小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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八月三日(月)


「・・・・・」


バシャアッ!バシャアッ!


「んしょ」


ゴシゴシゴシッ・・・・・


「ん、こんなものか」


「一誠君」


「・・・・・辰か」


「何しているのー?」


「少し汚れていたから磨いていたんだ」


「ピカピカだねー」


「―――親友と戦友の墓だからな・・・・・」


「そっか、私も手伝うよー」


「いや、もう終わったから」


「残念・・・・・」


「で、どうして此処に?この墓と慰霊碑しかない場所に」


「んー、一誠君とベッタリしたいからー」


「そうか、なら来い」


「うん、行きまーす」


辰は背中から一誠にベッタリと抱きついた


「んふふ、やっぱり一誠君の身体って温かいなぁー」


「暑くないのか?俺の背中に抱きついて」


「それとこれは別だよー」


「そうなのか?」


「うん、そうだよ?」


「・・・・・竜兵達は?」


「下(地上)に降りたよ」


「そうなんだ、じゃあ俺と辰の二人きりか」


「うん」


「・・・・・なあ、くどいようだろうけど聞くが人間を止めて永遠の命に成った事に後悔はしないのか?」


「しないよー、私は一誠君と一緒にいたいからねー」


「俺の何処が好きになったのか解らない・・・・・」


「私は一目惚れだよ。もう、一誠君の寝顔を見てビビッ!ときたんだからさ」


「寝顔で一目惚れって可笑しな辰だな」


「ふふ、一誠君が大好きー♪」


「・・・・・お前から離れる気はないからな」


「それってプロポーズかな?」


「俺と同じようにしたくないんだよ。だから、お前が嫌でも俺は離す気はないからな」


「うん!私も一誠君を離さないよー!」


より一層に腕に力を籠める。一誠は身体を反転させて辰を向き直る


「まあ、これから長い付き合いに成る。よろしくな」


「・・・・・んちゅ」


「んん・・・・・」


辰が一誠にキスをした。甘く熱いキスを・・・・・。一誠も同じ様に辰にキスをしたが直ぐに離れた


「辰」


「一誠君?」


「俺ってこう見えても結構、欲張りで寂しがり屋なんだ」


「うん、寂しがり屋さんだね」


「だから、辰と他にも一緒にいたい人間もいるんだ」


「そうなんだ?その人はだれ?」


「辰と同じドラゴンに転生した人間だ」


「おおー、私と同じ人ができたんだねー」


「だから、そいつも辰と一緒に暮らしたいんだ。いいか?」


「私は一誠君がそう言うのなら何だっていいよー?一誠君が決めた事なら私は言うこと聞くしねー」


「・・・・・ありがとう」


「どういたしましてー」


「それじゃあ一緒に寝るとしようか」


「だいさんせ〜い」


その後、二人は桜の木の傍でぐっすりと静かに寝た



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



八月四日(火)



「久しぶりだな、お前等」


「はい、お久しぶりです一誠さん」


「わーい!イッセー、久しぶりー!」


「KOS以来だな」


「ホントだねー」


「あんまり表には出られないからな。俺が外に歩くと周りが気づいてサインしてくれだの、

握手してくれだの、一緒に写真を撮ってくださいだのとなるだろうし」


「人気者は辛いですね」


「今でも一誠さんの事でたまにニュースになっているしね」


「準から色々と聞きましたが私は一誠さんの天使の姿を生で見てみたいです」


「僕も見てみたいなー」


「・・・・・燕と準には見せたからな。―――禁手」


「・・・・・おお、神々しいオーラの輝きを放って目が眩しいです」


「うわぁー、きれーい!」


「わっ、井上君の頭が光っているよ!」


「なぬっ!?」


「あははー!豆電球―!」


「暗闇の洞窟には持ってこいですね」


「俺は豆電球ではありません!こら、ユキ。バシバシと頭を叩くんじゃありません!」


「さてと、話は此処までにして今日は何して遊ぼうか」


「では、一誠さんが住む『天使達の聖域』に行ってみたいですね」


「・・・・・俺の家かよ」


「おっ、それはいいな」


「うん、僕も行ってみたい!」


「私はKOSの時に行った事あるケド、久しぶりだね」


「・・・・・俺の家となるとユミも呼ばないといけなくなるな」


「あの先輩もか?」


「ああ、それに教えたい事もある」


「「「「???」」」」


―――十数分後


「待たせたで候。それで、どうしたので候?」


「冬馬達が俺の家に行きたいと行ったからユミも誘ったんだ」


「っ!一誠さんのお家!?」


「それにお前には色々と教えないといけない事がある。『あの力』の事だ」


「・・・・・解りました」


「一誠さん、『あの力』って一体何なんですか?」


「・・・・・ユミ、翼を出せ」


「はい」


バサッ!


