小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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七月三十日(木)



「ちぇっ、どれもこれもお前の事ばかり言っているぞ」


「しょうがないだろう。あれだけ派手に天使だと正体を明かした上にドラゴンと大会に参加して

優勝したんだから」


「で、優勝賞金を全て総理に渡したんだからな」


「金なんていらねぇさ」


「それに九鬼家の女と婚約されちゃったしねぇ?」


「一誠君。結婚しちゃうの〜?私、嫌だよー」


「そう言われると困るんだが・・・・・というか、勝手にあっちが言っているだけであって俺は了承も

肯定もしていないぞ。否定と拒否もしていないが・・・・・」


「じゃあ、誰か好きな奴がいるのかい?」


「・・・・・まだいない」


「辰、頑張って一誠を落とすんだよ」


「うん、頑張るよー」


「・・・・・諦めたけど、どこにいても俺は独りになれないのか」


「おい、兵藤一誠」


「竜兵、なんだ」


「お前は自分が天使だと明かした。だからお前が住んでいる場所はこの家だと知られたんだよな?」


「そうだな。だけど、この家がある空域と海域には来られない」


「何でだ?」


「長女の亜巳は知っているだろう?」


「少ししか知らないが、天使が戦争を終戦に導いた。その貢献に世界中は天使の願いを色々と叶えた。

その一つがここ『天使達の聖域』」


「で、俺が言ったのは『あの空域と海域を欲しい』とな。二つ。『俺とアメリカ人達は自由に出入りできるが

それ以外の者は近づく事は許さない』」


「何でそう言ったんだよ?」


「俺は第二次世界大戦の結末とその後の世界の展開が知っている。あまり歴史を変えるような事をしたく

ないからだ。それに、人は何時か俺達の存在を忘れられるか伝説、またはそんな話も聞いたなと、

そんな程度しか認知しなくなっていく。案の定、お前らだってそんな感じだった」


「そりゃあ・・・・・」


「別に責める気はない。人はそういう生き物だ。今、世間は俺の話で盛り上がっているがどうせまた

数十年間、姿を現わさずにいると俺への意識が薄く成るさ」


「・・・・・」


「それで三つ目は『この空域と海域に近づいた者は天罰を下す』。内容はその者の国の破壊だ。まあ、

ただの脅しだけどな」


「実際にそんな事をしたら忘れられないんじゃないかい?」


「仮にそうしたとしても結果は同じだろうさ。俺が現れた時代に生きた人間達がいなくなると次の世代の

人間達は俺の事を知っても『そんな事が有ったんだな』とぐらいしか思わない」


「そんな中をお前は生きていたんだな」


「長生きするからな。本当の俺を知っている人間がいなくなった途端に一人ぼっちになったぞ。

あれは辛く、寂しかった・・・・・」


「・・・・・一誠、お前は私達が死んでもその姿のままで生き続けるのかい?」


「・・・・・だろうな。だから俺は独りのまま、孤独に生きたかったんだ。でも、お前等を見てやっぱり

『誰かと一緒に暮らしたい』と思ってしまった。原因はこいつだったけどな」


「私?」


「お前が中々、俺の背中から離れくれなかっただろうが。その上、亜巳、天使、竜兵という

兄弟姉妹と生活していたからな」


「当り前だ」


「ウチ等を捨てた親なんかよりアミ姉達の方がよっぽど家族だぜ」


「そのお陰で私達は自由に生きていけた。そこだけは感謝しているさ」


「そうだねー、アミ姉達以外の人なんてどうでもいいしねー。あっ、一誠君は別だよ?毎日美味しいご飯を

いっぱい作ってくれるし、一緒に寝るのが幸せだからさ」


「料理が好きで昼寝が趣味だ。そこのところは辰と同じだな」


「私達って相性がバッチリだねー」


「否定はしない」


「まっ、そういうところじゃあお前には感謝しているぜ」


