小説『デジモンアドベンチャーPARALLEL〜天下分け目の超決戦〜』
作者:setuna()

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超決戦 第三話
子供達がデジタルワールドに行くのは、明日。
2年前のように途中で帰ることなど許されない。
子供達は解散し、それぞれの場所で覚悟を決めていた。
〜本宮家〜
家に帰っても家には誰もいない。
父親は仕事、母親は買い物か何かだろう。
冷蔵庫からぬるくなったミネラルウォーターを取り出して一口飲んだ。
大輔「ぬるい…」
ジュン「文句言わないの、大輔。愚問かもしれないけど聞いとくわ。あんたは明日デジタルワールドに行く?」
大輔「当然。デジタルワールドにはブイモンがいるからな。」
ジュン「そう、それなら私は何も言わないわ」
本宮姉弟は母親が帰ってくるまで自室で時間を潰した。
〜八神家〜
太一とヒカリが家に帰ると母親がガスコンロで夕飯を作っていた。
太一「母さん」
裕子「あら太一、ヒカリ。お帰りなさい」
ヒカリ「ただいま、お母さん。」
裕子「電子機器に異常が出ているせいでキッチンが使えないのよね。夕飯、もう少し待っててもらえる?」
ヒカリ「うん。」
太一「分かった」
太一とヒカリは話をするためにベランダに出る。
太一「明日は大変だぞ。」
ヒカリ「うん。でもお兄ちゃん嬉しそう。」
ヒカリの言う通り太一の顔には笑みが浮かんでいた。
太一「まだ俺を必要としてくれてるのが分かったからな」
太一はアーマゲモンとの戦いで敗れた時、自分はもうデジタルワールドにとって不要であると思っていたため、必要とされている現状が嬉しい。
ヒカリ「もう…お兄ちゃんたら…」
ヒカリは苦笑しているが、太一の気持ちも分かるため苦笑するだけに留める。
〜高石家〜
タケルがコンビニで購入したおにぎり(これしか残っていなかった)を口にする。
正直、育ち盛りの少年には物足りないが、自分は太一や兄と違ってしっかりとした自炊が出来ないのだ。
デジタルワールドの中華街でラーメンを作ったのは、大輔とヒカリと京だった。
自分はただ食材を切ったりしただけ。
タケル「兄さんに料理を習えば良かったなあ…」
ピンポーン
インターホンが鳴り、玄関に出ると兄のヤマトが鍋を持って佇んでいた。
臭いからして中身はカレーだろう。
ヤマト「タケル、今日は親父は帰ってこないから、一緒に食べないか?」
タケル「兄さん…うん、一緒に食べよう」
そしてカレーを盛り付け、一口食べるとタケルはあまりの辛さに水を一気飲みする。
タケル「兄さん…!またこれ…!?」
ヤマト「これくらい食えるようになれタケル。」
ヤマトが意地の悪い笑みを浮かべながら言う。
タケル「もう…明日は頑張ろうね兄さん」
ヤマト「ああ…」
2人はカレーを食べながらパートナーが暮らすデジタルワールドに思いを馳せた。
〜武之内家〜
空は自室の窓から、夜空を見上げていた。
空「明日か…」
空はパートナーの安否を気にしながらも、明日に備えて準備をする。
空「待っててねピヨモン…」
自身のパートナーの名前を口にしながら…。
〜泉家〜
光子郎は焦る気持ちを落ち着かせるために、パソコンを弄っていた。
光子郎「新たな敵…一体…どんな敵なんだろう…デビモンやダークマスターズみたいな存在だろうか…」
5年前と2年前の冒険を共にしたノートパソコンを弄りながら呟いた。
〜ホテル〜
お台場にあるホテルの一室。
空港がパニックに陥ったために、アメリカに帰れなくなったために、お台場にあるホテルで寝泊まりをすることになった。
ミミ「明日かあ…パルモン大丈夫かしら…」
パートナーの身を案じながらベッドに身を委ねる。
ミミ「明日に備えて…早く寝ようっと」
電気を消して目を閉じた。
〜城戸家〜
丈「えっと…懐炉と懐中電灯と、後は日保ちする食べ物…」
丈は鞄に様々な物を入れている。
備えあれば憂いなしと言うかのように。
〜一乗寺家〜
賢「ただいま、母さん」
治「ただいま」
一乗寺母「お帰りなさい。夕飯はもう少し待っててくれる?」
賢「うん」
2人は自室に入ると、賢はベッドに治は椅子に座った。
治「明日か…」
賢「うん…明日はきっと激しい戦いになると思う…」
治「ワームモンは無事なんだろうか…?」
治は自身のパートナーの姿を思い浮かべながら呟いた。
賢「大丈夫だよ…きっと…」
賢も自身のパートナーの無事を信じながら呟いた。
〜公園〜
それぞれが自宅で明日の準備と覚悟を決めている中、京と伊織は公園にいた。
京「伊織、ごめんね。付き合わせちゃって…」
伊織「いえ…」
京「今、気持ちの整理しないと…私、駄目になっちゃいそうで。」
京の気持ちは揺らいでいた。
大輔達と共にデジタルワールドに行きたい。
だが、今のままでは足手まといになるだけだ。
伊織「京さん…大輔さん達も辛いと思います…。」
京「え…?」
伊織「デジモンを軽い気持ちで倒しているはずがありません。戦うことを好む人間なんていません。でも世界を守るためには必要なことで…。」
京「…それは私達が選ばれし子供だから?」
選ばれなければ、戦わなくても済んだのに…。
伊織「はい…。でも僕達は1人じゃありません。大輔さんやヒカリさん、タケルさんや賢さんも治さんも皆がいます。」
京「あ…」
伊織「京さんは1人じゃありません。」
忘れていた。
自分は1人ではないということを。
2年前にも賢に言われたことだ。
〜回想〜
2年前の冒険で暴走して大輔達に迷惑をかけてしまったあの時…。
賢『僕達は仲間です。あれくらい迷惑のうちに入りません』
京『仲間…』
賢『あなたは1人じゃない。僕達は皆で戦うんです』
〜回想終了〜
あの時も忘れていた。
大切な仲間達を。
1人で戦うのでは無い。
仲間達、皆で戦うことを。
京「ありがとう、伊織。」
伊織「いいえ、明日は頑張りましょう」
子供達はそれぞれの決意を胸に、明日の準備をするのであった。

-4-
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