガンガン使用してくる
わざと自爆して自分だけ回復するというコンボを極めて凶悪…って」

バン!

久信はテーブルを叩いて叫ぶ。

「無理ジャンこんなの!勝てるわけないじゃん!」

ポスン

「諦めよう…ふて寝だよ、ふて寝!」

久信はあきらめたのか、横になる。

「…ねぇおとん…確かに普通に考えたら勝てないけど
逆に倒したら私達の名前が世界を席巻するよね」

「燕ちゃん…」

「どんな人間にでも弱点はあるし…それに…見てみたいな…この百代ってどんな女の子か」





――戻って観客席

「…頑張れ燕ちゃん…」





――武舞台

「はぁあーっ!」

「ほいっ!」

「くっ…」

百代の攻撃は先ほどから一度も燕に当たらない。

攻撃した後・する前に対応され、重い手甲で思いきり殴られている。

百代の攻撃に違和感を感じる百代の関係者達。

「(というか攻撃が雑すぎる、どうしたんダ!)」

「(そんな怒りに任せた攻撃では、当たらないぞい)」

「(しかも、それだけじゃねぇ。百代のクセってもんを見抜いてやがる…)」

「(研究されつくしているな…こりゃあ)」

「これは意外な展開!武神が押されている!その動きを完全に知り尽くしているようだ!」

大佐の一言で百代もわかった。何故、自分の動きを把握されているのかを。

「…ふぅ…そうか…日々の稽古で把握されたか」

そう言いながら回復をする百代。

「お前、私の技を見るために川神院に」

「それもあるね」

「私と仲良くなったのも…?」

「うん…正直それもあるね」

燕は百代の問いを否定しなかった。そんな燕を見た信也はというと、

「(…燕…悲しい表情をしているな。俺も燕のする事に薄々気づいていたが、友になった者に、こんな事をしたら悲しいだろう…)」

信也はそう、思っていた。

「私の動作を研究していたのか」

「そうでもしないと勝てないんだよ」

「なんだよ…せっかく一緒にはしゃげる友達だと思ったのに!
なんなんだよ!!川神流、人間爆弾!!」

「っ!!!」

ドカーーーーーン!

「これはど派手だ!無理矢理爆発に巻き込んだー!」

煙が舞う。

「…くぁ…ごほっ、ごほっ…!」

「効いたろ?まぁ私は回復するけどな」

そうドヤ顔をしながら燕に言う百代であったが、

「…い、いやぁ…お気遣い無く…」

燕は新しいチューブをベルトに指しこむ。

[リカバリー]

「…こっちも回復するから、よしっ!」

燕はそう言いながら光を発し、回復する。

「なにっ…」

「ていってもせいぜい40%程度。使えて2回。可愛いもんでしょ!」

[スタン!]

シュゴーーーン!

「…ぬうっ!こいつ!!」

「むっ!ギアがあがってきたみたいだね!」

拳と拳が交錯する。その武の饗宴に、多くの者は感嘆の息をもらす。

ドス!バキ!ドスン!

2人の動きは、熾烈さを増していく。

「…う、動きがどんどん素早くなってるけど
戦闘を楽しむためにいきなりトップギアでこない…それも弱点だって今わかるよ!」

燕の言う事に対し、

「ぬかせ。だんだんお前の動きも読めてきたぞ
これはどうだ、かわかみ波ーーー!!!」

百代の手からビームが発射された。

「対策済み!」

[シールド]

燕の前に出来た盾がビームの軌道を上にそらした。

「…受け流したか。なるほど」

「い、痛い…けどね…これはっ…そらすだけで!」

[リカバリー]

燕はリカバリーのチューブを差しこみ、回復する。

「少しずつお前の底が見えてきた気がするぞ燕」

「ん〜それはどうだろうねぃ」

「従来通り…少しずつお前を仕留めるとしよう!」

百代は己の勝利を確信したのか、攻撃が粗っぽくなっていく。

だが、これも燕の作戦である事に百代は気付かない。

「(…モモ先輩、燕が何のためにスタンを使っているのか分かってないのか…負けるぞ)」

信也の中では既に勝負は決していた。

「―――ぐううっ…まずいっ…」

「(いける!!)」

一瞬だけ、今までよりも大きく振りかぶった百代の隙を燕は逃がさず、

「でぇい!!」

シュドーーーン!

今までで一番強い一撃を腹の急所に的確に撃ち込んだ。

「ぐあっ…だ、だが…まだまだ何度でも…回…復…!?回復しない!?」

今までと同じように回復しようとした百代だが、回復しなかった。

「…ふうっ…ようやく…ホントようやく効いてきたね
体に鈍く蓄えられた電撃ダメージが、体の回復機能を麻痺させているんだよ」

「…なに…!」





――観客席&信也

「回復を潰すのはそうするのがてっとり早い。鉄心や信也ならば知っているだろうし、そうするだろう。黙っていたのはフェアだったな」

「回復を潰すのはそうするのがてっとり早いからな。俺や学長もそれに、ヒュームさんも知っているしな。黙って教えなかったのはフェアじゃなくなるからだ…モモ先輩には悪いけどな」




――武舞台

「くっ…体が…」

「勝たせてもらうよ!」

[フィニッシュ!]

燕が手を天にかざすと衛生軌道上の衛生から何かが舞台に向かって落ちてきた。

落ちてきた何かは、轟音と砂煙を巻き起こし百代は、目を手で覆いガードする。

砂煙が収まったところでその落ちてきた何かの正体が判明する。


【決戦武装・平蜘蛛】


百代の目の前には目の前には、8本足の正に蜘蛛といったディテールの大きな機械とドッキングした燕の姿だった。

カチャ

燕は、大きな砲台を思わせる形状に変わった手甲を構える。

「いっけェェェ――――!!!」

すると黒い球体が発生し、それを百代に向けてぶっ放した。

「あっ…」

ドカーーーーーーーン!

黒い球体は百代を包み込み爆発し、光の柱が天に向かって立ち上る。

煙が晴れたあと、立っているのは片手を天にかかげる燕と気を失った百代が地面に倒れていた。

「それまで!勝者、松永燕―――!」

ここに、完全なる勝利を告げる声が、スタジアムに響き渡ったのであった。

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真剣で私に恋しなさい! Original Sound Track ~真剣演舞~
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