「こんなウチ等をこんな家に住まわせてくれるなんてどんなお人好しなのかよと思ったけど、この家に

住んでからは前の家にいた以上に充実しているし面白いぜ。それとウチ、お前の事は気に入っているから

そこんとこよろしく」


「師匠と一緒に私達を強くしてもらっているしね。・・・・・流石に何度も死ぬかと思うほどの

修行だけどね」


「あれぐらい序の口だぞ。俺はあれ以上の事をしてこの強さだからな」


「・・・・・良く生きていけたね」


「・・・・・本当だよ。何度もこれでもかと言うほど生と死の間に彷徨っていた」


「ウチ等ってまだ優しい方なんだな」


「ああ・・・・・初めてだが尊敬に値するぜ」


「一誠君はどうしてそんなに強いの?」


「―――救済の為さ。お前等にはどうでもいい事だろうけど俺は誰かを助けたいと思って強くなった。

偽善者と言われても俺は救済をしたい。困っている人間や悲しんでいる人間、助けを求めている人間に

手を差し伸べる。例え、そいつが悪だとしてもな」


「「「「・・・・・」」」」


「さてと、飯を作るとしようか。辰、一緒に作ろう」


「うん、一誠君と料理。楽しいなぁー」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――深夜



「大将、皆。お前等が死んでかなり時間が経ったな」


満月が浮かぶ中、俺は死んだアメリカ人達の墓の前にいた。慰霊碑でもある。


「ガイア達・・・・・俺の家族達は今でも俺の事を探していると思う」


1つ1つの墓の前に花束を置きながら俺は語る


「だけど、今でも俺はあいつらの許には戻れていない。・・・・・本当に俺はあいつらと

再会できるのかな?」


1つ1つ、墓を撫でながら俺は語る


「今日は良い報告を知らせに来た。本当の俺を知った人間の友達が複数もできた。皆、お前等と同じで

個性的な奴らばかりだ」


全ての墓に花束を置いて俺は金色の翼を出した


「この家に住んでいる板垣兄弟姉妹って奴等もそんな奴らだ。この姿を見てもあいつ等は態度なんて

変えやしなかった。ホント、可笑しな奴らだよ・・・・・」


あいつ等の事を思ったら思わず苦笑を浮かべてしまった。


「他に俺に好意を抱いている奴もいれば俺を婚約者にして自分の家に引き込もうとする奴も現れた。

どうして俺なのかと思うほどだった」


ユミ、ユキ、燕、辰、百代、揚羽を思い浮かべて嘆息した


「好意を抱いてくれるのは嬉しいが俺は天使だ、長生きする人間だ。人はいずれ俺を残してこの世から去って

しまう。―――俺はまたお前達が死んだ後のあの気持ちを味わうのが来ると思うと俺は怖い・・・・・」


俺の脳裏であの時の事を思い出す。


「だけど、それを回避する方法が俺の手にある」


懐から龍を模したチェスの駒を取り出した


「『ムゲンの駒』、永遠の命を得る代わりに人間ではなくなってしまう。大将、

お前を若返らせたあの時の力とは別の方法だ」


コロコロと手の中で転がし始める


「だが、あいつらには友達や家族がいる。そんな奴にこの方法をすることはできない。若返らす事もそうだ」


転がすのを止めて駒を指で挟んで満月の光に照らすように見る


「―――結局、俺はまた数十年後には一人ぼっちに戻る訳だな・・・・・。どうして俺は友達なんて

認めてしまったのだろうか・・・・・」


この場に俺の問いを返事してくれる存在はいない。


「はあ・・・・・、あの頃より大分、俺は心が弱くなった。力も前より弱くなったかもしれない・・・・・。

想いの力が・・・・・無くなっているんだろうな」


服をギュッと掴んだ


「ガイア・・・・・皆・・・・・」


愛しい仲間、家族、少女達を想い浮かべた。


「会いたい・・・・・会いたいよ・・・・・俺は・・・・・皆が・・・・・会いたい・・・・・っ!」


ダムが決壊したかのように涙が溢れ出てきた。


「もう、一人は嫌だ・・・・・!また、大切なものがなくなるなんてもう・・・・嫌だ・・・・!

