小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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八月一日(土)


「・・・・・ユミに呼ばれて来て見れば大会に出て欲しい?しかも明日が大会かよ・・・・・」


「ああ、その通りだ」


「お願い!一誠さんも大会に参加してくれれば部員達の士気が上がるの!」


「俺、確かに助っ人として部員達の指導をするとは決めていたけど大会まで

参加する気はないんだが・・・・・」


「そこを何とかならないか?」


「俺が天使だと知っての事か?」


「知っての承知でこうしてお願いしているんだ」


「一誠さん、確かに私達に指導するだけの約束だけど、・・・・・お願い、一度だけ私達と

大会に出て欲しい。私は来年になったらこの学校を卒業して弓道部からいなくなっちゃうから・・・・・」


「・・・・・」


「一誠さん、お願い・・・・・」


「ほら、可愛い彼女がこんなに頼んでいるんだぞ?男として参加するべきだ」


「誰が彼女か!・・・・・はぁ、解ったよ。俺も参加すれば良いだろう」


「っ!ありがとう!」


「ふふ、お前はユミに弱いようだな」


「うるさい」


「これで優勝は確実!一誠さん、頑張ろう!」


「・・・・・ああ、というか俺が指導したんだ。優勝してもらわないとショックだぞ」


「そう言うと思ってお前の弓道着を準備していたんだ」


「・・・・・最初から参加させる気だったんだな」


「でも、一誠さんが参加してくれると信じていたんだよ?」


「・・・・・ふん」


「おっ、照れたな?」


「照れてない!で、大会はどこでやるんだよ?」


「当初は違うところでやる予定だったんだが急遽、川神学園でやる事になったんだ」


「どうせ、俺が原因だろうな」


「うむ。お前の姿を一目見ようと集まってくるぞ」


「別に弓道部じゃないのにどうやって俺を見るんだが・・・・・」


「ふふ、一誠さんは今では人気者ですね」


「茶化すなよ」


「そう言えばお前はどうするんだ?」


「何がだ?」


「九鬼揚羽と結婚するのか?」


「・・・・・」


小島梅が九鬼揚羽との結婚の事を聞いてきた途端にユミの表情が暗くなった


「・・・・・分からない。突然、あんなこと言われて俺は戸惑っているんだ」


「だろうな、私も聞いて驚いたぞ。しかも川神百代と松永燕もお前に好意を抱いていたなんてな」


「・・・・・」


「さて、私は職員室に戻ってお前の参加登録をしなくてはいけない。矢場、後は任せていいな?」


「はい、大丈夫です」


「うむ。ではな」


小島梅子が弓道場からいなくなり、弓道場は一誠とユミしかいなくなった


「それじゃあ・・・・・」


「一誠さん」


「・・・・・?」


「・・・・・」


ユミが静かに一誠に抱きついた。強く・・・・・強く・・・・・。


「・・・・・どうした」


「―――好きです」


「・・・・・」


「私、一誠さんが大好きです」


「・・・・・知っていた。燕にもそう告白された」


「そう、ですか・・・・・」


「でも、返事はしていない。理由は解るよな?」


「・・・・・はい」


「好意を抱いてくれるのは嬉しい。だけど、結局俺を残して死んでしまうんだ」


「・・・・・」


「まあ、そんな事だから俺は長年一緒にいてくれた相棒達が俺の許から去ろうとしているんだけどな」


「相棒・・・・・?」


「3匹のドラゴンの事だ。今の俺は自分達が知っている主ではないと烙印を押された」


「そんな・・・・・」


「はは、お前達が死んだ頃には―――今度こそ俺は孤独になる」


「―――っ!?」


一誠の衝撃な事実を聞いてユミは目を大きく見開いた。


「―――だが、同時に一人だけ俺と同じ存在ができてしまった」


「・・・・・えっ?」


「はあ、俺の不注意だったな、あれは・・・・・」


「どういうことですか・・・・・?」


「・・・・・こいつだ」