「・・・・・え?」


「これは・・・・・翼?」


「見た感じ、ドラゴンのような翼だな」


「おおー・・・・・」


「ユミはもう人間じゃない。ドラゴンに転生した元人間だ」


「・・・・・それ、本当なのですか?」


「ああ、それに加えて永遠の命を得た。俺と同じ存在になったんだ」


「どうしてユミちゃんがドラゴンになったんですか・・・・・?」


「俺の不注意でそうなった。同時にユミに告白もされた」


「「―――っ!?」」


「それで、一誠さんは彼女の告白を断わったのですか?」


「・・・・・いや、受け止めた」


「「・・・・・」」


「妬けますね。私の一誠さんが奪われたような感じがしますよ」


「こらこら、若。一誠さんは若のじゃないだろう」


「でも二人共、安心するで候」


「「えっ?」」


「一誠さんは私だけではなく一誠さんに好意を抱いている女性も受け入れると言っていたで候。

だから二人も告白をすれば受け入れてくれるで候」


「まあ・・・・・そう言う事だ」


「では、私の気持ちも受け止めて―――」


「はいはい、若はこっちにいましょうねー」


「・・・・・準、何気に邪魔をしますね」


準の手によって冬馬は離れたところで連行された


「一誠さん・・・・・」


「一誠・・・・・」


「燕、ユキ」


「一誠さん・・・・・本当に?」


「ユミの言葉に思い出された。―――好きな女を愛する気持ちが・・・・・」


一誠はユキと燕を纏めて抱きしめた


「これからは素直になる。今日がその一歩だ。―――二人共、好きだ。俺と付き合ってくれないか?

節操が無い男は嫌いなら断わっても良い」


「―――嫌いになる訳無いじゃないですか!大好きです、一誠さん!」


「そうだよ!僕も一誠が大好き!ずっと一緒だよー!」


「勿論、私もで候」


「燕、ユキ、ユミ・・・・・」


「―――フハハハ、良い事を聞かせてもらったぞ!」


「「「―――っ!?」」」


「・・・・・やっぱりな、上空から強い闘気を感じたぞ。―――揚羽」


一誠達の上空にヘリが飛んでいた。そしてヘリから飛び降り、一誠達の前に着地した人物―――九鬼揚羽


「九鬼財閥専用の衛星で一誠を追っていたら何やら話し込んでいたから盗聴で聞いてみれば一誠が好意を

抱いている女を受け入れると言っていたので我はその真意を確かめるべく直ぐに駈けつけたぞ!」


「衛星で一誠さんを追って盗聴していたなんて度を超えたストーカですね・・・・・」


「ふふ、愛ゆえだ。仕方がなかろう?それで一誠よ。先ほどの言葉は真か?」


「・・・・・ああ、そうだ」


「フ、フフ、フハハハハ!そうか、そうか!」


揚羽は哄笑をしながら一誠に近づく


「では、我も『天使達の聖域』に行くぞ!『天使の聖域』にある空域と海域は九鬼財閥でも行けぬ域だ。

この足であの聖域に踏み込めると思うとワクワクするぞ!」


「・・・・・ダメだと言っても聞かなさそうだな。しょうがない」


一瞬の閃光が一誠の全身から放った。太陽の日差しを遮るほどの眩い光が無く成ると


『背中に乗れ』


金色の身体を持つ龍と化となった



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――天使達の聖域



バサッ!


