五月九日(土)
「・・・・・」
カチャカチャ・・・・・。
「・・・・・」
カチャカチャ・・・・・。
「・・・・・」
カチャカチャ・・・・・。
「・・・・・やり辛い」
「ぐぅ・・・・・。ぐぅ・・・・・」
「・・・・・辰、おい辰」
「んんー・・・・・」
「・・・・・俺の背に抱きついて寝られると作業がやり辛いから退いてくれ」
「ふぁ・・・・・、もうちょっと・・・・・」
「・・・・・」
一誠は嘆息して作業に没頭し始める。
「おーい!イッセー!昼飯作ってくれー!」
「・・・・・もうそんな時間か」
作業を中断して辰を翼で背負いながらキッチンがあるダイニングルームの方へ赴く。其処には板垣家の亜巳、天使、竜兵と釈迦堂刑部がいた
「おっ、やっと来たか・・・・・って、タツ姉はまたそいつの背中に寝ているのかよ・・・・・」
「寝場所の特等席か指定席になっているようだな?」
「・・・・・俺は寝場所かよ。で、昼飯は何が良い?」
「腹が膨れるもんなら何でもいい!」
「・・・・・分かった」
天使のリクエストに辰を背負ったまま調理をし始める。―――数分後
「特上の得盛りカルビ丼だ」
「おおっ!」
「美味そうだなぁ・・・・・」
「・・・・・辰、昼飯ができたから起きろ」
「わーい!お肉だー!」
「・・・・・起きていたか。サラダも食えよ。いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
その後、昼食を食べ終わった五人はそれぞれ自由に行動を始めた。亜巳、天使、竜兵は地上に降りて親不孝通りへ。釈迦堂は裏の仕事をする為に亜巳達と同行、残る板垣家次女の辰は―――
「一誠君・・・・・」
「・・・・・またかい」
「すぅー・・・・・、すうー・・・・・」
一誠の背中に抱きついて寝に入った。一誠が釈迦堂達を家に住まわせて以来、辰は一誠の傍で寝る事が多くなった。
「・・・・・しょうがない。昼寝でもするか」
「だいさんせ〜い」
「・・・・・」
辰を背負って外へと向かう。風によって金色の芝生はキラキラと輝き桜の花びらも散る。一誠は桜の木の根元に移動し、辰と寝転がる
「・・・・・風が気持ちいいなー」
「そうだねー、お昼寝日和だよ〜」
「・・・・・本当にお前は寝る事が好きなんだな」
「うん、大好きだよ。それ以上に一誠君と寝るのが大好きー」
「・・・・・どうしてだ?」
「一誠君の体からポカポカとした温かさが伝わってくるんだよね。私は一誠君の温かさを感じながら寝るのが大好き」
「・・・・・」
『我、イッセーの傍で寝るのが好き。我、イッセーの温かさが大好き』
「・・・・・(あいつと同じような事を言うんだな)」
「んんー・・・・・」
「・・・・・何で俺を抱え込むんだ」
「一誠君を抱きながら寝るんだよー」
「・・・・・そうか」
「うん、それじゃあおやすみー・・・・・」
そう言って辰は幸せそうに寝始める。一誠はそんな辰の寝顔を見て
「おやすみ」
自分も寝始めた。
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「・・・・・良く寝た。―――が」
「ぐぅ・・・・・。ぐぅ・・・・・」
「・・・・・こいつはまた寝ているな」
空は既に朱に染まっていた。そろそろ夕飯を作らないといけない時間・・・・・。
「・・・・・おい、辰。夕飯はお前が作るんだろう。起きろ」
「すぅ・・・・・・、すぅ・・・・・」
「・・・・・」
ドゴンッ!
「・・・・・んぁ?」
「・・・・・俺のデコピンを食らっても起こす程度なのか・・・・・」
「ふぁ・・・・・。あっ、もう夕方なんだねぇー」
「・・・・・そう言う事だ。夕食、作ってくれ」
「はーい、美味しく作っちゃうよー・・・・・ぐぅ・・・・・」
「・・・・・こいつに催眠魔法を掛けたら一瞬で寝るな」
一誠は辰を背に負ぶさり家の中へ戻った。家には亜巳達が思い思いに過ごしていた
「・・・・・お帰り、地上は楽しかったか?」
「ああ、豚から貢物をもらった。特上寿司だ」
「おおっ!寿司だー!」
「これはまた豪勢だな!」
「・・・・・釈迦堂は?」
「さあ、その内に帰ってくるんじゃないか?『たまにこの家に帰ってくる』って言っていたオッサンだしな」
「・・・・・あいつもこの家に住まわしたかったんだがな・・・・・しょうがない。帰ってくるのならいいな」
「んで、タツ姉はまたお前の背中で寝ていたのか?」
「・・・・・お前等がいなくなった後に夕方まで一緒に昼寝していた。夕飯を作らせようと背負ってきたんだがその必要性はなかったようだな」
「たまにはこういう物も悪くはないだろう?」
「・・・・・まあな。さて、食べるとしようか」
その後、竜兵と天使が最後の大トロを食べようとして喧嘩に成ったが辰が食べてしまい意気消沈になる