小説『デジモンアドベンチャーPARALLEL〜天下分け目の超決戦〜』
作者:setuna()

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超決戦 第一話
〜デジタルワールド〜
太一達が初めてデジタルワールドに行った記念日の8月1日。
子供達は全ての冒険の原点であるファイル島にいた。
〜森〜
大輔「……」
ヒカリ「……」
太一「……」
ジュン「……」
賢「……」
タケル「……」
ヤマト「……」
空「……」
丈「……」
光子郎「……」
ミミ「……」
京「何で黙ってるんですか!!?私達追われてるんですよクワガーモンに!!」
沈黙しながらクワガーモンから逃げている大輔達に京が突っ込む。
太一「あ、いや…懐かしいなあって…」
京「懐かしい!!?」
ヤマト「俺達がデジタルワールドに来た時、クワガーモンに追い掛けられたんだよな」
空「そうねえ、あれから5年経ったけど今でも昨日のように思い出せるわ」
大輔「太一さん、京と伊織はまだこういうことの初心者ですよ?」
ヒカリ「そうだよお兄ちゃん。京さんと伊織君はまだこういうことに場慣れしてないんだから、ね?」
伊織「これは場慣れ以前の問題ではないでしょうか…?」
なんてタフな人達なんだろうと伊織は思った。
丈「昔は「冗談じゃない!!」と思ったけどさあ」
光子郎「今思い返してみれば良い思い出ですね」
丈と光子郎が苦笑する。
京「何で皆、余裕なの!?焦っている私がおかしいの!?」
賢「まあ、落ち着いて下さい京さん」
賢が苦笑しながら京を宥める。
伊織は賢は大物だと思ったとか。
走っていると向こうは崖だった。
ジュン「ああ…このシチュエーションも懐かしい…」
タケル「本当に懐かしいですね。ここで幼年期だった皆が進化したんだよね」
伊織「そんなこと言ってる場合ですか!?どうするんで…」
ブイモン[ブイモンヘッド!!]
ドゴオ!!
轟音が聞こえたかと思うと、クワガーモンがブイモンの頭突きの直撃を受けて気絶していた。
アグモン[やったあ!!]
テイルモン[やるじゃない]
太一「さあて、湖に行こうぜ皆。」
全員【はーい】
京と伊織以外の全員が湖を目指して歩く。
2人は呆然としていたが、ハッとなり、大輔達を追う。
伊織「僕にはとてもあの境地には達せない…」
伊織の呟きは京にしか聞こえなかった。
〜湖〜
子供達は先代の選ばれし子供達が初めてキャンプした場所に辿りついた。
大輔「懐かしいなあ」
太一「よーし、ここでキャンプしようぜ!!」
ヤマト「は?何を言い出すんだよお前は」
太一「キャンプまで行かなくてもさ、魚釣って焼いて食ったり湖で遊んだりとかでもいいし」
腕を組む太一に全員が沈黙して目を合わせた。
ミミ「あ!私達、茸採って来たわよ」
賢「良いですね、焼いて食べましょうか」
ヤマト「茸だけってのも味気ないよな。と言っても釣り糸なんて持ってないし」
太一「そうか釣り糸か…ミミちゃん釣り糸とか持ってないのか?」
ミミ「そんなの持ってるわけないじゃないですか!!」
ジュン「あのね、太一。少しは計画性ってものを…」
丈「釣り糸なら僕が持ってるけど」
全員【ええ!?】
何でもないように言った丈の発言に満場一致で驚きの声。
丈「う、嘘じゃないよ。ほら」
丈は鞄から釣り糸を取り出した。
太一「すっ…すっげえ!!すっげえじゃんかよ丈!!」
大輔「それ、四次元ポケットならぬ四次元鞄!?」
丈「い、いや。いざと言う時、役に立つかと思って」
少しして、誰からともなく驚きは笑顔に変わる。
太一「じゃあ、やるぞ!!」
全員【おおー!!】
太一が勢いよく空に拳を掲げた。
太一「今日はお手柄だったな丈!!」
丈「余計なお世話だよ…」
ヤマト「いやいや見直したぜ!!流石最年長だな!!」
空「丈先輩格好いいー!!」
ミミ「流石、最年長!!」
ジュン「丈君、素敵よー!!」
丈「あ、あのね」
ミミと空とジュンの黄色い歓声を受けた丈はここから見ても分かるくらい顔を赤くしている。
ヤマトと太一と光子郎が眉を顰ている。
丈がヤマトと太一と光子郎に湖に叩き落とされるまで後…。
ヒカリ「ねえ京さん。私達は枝拾いに行きましょう」
京「枝?」
ヒカリ「ほら、魚を釣ったら焼くのに火が必要でしょ?」
京「あ、そっか」
〜森〜
ヒカリ「私もうお腹すいちゃったわ。クワガーモンに追い掛けられたせいで」
テイルモン[私もだ]
苦笑するヒカリとテイルモン。
京「何だか楽しそうね」
湖からちょっと離れた森に入っても湖の方から太一達の笑い声が聞こえる。
京「あ、ご、ごめん。大変な事のが多かったよね。」
ヒカリ「そうですね、あの頃は世界の危機だったし…」
枝を拾い集めながらヒカリは言う。
京「う、ごめん」
テイルモン[私は世界が危機でよかった。きっとこれはブイモン達も思っている。]