一誠は空間を歪ませて亜空間から『ムゲンの駒』を取り出してユミに見せた


「こいつは『ムゲンの駒』といってチェスの駒をベースにしたものだ。この駒を受け入れたら永遠の命を得る

代わりに人間ではなくなるんだ」


「その人が一誠さんからその駒を取ったんですか」


「取ったというより俺が渡したからだ。見てみたいと言ってさ・・・・・。で、そいつは永遠の命を得て

人間を止め―――ドラゴンに成った。ベースは人間だがな」


「ドラゴン・・・・・」


「そいつも俺に好意を抱いているんだ・・・・・。『これで一誠君と同じ存在になったね』と満面の笑みを

浮かべてさ」


「―――っ」


「あいつには困ったもんだ・・・・・」


「・・・・・一誠さん」


「ユミ・・・・・?」


「一誠さんはその人の事が好きなんですか・・・・・?」


「・・・・・好きというより一緒にいないとダメだと思っている」


「・・・・・っ!」


「俺がいないとあいつも一人ぼっちになる。だから俺は―――」


「一誠さん!」


ユミが突然叫びだしたと同時に一誠を押し倒した。弓道場の床に二人は倒れ込んだ拍子に『ムゲンの駒』が

一誠の手かから離れた


「「・・・・・」」


一誠を押し倒したユミは一誠の唇に自分の唇を押しつけた。自分も一誠の事が好きなのだと想いを乗せて


「私もその人と同じで一誠さんの事が大好きです!どうして私の気持ちを、

私達の気持を踏みにじるような事をしようとするのですか!?」


「・・・・・」


「怖いのなら傍にいます!辛いのなら私にその辛さを分けてください!寂しいのなら一緒にいます!

私が死んでいくのが嫌なら―――私も一誠さんと同じようになります!」


「なに・・・・・!?」


ユミは一誠から起き上がって傍に転がっている『ムゲンの駒』を掴んで―――自分の胸に押し付けた。

満月の夜、辰がドラゴンに転生したあの時のように。―――刹那


バサッ!


ユミの背中から翼が生えた。その光景を見て上半身を起こしていた一誠の瞳には驚きでいっぱいだった


「―――っ!?」


「・・・・・ふふ、これで私も永遠の命を得る事ができた。一誠さんを残して死ぬ事はもうありませんよ」


「っ!バカ野郎!後悔しないのか!?人間をやめたんだぞ!歳を取らないお前に友達や家族に化物なんて

言われるかもしれないんだぞ!?」


「一誠さんと一緒にいられるのなら後悔なんてしない!私は一誠さんが好きなの!」


「―――どうして、どうしてそこまで俺に好意を抱けるんだよ・・・・・!?」


「じゃあ、どうして一誠さんの家族は一誠さんの事が好きだったの!?」


「―――っ」


「一誠さんの家族もきっと私と同じ気持ちの筈だよ!ううん、私だけじゃない!ユキちゃんも百代も燕も

揚羽さんもきっと同じ!一誠さんは私達の気持を拒むと言うのなら一誠さんに好意を抱いている家族も拒むと

同じだよ!」


『一誠、我はお前の事が好きだ』


『一誠くん♪大好きだよー!』


『一誠、愛しているぞ』


『一誠、愛しているわよ』


『一誠、好きよ』


『一誠、大好きです』


「―――(俺があいつらを拒んでいる?愛しい仲間と少女達を・・・・・?)」


一誠は脳裏で彼女達を思い返していた。―――その瞬間、涙が溢れて頬を濡らし始めた。


「一誠さん・・・・・」


「・・・・・」


「もう一度言います。私は一誠さんが大好きです。―――私と付き合ってください」


「・・・・・ユミ」


「はい」


「・・・・・俺は元いた世界では何十人という女を愛してきた。俺は俺に好意を抱いている女を全て

受け入れるつもりだ。それはこの世界でも同じだと思う。・・・・・それでもいいのか?」


「私の事も愛してくれるのなら構いません」


「・・・・・そうか、―――ユミ」


「はい」


「・・・・・俺の傍にずっといてくれ」


「はい!当然です!」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



八月二日(日)



