小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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六月十三日(土)


一誠が2−Fと助っ人達と決闘して二日が経った。さらに土曜日の筈が登校という迷惑な週がある上に気温も

段々と上がり、本格的に夏になろうとしていた


「・・・・・なあ」


「はい?」


「・・・・・しばらくは弓道場には行かないと言った。なのに、何故俺を誘う」


「大丈夫で候、部員達に尋ねてみたら『指導して欲しい』と言ったで候」


「・・・・・それは後輩だろう、二年の奴等はどうなんだ」


「弓道部に一誠さんの事を悪く言う者や『人形』などという者はいないで候、仮にいたら説得して言わない

ようにするで候」


「・・・・・分かった。弓道場に顔を出す(実際にいたんだな)」


「良かった。それじゃあ、私は部員達とランニングをするから一誠さんは弓道場の中に入って

待っていて欲しいで候」


「・・・・・ああ」


一誠はユミと同行して弓道部に赴いた


―――川神学園弓道場


「「・・・・・」」


―――タンッ!


弓道場に設置されている的に一誠と―――幽霊部員である椎名京の矢が次々と的に命中していた。


「「・・・・・」」


―――タンッ!


「・・・・・ねぇ」


「・・・・・一応聞いてやる。なんだ」


「何で此処にいるの?」


「・・・・・主将に誘われたからだ」


―――タンッ!


「どうしてつまらなそうに矢を射るの?」


「・・・・・動かない的を狙ってもつまらない。動いている的を狙った方がまだマシな方だ」


―――タンッ!


「私、お前の事が嫌い」


「・・・・・嫌いでいい。俺はそうするようにしている」


―――タンッ!


「正直に言うと、大和やワン子、・・・・・ファミリーを傷つけるお前は消えて欲しいと思っている」


「・・・・・ファミリー?」


「風間ファミリー、家族を傷つけるお前が嫌いだ」


「・・・・・」


―――バキッ


「っ!?」


「・・・・・先に喧嘩を売ってきたのはお前達からだという事を忘れるなよ」


京が放った矢に一誠が放った矢で圧し折ると違う的の中央に当った


「・・・・・独りに成りたい俺に近づいて来たり話しかけて来たりして正直、ウザい。良い迷惑だ」


「・・・・・お前」


「・・・・・一昨日の一件で俺に近づく馬鹿な奴がいなくなったから清々した。直江も決闘に

参加していたが、何がしたかったのか分からない内にあっさりとリタイアしたな。頭だけが良いのは分かるが

闘う事も出来ない奴が何、でしゃばっているのか―――」


「お前ぇぇぇぇぇぇ!」


激怒した京、弓で一誠に攻撃するが易々と全ての矢を素手で受け止める


「・・・・・おいおい、人に向けるものじゃないだろう」


「・・・・・っ!」


「・・・・・接近戦で俺に勝てると思うなよ」


一誠に掴みかかろうと接近した京だが、一誠に足払いされて弓道場の床に転ばされてしまった


「・・・・・お前達、何をしているんだ」


「・・・・・ちょっとした喧嘩だ」


「・・・・・」


「まあいい、椎名。どうせ断わられると思うからサラッと聞く。椎名はドイツへの留学生として候補に

入っている。向こうで弓道を教えて欲しいそうだ」


「お断りします。行く気が全くありません」


「・・・・・だろうな。ま、一応聞きはした。お前にとってプラスに成るから話をしたまでだ」


「・・・・・帰ります」


「椎名、もう帰るのか!?」


「私、その男と一緒にいたくないので。失礼します」


「・・・・・」


京に睨みつけられても一誠は気にしていなさそうにして的に矢を放っていた。


「お前、嫌いだ」


「・・・・・俺もお前が嫌いだ」


「・・・・・っ」


京は殺意とも言える視線を一誠に向けて弓道場から立ち去った


「兵藤、本当にこのままでいいのか?」


「・・・・・ああ、これでいい。赤の他人と仲良くする気はない」


「・・・・・お前」


「・・・・・これであのクラスに俺の味方はいなくなった。万々歳だ」


「・・・・・天涯孤独になろうとして何に成るのだ。お前はどうしてそこまで他の者達と仲良くなろうとは

思わないのだ」


「人はいずれ死ぬ。死ぬ時は一人。特に親しい奴の死はこれほど辛く、悲しいことなどない。俺はそんな

気持ちを二度と味わいたくないから、逃げたいから誰も仲良くなろうとは思わない」


「ああ、確かに人は死ぬ。だが、それまで怒喜哀楽な思い出を作って死んだ方が良いじゃないか」


「―――俺は死ねない」


「なに?」


「・・・・・」


―――タンッ!