静かな声のテイルモン。
それは嘘偽りない本心の言葉。
テイルモン[そうでなければ私達はヒカリ達に出会うことが出来なかったから。]
ヒカリ「辛いことも多かったけどね、今は楽しい。」
テイルモン[ああ]
ヒカリ「でも私、大輔君やお兄ちゃん達より旅してないんですよ?」
京「へ?」
ヒカリ「大輔君か賢君から聞いてない?」
テイルモン[私とヒカリは途中参加だったんだ。大輔とジュンが一時的に現実世界に戻って来た時に参加した。]
京「そうなんだ…」
ヒカリ「あの時、チビモンがデジヴァイスを見つけてくれなかったらもっと遅れていたかも。」
ヒカリが懐かしげに目を細めながら呟いた。
京「じゃあ、ヒカリちゃんとテイルモンにとってブイモンは恩人なわけ?」
ヒカリ「はい!!」
テイルモン[あいつがいなければ私達はもっと遅く出会っていたからな]
京「そう…」
〜湖〜
充分な量の牧を集めた京とヒカリ。
牧をくべて火を点ける。
太一「魚はなこうやって遠火で焼くんだぞ」
京「へえ、そうなんですか」
太一「こういうのちゃんとやらないとうるさい奴がいるからな」
ヤマト「それはもしかして俺の事か?」
太一「うん」
ヤマト「よし、太一。面貸せ」
空「京ちゃん、枝足りそう?」
京「はい。今アグモンが火を点けてくれたけど、どうだろ、足りそう?」
アグモン[魚を焼くには充分だよ!!キャンプするにはちょっと足りないけどね]
ドルモン[じゃあ、もういいよね]
京は腕に抱えていた枝の束を燃えてる火の横に置き、賢の横に座った。
ミミ「茸をこんなにたくさん採って来たのよ!!」
ジュン「それじゃあ焼きましょうか!!」
賢「流石に皿はなかったからこれで我慢して下さいね?」
茸と木の実が魚の横に置かれた。
それから賢から手渡されたのは木を削った皿。
太一「丈、塩くれよ!!」
丈「塩ね。はい」
塩を求めて手を伸ばす太一に丈が塩の入った瓶を渡した。
大輔「丈さん、釣り糸だけでなく塩まで…」
丈「夏場は塩分の不足で倒れることもあるからね」
ヤマト「そういう問題か?」
ミミ「丈先輩、砂糖はないんですか?」
丈「あるけど、砂糖なんてどうす…」
丈はミミに言われるまま鞄から砂糖を取り出して、いきなり顔を青くしていた。
そんな丈から砂糖を受け取ったミミは輝かんばかりの笑顔で笑った。
ミミ「お魚には塩もいいけどやっぱりお砂糖よね!!」
大量の砂糖を魚に振りかけるミミから大輔達は目を背ける。
ミミ「京ちゃんもかける?」
京「い、いえ、ミミお姉様。私は塩が好きなんで…」
ミミ「そう?砂糖も美味しいのに」
そんな無邪気な顔で。
アグモン[あ、これ、焼けたみたい。はい!!]
誰もがミミさんの行動に固まる中、魚の行方を見ていたらしいアグモンが魚の串を器用に持って大輔に差し出した。
アグモン[いつも太一が大輔に迷惑かけているからそのお詫びだよ]
太一「おいちょっと待てアグモン」
アグモン[ほら、早くしないと冷めちゃうよ。魚は焼きたてが1番美味しいんだ!!]
大輔「サンキュー」
アグモンから魚を受け取り頬張る。
太一「これも焼けたんじゃないか?ほら」
ヤマト「やばい!!焦げてるぞ!!」
タケル「ほら、早く取って!!そっちの奴も」
空「待って、そんなに火に近づけたらダメよ」
ジュン「骨取らなくても平気?ヒカリちゃん?」
ヒカリ「うん」
ガブモン[あ!ブイモンそれは俺が]
ブイモン[俺が先に取ったんだから俺のだ]
ミミ「うーん、やっぱり砂糖は美味しいわ」
空「私は信じられない…」
ミミ「え、何か言った?」
空「な、何でもないわ」
賢「茸のバター醤油焼き出来ました。」
丈が持ってきていたバターと醤油を使った料理が出来上がった。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
〜森〜
食事を楽しんだ子供達は、現実世界に戻る為に、テレビを見つけ、現実世界に帰って行った。
〜???〜
とあるエリアに存在する拠点では、8体のデジモンが映像で子供達を見ていた。
?[奴らが選ばれし子供達か…]
?[ケッ!!ただのガキじゃねえか]
?[油断は禁物だデューマモン。彼らはデーモンをも倒した程の実力者達だ。]
?[あの緑色の服の金髪の子、可愛いわ。私のタイプよ]
15歳くらいの少女が映像に映るタケルを見つめながら呟いた。
?[モースモン…]
大きな翼を持つ精霊のようなデジモンが溜め息を吐いた。
モースモン[え〜、いいじゃない。]
?[静かにしろモースモン…期は熟した…活動を開始する!!]
1体のデジモンの言葉にこの場にいたデジモン達がこの場を去り始めた。

-2-
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デジモンアドベンチャー
新品 \4359
中古 \2880
(参考価格:\6280)