俺は、俺は・・・・・!」


「・・・・・一誠君」


「―――っ!?」


「一誠君・・・・・」


「・・・・・辰」


「話は聞いていたよ。一誠君は気づくと思っていたけど私の事を全然気づいていなかったみたいだね」


「・・・・・」


「あははー、一誠君は意外と寂しん坊なんだね?」


「・・・・・」


「私達じゃあダメなのかな?ずっと一緒に居てもそれでもダメなのかな?」


「・・・・・人間はいずれ死ぬ。・・・・・俺を残して。それは辰、お前も亜巳達も同じだ」


「そうだろうねー、人は直ぐに死んじゃうからねー」


「・・・・・ああ、そうだ」


「一誠君、私は一誠君が好きだよ」


「・・・・・」


「初めてあの河原で一誠君が寝ている所を見て私、一誠君が好きになったんだ」


「・・・・・言うな」


「これが一目惚れっていうんだろうね?でも、私はそれでも良いと思った」


「・・・・・頼む」


「アミ姉も天ちゃんもリュウちゃんも皆、幸せに暮らせて私は楽しくて嬉しいよ。これも大好きな

一誠君のお陰だよ」


「・・・・・それ以上・・・・・言うな」


「一誠君、好きだよ。何時までもずっと・・・・・」


「それ以上言うなあああああああああああああああああああ!」


「っ!?」


「何が好きだ!?数十年しか生きられない人間が易々と俺に好意を抱くな!迷惑なんだよ!怪我、病気、

寿命で直ぐ死んでしまう人間に『好き』と言われても後に残される俺の気持ちを考えろ!」


「・・・・・」


「俺がどれだけ独りで辛く悲しい思いをしていたのか解っていないからそんな事が言えるんだ!学校にいる

あいつらもそうだ!ずっと傍にいる、俺に付いていくと言っても

結局最後には俺を残して死ぬ!口先だけだ!」


「一誠君・・・・・」


「だから俺は孤独に生きたかったんだ!なのに、なのに何で俺はお前等とあいつらを

許してしまったんだ・・・・・!」


『―――それはお前が誰かと一緒に成りたいと思ったからだ』


「―――ブラフマー」


「ブラフマー?」


『お前が口から独りに成りたい、孤独になりたいと言っても心からはそんな想いは微塵も無かった。

お前も結局は口先だけ言っているだけだ』


「・・・・・違う、俺は本当に」


『では、何故あいつらと目の前にいる人間と接している?お前の言っている事としている事が矛盾して

いるではないか』


「・・・・・っ!」


『兵藤一誠。この人間が言っているようにお前は寂しん坊だな。たかが、数十年間あいつらと

離れて暮らしているだけで会いたがっているのだからな』


「もう数十年だぞ!会いたいに決まっているじゃないか!家族や好きな女と会いたいと言って何が悪い!?」


『ああ、悪くは無い。だが、いい加減見苦しく成ったぞ。いや、女々しいか?』


「俺が・・・・・女々しいだと・・・・・!?」


『そうだ、それにお前はあいつ等の事を信用していないようだな』


「信用していないだと!?ふざけるな!」


『あの人間も言っていたではないか「何時かお前の家族が迎えに来る」と』


「信じているさ!何時か必ず迎えに来るって!」


『―――なら聞くが、今のお前の力が半分以下の力しかないのは何故なんだ?』


「・・・・・なん・・・・・だと?」


『この世界では確かにお前が頂点に立つほどの力はあるがお前がいた世界では赤龍帝より弱くなっているぞ』


「―――っ!?」


俺が・・・・・あいつより弱く・・・・・なっている・・・・・?