「一誠さん!お待たせしましたぁ!」


「・・・・・別に待っていない」


「先輩!早速ですが見てください!」


「私も!」


「お願いしまーす!」


「・・・・・見てやるから矢を番えろ」


「分かりました!」


「・・・・・矢場」


「はい?」


「あそこまで孤独になりたがっている兵藤は一体過去に何があったのだろうか・・・・・」


「・・・・・」


「お前と2−Sの葵冬馬に井上準、榊原小雪は他の生徒達より接して尚且つ唯一親しそうにしているのは

知っている。最近は川神百代もあいつに接しているようだな?」


「はい、そうです」


「お前達と他の生徒達の違いは何だ?どうしてそこまで接していられるのだ?」


「・・・・・葵君と井上君は一誠さんと小さい時からの付き合いで私とユキちゃんは一誠さんに助けられた

事があり一誠さんに好意を抱いているからです。それに葵君達の話では、一誠君って本当は優しい人だと

言うんです」


「そうなのか・・・・・」


「詳しくは言えませんが一誠さんには親しい友人達がいたのです。ですが、一誠さんだけを残して

死んでしまって・・・・・だから、一誠さんは―――」


「―――ユミ、それ以上喋るな」


「・・・・・ごめんなさい」


「・・・・・(なるほどな、他にも何かありそうだが大体は納得できた。あいつは孤独になりたいんじゃ

なくて人と親しく成る事が嫌なだけ。だから、自分から遠ざけようとしているのか)」


「矢場」


「はい」


「積極的にあいつと交流してガンガン攻めていけ」


「・・・・・へ?」


「ああいう奴は積極的に行動していけば向こうから話かけてくるもんだ。常に一緒にいる奴の事が気に

成ってな」


「そう言うもの何でしょうか?」


「明日、一緒に何処か出掛ける約束でもしてみろ。効果はまだ薄いかも知れんが積み重ねが大事だ」


「・・・・・(明日、一誠さんを誘って何処か・・・・・そ、それって・・・・・デート?)」


「兵藤!」


「・・・・・なんだ」


「お前、明日は何か予定はあるか?」


「・・・・・話は聞こえていた。予定が無ければユミと出掛けろと言いたいんだろ?」


「その通りだ」


「・・・・・ユミ、お前は俺と出掛けるのは―――」


「嫌ではないですよ。寧ろ、一誠さんと出掛けたいです」


「・・・・・せめて言い切ってから言って欲しかった」


「で、明日の予定はないのだろう?」


「・・・・・何で小島がフォローに入るのか分からない」


「だから先生と呼べと言っているだろうが!」


「・・・・・断る。―――ユミ」


「うん」


「・・・・・川神駅、10時に待ち合わせだ」


「―――はい!待っていますね!」


「・・・・・」


「(これで少しはあいつの心が開くと良いんだが・・・・・矢場に任せるしかないな)」






六月十四日(日)





―――川神駅


「ぅぅぅ・・・・・。緊張して来た。それに・・・・・この服で良かったかなぁ・・・・・?」


視線を下に向けると私の姿は白いワンピースに暑く成ってきたからサンダル。昨日、ウメ先生に言われたまま

一誠さんと出掛ける約束をしてしまったけど、ふ、二人きりで出掛ける事は初めてだよー・・・・・


「時間もまだ一時間もある・・・・・早く来ちゃったなぁ」


一誠さんは来てくれるのかな・・・・・。一誠さん・・・・・私達と会話はするけど独りの方が好きな人。

その理由は一誠さんと付き合っている人しか知らない。


「・・・・・そういえば、一誠さんって携帯持っていたっけ?」


もし持っていなかったら携帯を持つようにしてもらわないと!


「・・・・・ごめんね、ユキちゃんと燕ちゃん」


二人より先に一歩リードさせてもらうから!