燕達を乗せた一誠は空高く、雲より高く浮かぶ大地、『天使達の聖域』に到着した


「一誠さんの家って久しぶりに来たよ」


『燕は何度もこの家に来た事があったからな』


「不思議ですね。巨大な桜が咲いていますよ」


「金色の芝生って見た事も聞いた事もないぞ・・・・・」


「一誠さんの家が大きいで候・・・・・」


全員が一誠から降りると一誠は龍化を解いた


「ようこそ、天使達の聖域へ。歓迎するぞ。それじゃあ、家の中に案内しよう」


「此処が一誠の家か・・・・・、素晴らしい所ではないか。空に浮く大地なぞ、九鬼財閥でも不可能な事だ」


「一誠さん、あそこにある巨大な石板とその傍にある石は何で候?」


「・・・・・第二次世界大戦で共に戦ったアメリカ人達の墓と慰霊碑だ」


「・・・・・黙祷をしても良いで候か?」


「ああ、いいぞ」


「私も行きましょう」


「そうだな」


「うん」


「我も行こう」


一誠と燕を残して冬馬達はアメリカ人達の墓の許へと向かった


「一誠さん、あの人達は?」


「辰以外は地上に降りている」


「そっか、あの子は何処で寝ているんだろう?」


「立ったままでも寝ていられるけど部屋の中にいるかもしれない」


「・・・・・ところで一誠さん、ユミちゃんがドラゴンに転生したと言っていましたが一体

どうやってなったんですか?」


「龍に転生できる物を使ったんだ」


「一度転生したら二度と戻れないんですか?」


「そうだな、人間には二度と戻れないな。永遠の命を得てもその代償が大きい」


「じゃあ、ユミちゃんは死ななくなったのですか?」


「不死身ではないけどその通りだ」


「―――私も龍に転生したいです」


「・・・・・自分が何を言っているのか解っているのか?」


「はい、二度と人間に戻れなくなる事も解って言っています」


「後悔するぞ」


「後悔なんてしません。一誠さんとずっと一緒にいられるのなら本望です」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・分かった。が、この話はまた後で続けよう。あいつらが戻ってきているからな」


