小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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五月八日(金)



「イッセー!」


グラウンドで百代が満面の笑みで駈け寄ってくる。その後ろにゾロゾロと人がくっついて来ていた。


「・・・・・なんだ?」


「率直に言う。金を貸してくれ」


「・・・・・どうして俺なのかと理由と一緒に話せ」


「うん。私が借金している連中でお前はガッポリ金を稼いだ事はユミから聞いた。―――しかも!バイト料が

一千万!ずるいー!私も欲しいぞー!」


「・・・・・だったら、お前もバイトをしにくれば良かっただけ。バイトより遊びに優先したお前が悪い」


「うぐっ」


「・・・・・それで、何であいつ等がついてくるんだ」


「少しでも返さないと、納得しないと追跡してくる」


百代の背後には色々といた。中にはユミもいた・・・・・何で?


「カムバック!マイMONEY!」


「間もなく返済期限にて候」


「川神家は高貴な家柄と思って安心して貸したらこの体たらくじゃ!」


「こう見えて私は九鬼家のメイド長っ☆―――取り立てはきっちり行うからなぁ・・・・・モモ先輩」


「見ろ、この金の亡者達を。人間こうはなりたくない。―――何故か一誠のバイト料で一杯もらった

ユミまでもが貸した金を返せって言うんだぞ?強欲じゃないか?」


「・・・・・それとこれは別だと思うが?」


「・・・・・ここでこいつら全員ブッ飛ばしたら、二度と金貸してくれないだろうしなぁ」


「・・・・・逃げても同じこと」


「とにかく、私は美少女らしくお前の背中に隠れる」


「・・・・・俺に押し付ける気か?武神、川神百代とあろう者が」


「私を倒した男のくせに何を言っているんだよ」


「・・・・・逃がす気は?」


「ない」


「・・・・・はぁ」


嘆息しながらユミ達に近づく


「・・・・・おい」


「おや、山猿達の中に埋もれている高貴な兵藤ではないか」


「なんだ、モモ先輩の代わりにお前が払うんかゴラ?あ?」


「・・・・・ああ、その通りだ。・・・・・これで充分だろ」


鞄から札の束を全員に渡す


「おい、こんなに金を貸してはいないんだが?」


「・・・・・要求した物以上を渡せば相手も信頼し満足するだろう?商業を総べる九鬼英雄にもこんな事は

知っている筈だ」


「・・・・・ちっ、今回はお前に免じて勘弁してやるよ。お前の借りも未だ、返しきれていねぇからな」


「にょほほ、兵藤なら安心するし信用もできる。お前の高貴な行動に此方も満足じゃ」


「アリガトウゴザイマシータ!」


百代に貸した存在達は満足して帰って行った


「一誠さん、私はこんなに入らないで候」


「・・・・・前に言ったように金なんていらないんだ。有効に金を使う」


「ですが・・・・・」


「・・・・・今日は弓道部に顔を出す」


「っ!そうで候か、部員の皆も喜ぶで候」


「・・・・・人形の俺が何か喜ぶような事をしたのか?」


「・・・・・一誠さん、貴方は人形じゃない」


「・・・・・お前がそうでも周りはそう思っていない。俺がそういう風にしたんだからな」


「一誠さん・・・・・」


「・・・・・行くぞ」


「・・・・・はい」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――弓道場


「こ、こうですか?」


「・・・・・違う、少し角度を上げてその状態で射ろ」


「は、はい」


―――タンッ!