「またせたな」


「っ!いえ、私は大丈夫―――」


私は一誠さんだと思い、後ろに振り返った。でも・・・・・


「ヒュー♪可愛いじゃないか」


「イエース!ナイスバディデース!」


「今日はこの子で良いんじゃね?」


「そうだな」


「へへっ・・・・・」


「な・・・・・っ!?」


この人達・・・・・まさか、親不孝通りの・・・・・!?


「お嬢ちゃん、ちょっと俺達と一緒に楽しい所に行こうか」


「・・・・・断るで候、私は待っている人がいるので候」


「そんなの放っておいて俺達と行こうぜ」


「それにさっきから見ていたけど誰も来ていないじゃん」


「女友達なら一緒に待ってやるぜ?男なら一緒にカラオケでも行こうよ」


「ソウデース!タノシミマショーウ!」


「そうそう、俺達に逆らわない方が良いぜ?逆らったらキング君が大暴れしちゃうから」


・・・・・一誠さん・・・・!


「さぁ、俺達と一緒に行こうぜ」


男が私の腕を掴んだ。嫌悪感が全身を巡ったのが分かった。一誠さん以外触れられたくない・・・・・!


「いやっ!放して!」


「おっ、可愛い声を出してくれるんじゃねぇか。よし、アソコに連れて行ったら他の奴等も―――」


「・・・・・なに人の連れを何処かに連れて行こうとしているんだよ」


私の耳に私が好きな人の声が聞こえた。声がした方向に振り返ると・・・・・、一誠さんと左上腕部に刺青が

ある男がいた。・・・・・誰だろう


「なんだてめぇら?」


「・・・・・そいつの連れだ。大人しくその手を放せ」


「はぁ?このお嬢ちゃんは俺達が先に目を付けたんだ。お前等に渡すかよ!」


「・・・・・竜兵、お前の事を知らないようだな」


「そうみたいだな。おい、この街に来るのは初めてか?」


「ああ?それがどうしたんだよ?」


「俺達は東京じゃあ知らないほど有名な『オウガ』って不良チームだぜ!」


「―――なるほど、新顔のようだ。おい、こいつらをもらって良いか?」


「・・・・・半分はもらう、その後は存分に楽しめ」


「ああ、お前のそういうところが好きだぜ。―――さてとお前等、俺達と来てもらおうか」


「・・・・・この金が欲しかったら大人しくついて来い」


「うほっ!100万かよ!?」


「今日はついているぜ!良い女を捕まえたと思えば100万も手に入るぜ!」


「分かった。お前達についていこう」


「キング君、君の出番が来たよ!」


「イエース!ワタシ二カナウヤツハイマセーン!」


「お前は此処に待っていろ。直ぐに戻ってくるからな」


一誠さんと一誠さんが竜兵と呼んだ男と不良達は親不孝通りへと姿を消した・・・・・。


―――数分後


「・・・・・待たせたな」


「あ、あの・・・・・あの人達は?」


「・・・・・大丈夫か?」


「あ、はい・・・・・。大丈夫です」


「・・・・・念のために早く来てよかった。案の定、早く来ていたな」


「あはは・・・・・。でも、一誠さんが来てくれるなんて・・・・・嬉しいです」


「・・・・・お前が心配なんだ。また、あんな目に遭っていると思ったんだ」


「あ・・・・・」


一誠さんの瞳が後悔と不安、悲しみが混じって浮かんだ。


「・・・・・大丈夫です」


「・・・・・」


「一誠さんは必ず助けに来てくれると信じていました。そして、一誠さんは私を助けてくれた。これで

三度目ですね?私を助けてくれたのは・・・・・」


「・・・・・お前は美人だからな。男が言い寄るのは無理もないか」


「び、美人!?」


い、一誠さんが私を美人って褒めてくれた・・・・・


「・・・・・」


「え・・・・・?」


「・・・・・手を繋いでいくぞ。また、ユミに言い寄る男がいるかもしれないからな」


「・・・・・は、はい」


私は顔が真っ赤になっていることに気づきながら一誠さんの手を握った。・・・・・大きいなぁ・・・・・。

一誠さんの手って安心する・・・・・


「・・・・・七浜に行くぞ、遊園地に言って遊ぼう」


「その前に一誠さん、携帯って持っていますか?」


「・・・・・持っていないな。不要だから」


「どうしてですか?」


「・・・・・百聞は一見にしかず」


一誠さんは人差し指で私の額をトンと突いた。え・・・・・?