―――家


「洋室、和室、ゲームセンター、プール、温泉、図書室、訓練場―――って、どれだけ凄いんだよ、

一誠さんの家は!他にもまだまだあるし此処は何かのパークか!?」


「期待通りのツッコムありがとう」


「様々な施設もあるようだな。開発、研究、改造・・・・・軍事に関わる施設であるな?」


「ISもその場所で作った」


「『天使達の聖域』の正体はとんでも無い所ですね。聖域とは言えないものばかりありますよ」


「俺が『天使達の聖域』なんて名前を付けた訳じゃないし。あの時の戦争時代にいた人間達が勝手にそう

名付けたんだ」


「そうなんですか?それは意外ですね」


「それじゃあ、寝室以外は行くなよ。それ以外の場所なら自由には行っても良い。図書室にある本を

読んでもよし、ゲームセンターに行って遊んでもよしだ」


「一誠さんは?」


「この家に住んでいる住人を探して修業を付けてくる」


そう言って一誠は冬馬達から離れた


「この家に住んでいる住人?」


「そっか、葵君達は知らなかったね。一誠さんの家には板垣っていう四人の兄弟姉妹が住んでいるの」


「板垣・・・・・?確か親不孝通りで好きで暴れている奴の名前だな」


「そうなの?」


「ええ、しかし一誠さんの家に住んでいるとは驚きました」


「何でも、私生活を見て一誠さんが堪らず此処に住まわしたみたい」


「一誠さん、相変わらずお人好しの上に優しい人だな」


「ふふ、それじゃあ私達は自由に一誠さんの家を探検しましょうか。私は図書室に」


「我はこの施設に行くぞ」


「じゃあ俺はゲームセンターだな」


「僕はイッセーといるね!」


「私もで候」


「私も!」


燕達はバラバラになって自由に行動を開始した


―――図書室


「これは・・・・・凄い数の本ですね」


無限とも言える本の数が大量の本棚に収まっていた


「かなり古い本もあれば真新しい本もある・・・・・」


1つ1つの本を眺めながら歩を進める。そして一番奥に移動した冬馬の歩が止まった


「・・・・・『魔法と魔導に関する説明書』?」


冬馬はその本を手にしてページをめくる。しかし、そのページに記されている文字は冬馬が見た事もない

文字ばかりだった。


「・・・・・」


それでも冬馬は未知なる知識が目の前にあると嬉々として本を読み始めた。


―――研究施設


「凄い・・・・・!凄いぞ・・・・・!」


九鬼揚羽は身体を歓喜に震わせていた。一誠にとってはどうでもいい物は揚羽にとっては喉から手が出るほど

凄い物だった


「我々が考えもしない物が一誠はこうも簡単に実現して造り上げている・・・・・!」


手にはISの設計図が収まっていた。そして揚羽の視線にあるテーブルに置かれている数々の設計図を

見詰めていた


「破壊兵器もあれば人に役立つ物もある。汚染した水を清浄にする機械もあるのか・・・・・」


軍事を総べる揚羽にとっては見逃せない物ばかり。


「―――やはり我が見込んだ男は凄かった!いや、我の予想を超える男であった!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――ゲームセンター


「おいおい、どんだけあるんだよ?」


100以上あるゲーム機を見渡しながら呆れる準


「これ全部、一誠さんが作ったのなら凄いな・・・・・」


不意に準の視線が1つの機械に入った。準はなんとなくその機械に近づく


「『リアル人生ゲーム』・・・・・?どんなゲーム何だがやってみるとするか。えーと、俺が主人公で

パートナである人物を設定して共に人生を歩むゲームか・・・・・。俺のパートナはこいつだ!」


準はパートナを♀に選択した。次の画面が変わると準は目を見開いた


「おおっ、容姿と体型に声の他にも俺が選択できるのか!一誠さん、あんたは何の目的で作ったんだ?

まあ、俺にとっては嬉しい事だ!―――これはこうで、ここはこれで・・・・・」


準は自分が好きな小さい幼女にした。そして、物語が始まると準の口元にマイクが出てきた


「マイク?何で出ているだ?」


『準にぃ!起きてよー!朝ごはんだよー!』


「・・・・・俺は今、天国にいる」


『天国?なにそれー?』


「・・・・・何?返事が返ってきただと?」


『準にぃー、天国ってどこー?』


「はっ!?い、いや、何でもないよ?ほら、ご飯を食べに行こうか!」


『うん!お母さんのご飯は美味しいから大好き!』


「(まさか、『リアル人生ゲーム』と言うのは・・・・・)なあ」


『なーに?』


「お兄ちゃんがずっと守ってやるからな」


『うん!お兄ちゃん、大好き!』


「―――っ!(やばいっ!これはやばいよ!一誠さん、あんたは神か!?なにこの神ゲーは!俺の言葉と

行動によって人生が進むというゲームなのか!リアルってそういう事だったか!)」


『準にぃ』


「な、なんだ?」


『夜に成ったら一緒にお風呂入ろうね!』


「―――っ!?」


準の全身に雷が落ちた衝撃が走った。


「(・・・・・やばい、俺。この道に走るかもしれない・・・・・)」


―――訓練場


「辰、炎をイメージして出してみろ」


「はーい」


ボウッ!