県内から弓の腕がある者達が七浜スタジアムに集結していた。県内の各学校から来た弓道部達は

グラウンドに立ち並んでいた。壇上には川神鉄心が各学校の弓道部に話をしていた


「弓に腕がある者達よ。よくぞやってきた、感謝するぞい。さて、炎天下の中で長い話はしないぞ。

ワシもこの歳だとちと、キツイからのう。ふぉふぉふぉ」


「(嘘つけ)」


「では、全国弓道大会を目指す弓道大会を始めるが今回の大会は少し変えさせてもらった」


「大会を変えた・・・・・?一体どんな風に変えたので候・・・・・」


「団体と個人競技の二種類を一種類にした。武器は己の肉体と弓矢を使用して仲間と共に敵を倒すのじゃ。

倒し方は―――」


川神鉄心から勝利の条件を説明された。ステージは七浜スタジアム。各自に指定された陣地を拠点として

戦い、敵の陣地にある超巨大な風船を割り生き残る事が勝利


「ただし、相手の風船を射るには相手チームを10名以下にしないとダメじゃぞい。

それまでは風船が現れんようにしてあるからのう」


「質問いいか?」


「なんじゃ?」


「武器は己の肉体と言ったけど格闘はありなのか?」


「ああ、有りじゃ。物陰に隠れて相手の隙をつくのも良いが、弓矢だけでは試合が長引くからのう」


「ん、解った」


「(一誠さん、どうしますか?)」


「(作戦を考えさせてくれる時間もあるだろうし、その間に考えよう。他の弓道部の部員の数は最高

50ぐらいだ。個人の弓の実力もそうだが、団体・・・・・チームワークとしての実力も試させられるな)」


「矢の補充は自分達の陣地にあるぞい。また、相手の矢か相手の陣地にある矢を奪って戦ってもよしじゃ。

では各自、指定された陣地に移動せよ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



――――川神弓道部チーム


30分間の作戦タイム中


「今回は天使の力は使わないぞ。仮に使ったら失格になりそうだ」


「そうだね、学園長は一誠さんにそういう事を口にしていなかったけどこれはあくまで弓での勝負。

無粋な事をしたら学園長はそうするかもしれない」


「一番多い弓道部は俺が片づけて風船を割る。その間にお前等は二、三人組んで戦え、密集して挟み撃ちでも

されたら危険だ」


「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」


「格闘が得意な奴は仲間から飛んでくる矢を叩き落し守るか、逆に矢を掴んで相手に射ろ。矢の節約にもなる」


「プレミアムな考えですね!」


「さて、お前達の力を発揮するには良い場所だ。今回の的は動く的だ。動かない的より難易度が高い」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


「だが、お前達なら一人も欠けずに勝利すると信じている。皆、頑張ろうな」


「「「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」」」


「あ、あの・・・・・」


「なんだ?」


「勝利のおまじないにギュッと抱きしめてください!」


「・・・・・はい?」


「お、お願いします!」


「・・・・・」


頬をポリポリと掻いた後、一人の部員をギュッと抱き寄せた


「これでいいのか?」


「は、はい・・・・・(キャー!先輩に抱き締めてもらったよー!)」


「せ、先輩!私もお願いします!」


「私も!」


「全員かよ・・・・・!?―――しょうがない、全員じゃあ時間が無いからこっちもやってやるよ」


大天使化に成って複数の部員達を翼で抱きしめた。その後、一誠に抱き締めてもらった部員達は幸せそうな

表情を浮かべた。―――最後はユミも抱きしめてもらっている


「ん、一誠さん・・・・・もっと強く・・・・・」


「・・・・・」


『では、試合を始めるぞい』


「だってさ」


「もう少しこのままでいたいのに・・・・・」


「試合が終わったらまたしてやるさ」


ユミから離れて弓だけを持った


「先輩、弓だけ持つんですか?」


「相手の弓を使うからいらない。俺の分はお前等が使え」


「先輩、気を付けて下さい」


「・・・・・お前等も綺麗な顔と身体が傷付かない事を祈るさ」


「「「「「「「「「「―――っ!」」」」」」」」」」


『それでは、試合―――開始!』


「じゃあな」


ヒュンッ!と一誠の姿が一瞬で消えた。―――刹那


「「「「「「「「「「ぎゃああああああああああっ!」」」」」」」」」」


何処からか大勢の悲鳴が聞こえた。


「私達も一誠さんに遅れてはダメ!行くよ!」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


ユミ達も一拍して行動を始めた。二人、三人と組んでバラバラになり移動し始める川神学園弓道部達



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「遅い!」


相手から放たれた矢を掴み逆に射る一誠


ドスッ!