『単純な力はともかく、心の力は赤龍帝の方が上だ』


「・・・・・そんな」


『主・・・・・。申し訳ないのですが、バカ神の言う通りです』


『主の心の強さは激減している。今、赤龍帝と闘ったら負ける』


『僕達の力を使っても多分負けると思うよ・・・・・』


ゾラード達まで・・・・・


『これ以上、心が弱く成ったら私は―――お前の許から去る』


「なっ・・・・・」


『この世界の何処かで私は眠りにつく』


『主、我等も同じ気持ちです』


『今の主は主ではない』


『ごめんね・・・・・』


「メリア・・・・・ゾラード・・・・・サマエル・・・・・」


お前等まで・・・・・お前等までいなくなったら俺は今度こそ・・・・・


『この長期の休みの間に以前のような心にしてみせろ。でなければ、私達はお前から去る』


『・・・・・主、これは我等からの試練でもあります』


『頑張ってね・・・・・』


『主が元に戻る事を信じている』


そう言ってブラフマー達は言葉をしなくなった。


「・・・・・」


「一誠君・・・・・」


「辰・・・・・俺・・・・・」


「・・・・・」


「あいつらが俺からいなくなったら本当に、本当に独りになってしまう・・・・・」


「ドラゴン達がいなくなっちゃうの?」


「・・・・・ああ、心がかなり弱まっているようなんだ・・・・・」


「そうなんだ」


「ははは、まいったなー、あいつより弱くなっているなんて俺ダメじゃん」


あいつがどれだけ強く成っても俺は負けなかったのになぁ・・・・・それが今じゃあ戦ったら

負けるって・・・・・どれだけ弱くなっているんだよ


「・・・・・一誠君、その駒を貸してくれないかな?」


「・・・・・何でだ」


「龍みたいな駒なんて珍しいからねー、見てみたいんだよ」


「・・・・・ほら」


「うん、ありがとうね」


辰に駒を貸して見せた。次の瞬間、俺はとんでもない物を見てしまった。辰が―――『ムゲンの駒』を

胸に押し付けた。駒がそれに反応して辰の中に入ってしまった!


「な、何をやっているんだ!?」


「さっき話は聞いていたって言ったでしょう?永遠の命が得る代わりに人間じゃあ無く成るって」


「それを知ってどうしてそんな事するんだよ!?お前はもう―――ドラゴンに転生してしまったんだぞ!」


俺がそう言った途端に辰の背中から翼が生えた―――ドラゴンの翼だ。『ムゲンの駒』を使った家族は

アリシアという少女だけだ。


「これで一誠君とずっと一緒に生きていられるねー」


「―――っ!?」


こいつ、そんな事の為に俺から駒を貸すように言って・・・・・!?


「ん、力も溢れて来るような感じがするよ」


「当り前だ!ドラゴンの力をお前は手に入れたんだ!」


「じゃあ、一誠君より強く成ったのかな?」


「・・・・・それはない」


「そっかー、だけど私は戦うより寝るほうが好きだからどうでもいいけどねー」


「・・・・・辰」


「うん?」


「ドラゴンに転生してしまった以上、力の扱い方を教えないといけない。じゃないと色々と不便になるぞ」


「そうなんだ、それじゃあお願いするよー」


「―――お前はそれでいいのか。亜巳達がお前を残して死んでしまうんだぞ」


「うーん・・・・・それは悲しい事だけど一誠君とずっと一緒にいたいから別に良いよー」


「直ぐに駒を取り除く事ができるぞ」


「それはいいよー、これが無いと一誠君と一緒に生きていけないんだもん」


「・・・・・お前は」


「ふふ、一誠君。今なら言えるね」


「何を・・・・・っ!?」


「ん・・・・・」


辰がいきなり唇を押しつけてきた。直ぐに離れて満面の笑みを浮かべた


「一誠君、大好きだよ!」

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