「(・・・・・俺にはこれがあるからな)」


頭の中で一誠さんの声が響いて聞こえた。どうなっているの・・・・・?


「(・・・・・念話って聞いたことあるだろう?口の代わりに心で会話するものだ。いま俺がユミに

話しかけているのは心で話かけている。心で俺に話しかけてみろ)」


「(こ、こうですか・・・・・?)」


「(・・・・・初めにしては上手いな。ああ、そんな感じで話すこともできる)」


「(凄いですね。これなら携帯で話しかけなくても相手に話すことができます)」


「(相手と話したい時はこれで十分だ)」


「ですが、持っていた方が良いですよ」


「・・・・・また今度な」


そう言って私の手を引っ張って七浜に向かった。一誠さんとの距離が縮んだような感じがして

嬉しいな・・・・・



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――七浜


「うわぁー、川神市と違って七浜は都会ですね」


「・・・・・そうだな。」


「・・・・・一誠さん、あの人って七浜フィルハーモニー交響楽団の指揮者の

久遠寺森羅さんじゃあ・・・・・」


「・・・・・ああ、確かにそうだな。・・・・・って、何かこっちに来たぞ」


「う、嘘!?ど、どうしよう!」


「少しいいか?」


「・・・・・なんだ?」


「お前、兵藤一誠だな?」


「・・・・・その通りだが、良く知っていたな」


「お前の顔が印象深くて覚えていた。―――特にその瞳がな」


「・・・・・なるほどな。それと、そこの執事は強いな」


「そういうお前もかなりの実力者だな。私の事は大佐と呼ぶ事を進めよう」


「・・・・・」


一誠は手のひらを広げると手のひらサイズの球体を出して大佐に投げた。球体は難なく

大佐の手のひらに収まった


「ほう。あいつ以外にも気をコントロールできる者がいるとは・・・・・中々面白い男だ。―――返すぞ」


「・・・・・」


大佐から投げられた球体を掴んで自分の体に戻すと、黒い長髪に赤い瞳の女性が口を開いた。


「知っているだろうが名前を言おう。私は久遠寺森羅だ」


「・・・・・兵藤一誠」


「矢場弓子と言うで候」


「私は大佐。本名は田尻耕だ」


一誠とユミは森羅と田尻と握手をした。不意に森羅は田尻に視線を向けて言葉を発した


「大佐。此処で会ったのは何かの縁だ。記念に写真を撮って欲しい」


「分かりました」


「・・・・・あの七浜フィルハーモニー交響楽団の指揮者の久遠寺森羅と写真を撮るとは凄いで候」


「・・・・・そうか?」


「撮りますぞ」


田尻の言葉に三人は真っ直ぐ佇み、田尻が持っているカメラに視線を向けて


カシャッ!