「ぐあっ!」


「な、何て反射神経なんだよ!?」


「これが天使の実力なのか!勝てる訳が無い!」


「じゃあ棄権しろ、弱い者いじめは嫌いだからな」


「舐めるな!俺は格闘でも自信があるぞ!」


「ご託はいいから来い」


「この野郎!」


一誠に猛進する一人の男子部員。だが、一誠がそれより速く移動して飛び蹴りされて部員仲間を

巻き込みながら後方に吹っ飛ばされてしまった


「矢はもらうぜ。そして―――果てろ」


シュバババッ!シュバババッ!


「「「「「「「「「「ぎゃああああああああああっ!」」」」」」」」」」


「・・・・・粗方、倒したんだがまだ10名以下じゃなさそうだな」


更なる獲物を求めて一誠は歩を進める。


「―――今だ!」


「―――何がだ?」


「ひっ!?」


ドスッ!


矢を番わず手で敵を刺した。


「これがレプリカで良かったな。本物だったら死んでいたぞ」


『A校、10名以下に成ったので風船を射る事ができます』


「・・・・・あれか」


赤い超巨大な風船がスタジアムに現れた。一誠は矢を弦に番えて最大まで引っ張り―――射た


パアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


「まずは1つ。・・・・・おっ、会場の席に移動している奴もいるな。此処からでも狙えるから

射るとしよう」


1つの矢を射ると瞬時で次の矢を弓に番えて射るという動作を一誠は延々と続けた



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



『C校、10名以下となりましたので風船を射る事ができます』


凄い・・・・・、相手の動きが良く見える。


「はっ!」


「っ、危ない!」


部員に向かっていた矢を思わず掴んでしまった。前までこんな事できなかったのに今じゃあ

できちゃっている。これも一誠さんの駒のお陰なのかな・・・・・?


「プレミアムキ〜ック!」


「ぐえっ!」


「プレミアムパ〜ンチッ!」


「ぐほっ!?」


「武蔵さん、格闘も良いけど弓も使ってね?」


「分かっていますよ!―――はっ!」


ドスッ!


武蔵さんの矢が相手の身体に突き刺した。相手は身体に激痛が走ったのか苦悶の表情を浮かべて倒れた


「どうです、主将!」


「うん、一誠さんの射る姿勢に似てきたね」


「―――いたぞ!」


「今度は連射!なるべく一誠さんと同じように!」


「「はいっ!」」


シュババッ!シュババッ!


「「「「「ぐああああああああああ!?」」」」」


「くっ!一矢を報いるまでは・・・・・!」


「せやっ!」


「ぎゃっ!」


武蔵さんがもの凄い速さで飛び蹴りをした。あー、顔面に当って痛そう・・・・・。


『F校、10名以下となりましたので風船を射る事ができます』


「プレミア〜ム!主将、風船を割りに行きましょう!」


「そうね、慎重に行動しながら行きましょう」


観覧席に赴く私達。観覧席に行く為の通路に辿りつくと周囲を警戒してゆっくりと前に進む・・・・・


―――ヒュンッ!


「っ!伏せて!」


「「―――っ!」」


通路から出たところで矢が私達の頭上を通り過ぎた。


「しゅ、主将・・・・・!」


「何処かで私達を狙っているんだわ」


私だけ顔を出すと何かに察知して頭を下げると今度は複数の矢が私の頭上を通り過ぎた


「どうします?このままじゃあ・・・・・」


「(ユミ、俺が援護する)」


「(一誠さん?)」


「(相手は自分の風船を守ろうとして守りを固めている。ユミ達が丁度、F校の風船の近くにいるんだ)」


「(そうなんだ)」


「(俺を信じて行け)」


「(―――うん!)二人共、行くよ」


「で、ですが、今でたら矢が来ますよ!?」


「一誠さんが援護してくれる。あの人を信じていきましょう!」


「「先輩が・・・・・解りました!」」


「じゃあ、行くよ!」


私達は一誠さんを信じて通路から出て移動した。その瞬間、私達に大量の矢が飛来して来た。―――でも、


ドオオオオオオオオオオオオオオオ!