「あっ、的の真ん中に当りました!」


「・・・・・このぐらいの事で喜ぶな」


「え・・・・・」


「・・・・・百発百中とまでは言わないが今の状態で出来る限り中央の的に射ろ。最低10回ぐらい連続で

中央の的に当てろ」


「・・・・・」


「・・・・・今のお前は緊張しているように見える」


「そ、そうですか・・・・・?」


「・・・・・何も考えるな、無心になれ。矢に想いを込めて放て」


一誠は女子部員に言うと離れて遠くから他の部員達の射る姿勢を眺める


「兵藤」


「・・・・・なんだ」


「本当に弓道部に入る気はないか?お前のその腕と指導は申し分ないのだが―――」


「・・・・・たまに顔を出して指導するだけの条件。助人の事についても俺は肯定したが部活に

入る気はない」


「そうか、残念だな。お前が部に入れば盛り上がると思うのにな・・・・・」


「・・・・・」


「そういえばお前はゴールデンウィーク期間中に何をしていた?」


「・・・・・藪から棒に何だ?」


「いやなに、十数年振りに開いた店があってな?私も初めてそこの料理を食べたらもの凄く美味しかった。

酒も今まで飲んでいた物より美味しかったんだ。だけど・・・・・ゴールデンウィークが終わった途端に

閉店したんだ」


「・・・・・そうか」


「残念だなぁ・・・・・。またあの料理を食べたいんだが、あの店の料理長は気まぐれと聞く。何時、店を

開くか分からないんだ。その店にバイトとして働いていた川神学園の生徒に聞いても分からないと言うんだ」


「・・・・・(冬馬達だな)」


「でだ、お前は何をしていた?」


「・・・・・何で聞くんだよ」


「私はお前の事が心配なんだ。矢場とは他の生徒達より親しいようだが・・・・・」


「・・・・・適当にあしらっているだけだ。それに心配されても困る。俺は今の状況が好ましいんだ。

放っておいてくれ」


「教師としては放ってはおけんな」


「・・・・・面倒な奴だ」


「教師にその言葉は何だ!」


小島梅子は何時の間にか持っていた鞭を一誠に振るった。一誠は鞭の軌道を先読みしてその鞭を瞬時で掴んだ


「・・・・・お前、本当は強いのに何故、力を隠す」


「目立ちたくないだけだ。目立つのなら川神百代だけで十分だろう」


「―――はあ、お前の事を文武両道というんだろうな・・・・・。鞭を放してくれないか?」


「・・・・・」


「兵藤、今度私と勝負をしてくれないか?お前の実力を知っておく必要がある」


「・・・・・何でだよ」


「教師命令だ。いいな?」


「・・・・・職権乱用じゃないか」


「先輩!ちょっと私の射る姿勢を見てくださーい!」


「ほら、教え子の声が掛かったぞ」


「・・・・・俺は先生か」


「この場にいる誰よりも弓が上手いのはお前だけだ」


「・・・・・しょーもない」


一誠は一人の部員のところへ近づく。一誠とすれ違う様にユミが小島梅子に近づく


「先生、一誠さんはどうですか?」


「ああ、是非とも弓道部に入ってもらいたいほどの逸材だ。だが、本人は入る気はないみたいだ」


「前より少しだけ会話をするようになってはいますけど、まだまだなのかなぁ・・・・・」


「矢場、お前は兵藤の事をどう思っている?」


「・・・・・一人の異性として好意を抱いています。彼にはまだ告げていませんが」


「ほう、お前が兵藤の事が好きだったとは驚いたな」


「それに私だけじゃないんです。2−Sの榊原小雪ちゃんととある事情で知り合った西の女の子も

一誠さんの事が好きなんですよ」


「・・・・・以外とあいつはモテているんだな」


「皆、一誠さんに助けられた女の子なんです。普段はあんな風に暗く冷たくしているんですけど本当は私達と

仲良くするのが怖いみたいなんです」


「それはどういう事だ?」


「・・・・・すみません。こればかりは私の口から言える事ではないんです。一誠さん自身から言って

もらわないとダメなんです」


「・・・・・矢場。兵藤の事を任せても良いか?私もできる限り協力する」


「はい、任せてください。心から明るく笑えるようになるまで私は皆と頑張って一誠さんに接します」


「うむ、その心意気は良いな。兵藤の事・・・・・頼むぞ」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・・・なんか、最近あいつらといる時間が多いな」


俺はベッドに寝転がりながら天井を見て呟いた


「それにどうして俺は釈迦堂達をこの家に住まわせるって言ってしまったんだ・・・・・。大切なものを

失くす辛さをもう味わいたくないと心から誓って孤独になろうとしていた筈の俺が・・・・・」


『それは完全に孤独になろうと言う気持ちが無いからだ』


「・・・・・ブラフマー」


『その証拠に私やトカゲ共と会話をしているではないか。本当に孤独になろうと思っているのなら私達と

会話をしない』


「・・・・・」


『主、主が例え孤独になろうとも他の者はそうはさせないと思いますよ』


『うんうん、一誠の事が好きな人間もいるんだよー?一誠が辛い時、悲しい時はその人間達が傍に来て

励ましてくれるよ』


『主の秘密を知っている人間は二人。―――いや、主の昔の話を聞いたあの三人も気づいていると思うぞ』


「・・・・・昔の話を話したのは失敗したなぁー」


『主』


「・・・・・なんだ」


『三人の人間の女の中で誰か気に成る者はいますか?』


「・・・・・」


気に成る・・・・・?ユミ、ユキ、燕の中で誰かを・・・・・?


『三人だけではありませんね。川神百代も何気に親しげに話しかけてきますし』


『一誠の魅力を知った人間の女は一誠を気にせずにはいられないよねー』


『あの人間の女教師も主の魅力に無自覚だが惹かれているかもしれんな』


『後、板垣辰子って人間も一誠の事が好きだよね。何時もベッタリとくっついてくるしさ』


『ふふ、主に孤独なんて似合わないと言う事ですね。主、心を開いて彼女達と接したらどうですか?』


「・・・・・そんな簡単に心を開けれる訳がないだろう」


『主・・・・・』


「・・・・・それにあいつらと違うんだ」


そう言いながらも俺の脳裏には何故か彼女達の顔が思い浮かんだ。

・・・・・俺も何時の間にか惹かれているのか・・・・・?・・・・・いや、それはないな・・・・・


「おやすみ」


馬鹿馬鹿しいと心の中で呟き俺は目を閉じて意識を落とす

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