撮られた。


「うむ。一時の思い出ができたな。写真が出来上がったら二人に送りたいのだが・・・・・

二人は何処にいる?」


「隣町の川神市にいるで候。私達は川神学園の生徒で候」


「・・・・・川神学園か、懐かしいな」


「・・・・・そこの生徒だったのか?」


「私の友達がとある人物に負けた学校の生徒がいる学校だ」


「その友達の名前は・・・・・」


「九鬼財閥の九鬼揚羽だ」


「・・・・・そうなのか。俺の学校に九鬼英雄って言う九鬼揚羽の弟がいるぞ」


「ほう、それは偶然だな。―――そうだ、兵藤。今度は私と撮ってもらうぞ」


「・・・・・構わないが」


「では」


そう言って森羅は一誠の腕を掴んで絡めると大佐に撮ってもらった


「ついでに私の住所と電話番号が記されている名刺を二人に渡そう。写真が出来上がった次第、お前達の

学校に送る。2人とも、また会おう」


「ではな」


森羅と大佐は一誠達と別れる。その姿にユミは一誠の手を掴んだ


「一誠さん、行きましょう」


「・・・・・そうだな」



―――コスモワールド七浜



「・・・・・最初はお化け屋敷に行こうか」


「本当に最初からですね!?」


「・・・・・冗談だ、絶叫系の乗り物は?」


「あ、あんまり乗れません・・・・・」


「・・・・・なら、軽い乗り物に乗るか?」


「はい」


二人は最初にメリーゴーラウンド、次に大きな樽型のコーヒーカップ、カートといった軽い乗り物を

乗り尽くして楽しんだ。そして、昼頃になり二人はベンチに座って休憩した


「あの一誠さん」


「・・・・・ん?」


「私、今日の為にお弁当を作ってきたんです」


「・・・・・大変だったじゃないか?」


「いえ、平気ですよ。それじゃあ食べましょうか」


ユミがピクニックバスケットから弁当を取り出して一誠に箸と一緒に手渡した


「・・・・・他人が作った手作りの弁当なんて何十年振りだろうか・・・・・」


「愛情を籠めて作りました。味わって食べてくださいね?」


「・・・・・いただきます」


「いただきます」


二人は弁当の中身を黙々と食べ始める。中身は卵焼き、アスパラのベーコン巻、唐揚げ、サラダ、

プチトマト、ヒジキ、金平牛蒡、ご飯。しばらくすると一誠に異変が起きた


「・・・・・美味しさと違って温かい物が伝わってくる。本当に愛情が籠もった弁当だと分かる」


「一誠さん・・・・・?」


「・・・・・本当に、本当に・・・・・久しぶりだ。愛情が籠もった弁当を食べるのは・・・・・!」


一誠が声を震わしながら弁当を完食した。ユミも続いて完食する。


「・・・・・ごちそうさま」


「御粗末さまでした。・・・・・大丈夫ですか?」


「・・・・・大丈夫だ。嬉しくて泣きそうになったが・・・・・」


「(一誠さん・・・・・、私が作った弁当でそんなに喜んでくれるなんて。―――よし、決めた!)

一誠さん!」


「・・・・・?」


「明日から毎日、私が一誠さんの分のお弁当を作ります!」


「・・・・・はっ?」


「良いですね!?」


「わ、分かった・・・・・」


思わず了承してしまった一誠にユミは―――


「それじゃあお腹も一杯になった事ですし、存分に楽しみましょう!」


嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「・・・・・可愛い」


「え・・・・・?」


「・・・・・いや、何でもない」


「・・・・・」


「・・・・・行こう」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――夜



「ふぅー、今日は楽しかったー!」


「・・・・・俺も楽しめた。特にユミが怖がる表情を見て」


「一誠さんって何気に酷いんですね。いきなり私の目を覆うと思ったら次に視界に入ったのは

お化け屋敷の人形でしたもん」


「・・・・・悪かったな」


「―――ユキちゃん達にも教えよう。一誠さんはSだって」


「・・・・・すいませんでした」


「うん、許してあげます」


「・・・・・ユミ」


「はい」


「・・・・・ありがとうな」


「一誠さん?」


「・・・・・久しぶりに楽しめた。誰かと一緒に楽しむ事を思い出したよ」


「・・・・・それは、一誠さんの家族の事ですか?」


「・・・・・ああ、そうだ。あいつらと生活して静かに暮らした事は滅多にないからな」


「・・・・・その中に一誠さんの好きな人はいたんですか?」


「・・・・・そのことについては秘密と一緒に話す。もう少しだけ待ってくれ」


「分かりました・・・・・。(やっぱりいたんだろうな。私、その人達に勝てるのかな・・・・・?)」


「・・・・・ユミと出会ってもう二ヶ月か」


「そうですね。もう二ヶ月ですよ」


「・・・・・あれ以来だ。中々独りになれなかったのは。ユミが俺の前に現れて、冬馬、ユキ、準も俺の

傍に来たと思えば、百代も俺と一緒にいるようになった」


「燕ちゃんも短い間だったけど一誠さんの傍にいましたね」


「・・・・・そうだな。お前等のお陰で、俺は独りになれない」


「させませんよ。一誠さんが何を言おうとも私達は一誠さんの傍にいると決めているんですから」


「・・・・・強いな」


「武士ですから!」


「・・・・・はぁ、負けそうだ」


「勝ちますよ?一誠さんが明るく、心から笑ってくれるまで挑みますから」


「・・・・・そうか」


「はい!あっ、私の家は此処です」


「・・・・・それじゃあな」


「今日はありがとうございました!また明日!」


ユミは一誠にお辞儀をして踵返して家の中に入っていった


「・・・・・帰るとするか」


「(一誠さん!)」


「・・・・・?」


「(おやすみなさい!)」


「・・・・・おやすみ」


ポツリと直接ユミに言わず呟きながら闇の中に消えて行った



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