1つの矢が私達に向かってきた大量の矢を弾き飛ばし、叩き折った!観覧席が吹っ飛んだけど私達は

それでも前に進む!


「主将!プレミアムにあれです!」


『S校、T校、R校、E校、10名以下となりましたので風船を射る事ができます』


私達が超巨大な風船を視界に入れたと同時に次々と他の学校の風船がスタジアムに現れた。そして、

スタジアムの中から川神学園の弓道部達が出てきた。尚も私達に援護してくれる一誠さんが―――


「お前等、射ろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


私達にそう指示してくれた!


「二人共!此処から射るよ!」


「「はいっ!」」


矢を弦に番えて射る体勢になった私達にまた大量の矢が!だけど、一誠さんの援護で大量の矢は私達に

来ない!―――今だ!


「「「「「「「「「「いっけぇええええええええええええええええええええっ!!!!」」」」」」」」」」


シュバババババババババババッ!


私達の矢が超巨大な風船に向かった。―――そして



パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


『そこまで!勝者!川神学園!』


私達の勝利が決まった!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――川神学園


「一誠さん!」


「ユミ、お疲れ様」


「はい!一誠さんのお陰です!」


「俺は1つの風船を割った後は観覧席に出てくる相手を射てお前達の援護をしただけだ。残りの全部は

お前達がやったじゃないか」


「でも、一誠さんの援護が無ければ大変でした!ありがとう!これで私達は全国大会に出られます!」


「えっ、あれだけで全国大会に進めるもんなのか?まだ試合があるのかと思ったけど」


「兵藤、矢場」


「ウメ先生!」


「話は学園長から聞いたぞ。試合内容がアレだとは知らなかったが、それでも試合に勝った。相手の各学校の

弓道部は私達と同等かそれ以上の強豪なのに関わらずに見事に勝った」


「・・・・・俺は特に指導しただけだ。こいつらの弓の実力が上がって試合に勝ったんだ。俺じゃなくて

こいつ等に言え」


「こうは言いたくないのだが、椎名が中々弓道に顔を出さず一年生に指導してもらっていないまま大会に

参加していたらきっと負けていただろう。だが、椎名の代わりにお前もたまにだが部活に顔を出して

指導してくれたお陰で全国大会に行ける資格を手に入れた」


「うん!そうだよ!一誠さんのお陰だよ!」


そう言ってユミが一誠に抱きついた。更に


「プレミアムに先輩のお陰ですよ!」


「ありがとうございます!」


「先輩のご指導で弓が上手に射ることができています!」


「「「「「「「「「「本当にありがとうございます!先輩!」」」」」」」」」」


「・・・・・」


「・・・・・兵藤君」


「・・・・・なんだ?」


「・・・・・影でこそこそと『人形』と言っていたけど兵藤君と接して気付いたの。兵藤君が人の為に

頑張っている人なんだなって」


「・・・・・俺は人形だ」


「ううん、貴方はもう『人形』じゃないわ。―――ごめんなさい、今まで貴方の事を悪く思っていた

私が許せないわ」


「・・・・・」


「何か私に天罰を下してくれない?何でも言う事を聞くし何でもする」


「・・・・・分かった。じゃあ、目を閉じろ」


その指示に一人の部員は素直に目を閉じた。


「・・・・・」


「これがお前に対する罰だ」


コンッ


「・・・・・え?」


「別に俺は『人形』なんて言われても気にしていなかったんだ。寧ろ、俺がそういう風にしたんだ。

お前が悪い訳じゃない」


「で、でも・・・・・」


「はいはい、この話は終わりだ。お前は謝り、俺は罰を与えた。これでお互い何にも無くなった」


「・・・・・」


「一誠さんは本当に優しいんだね」


「・・・・・ふん」


「おっ、照れたか?」


「照れていない!」


「照れている先輩って可愛い・・・・・!」


「おい、誰が可愛いんだ?」


「はわっ!?」


「うむ。それじゃあ、記念に集合写真を取ろうではないか。一誠、天使に成れ」


「・・・・・俺も撮るのかよ?というか今、俺の名前を―――」


「良いから早くする!」


「・・・・・分かったよ。―――禁手化」


その後、弓道部達と顧問の小島梅子、一誠の集合写真を撮った

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