「次は氷と雷」


「うん」


辰の両手にバチバチと雷と冷気を漂わせる氷が出てきた


「そのままの状態で飛行して的を撃破だ」


「分かった」


翼を展開して空を飛ぶ。一誠の手によって空に浮かんでいる的を氷と雷で破壊していく


「今度は一度で全ての的を壊してみろ。イメージは全部破壊できる攻撃だ」


「・・・・・」


辰は腕を新たに浮かんだ大量の的に突き出した。辰がイメージしたものは・・・・・


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


膨大な質量の炎だった。的を瞬時で塵と化となって焼失する


「終ったよー」


「ん、じゃあ休憩だ」


「わーい」


一誠の前に降りて背中に抱きつく


「「「・・・・・」」」


「で、見た感想は?」


「ドラゴンになったらあんな事ができるんだなーと」


「すごーい」


「私も彼女のようにできるのかな?」


「ユミも鍛練すればできるぞ。というか、すぐできる」


「ホント?」


「―――炎が出るイメージをして見ろ」


「う、うん」


一誠の言う通りに炎が出るイメージをしたユミの両手に―――ボワッ!と燃え盛る炎が出た


「・・・・・っ!?」


「凄いっ!マジシャンみたいだよ!でも、熱くないのかな?」


「出した本人には熱さを感じないけど、他人だと熱い上に火傷するぞ」


「へぇ、凄いね・・・・・」


「炎を極めた奴はこれぐらいできるぞ」


ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


一誠は腕を上に突き出した途端に炎が奔流と化となって上空に昇っていった


「まあ、ユミにはこのぐらいまで鍛えるつもりはないけどな。大体そのぐらいで十分だ」


「じゃあ、何を教えてくれるの?」


「飛ぶ練習に魔力の事についてだ」


「わ、私、空を飛べるの?」


「翼があるから飛べるだろう?辰も練習したら一発でできた」


「飛ぶって気持ちいいよー」


「そ、そうなんだ・・・・・」


「さて、燕。さっきの話の続きだ。本当に良いんだな?久信さんはお前を嫌うとは思わないけどドラゴンに

なりたいのか?」


「うん、ユミちゃんも一誠さんとずっと一緒にいたいからドラゴンに転生したんでしょ?私も転生してずっと

一誠さんの傍で生きていきたい」


「イッセー!僕もイッセーと一緒に生きたい!トーマも準もイッセーについていくって

何時も言っているよ!」


「ユキ、お前まで・・・・・」


「一誠さん」


「・・・・・」


「お願い」


「・・・・・分かった」


空間を歪ませて亜空間から二つの駒を取り出した


「これがドラゴンに転生できる物、『ムゲンの駒』だ」


「チェスの駒みたいだね」


「実際にそうだぞ。俺の世界ではレーティングゲームといったゲームがあって・・・・・と、この事はまた

今度にしよう」


そう言いながら二人に駒を複雑そうに渡した


「複雑そうですね?」


「人間の幸せを奪うようなもんだぞ」


「私の幸せは私が決めます。一誠さんに私の幸せを奪われるなんて思っていません」


「・・・・・負けたよ」


「ふふ、勝っちゃいました♪それじゃあユキちゃん」


「うん!せーの!」


二人は同時に駒を胸に押し付けた。駒が粒子と化となって二人の体の中に溶け込んでいった。

―――その瞬間、二人の背中から白と黒の翼が出てきた


「おおっ!翼が出たよー!」


「とぉー!」


ユキが思いきりジャンプした。そして瞬時に翼を羽ばたいて空を飛んだ」


「おいおい、教えてもいないのにもう飛べるのかよ?」


「やるね!私も!」


「・・・・・ユミ、翼を出せ。お前も飛ばないと遅れるぞ」


「で、でも、どうやって飛べばいいの?」


「・・・・・辰、一緒に飛ぶぞ」


「わーい、一誠君と空のお散歩だー」


ユミの手を掴んで辰と共に空を飛ぶ


「空を飛ぶイメージをして翼を羽ばたくんだ」


「う、うん・・・・・」


バサッ!


「そうそう、その調子だ。―――手を放すぞ」


「ま、待って!・・・・・えっ、私、飛んでいる・・・・・?」


「何も怖くは無いんだ。あいつらを見てみろよ。楽しそうに飛んでいるだろう?」


「気持ち良い!空を飛べるなんてこんな気持ちなんだね!」


「わはーい!」


「・・・・・」


「全身に風を感じながら楽しめ」


「風を感じて楽しむ・・・・・」


バサッ!


「・・・・・あはは、空を飛べるってこんなに凄いだね。楽しく成ってきた!」


「だろ?それじゃあ飛行の練習をするぞ!俺を追って来い!」


「逆に追い越してやるよん!」


「私は一誠君と一緒に飛ぶぞー!」


「私も!」


「待てー!」


「追い越せるものなら追い越してみろ!」


一誠達は大空を自由に何も縛られる事も無く鳥のように飛んだ


「おっ、一誠さん達が空を飛んでいるぜ」


「ユキも松永先輩もドラゴンに成ったという訳ですね」


「フハハハ!一誠達は我も楽しそうに飛ぶな!我も空を飛びたいぞ!」


「・・・・・なあ、若。俺―――」


「はい、私も準と同じ気持ちですよ」


「そんじゃあ、俺達もお願いしましょうかね」


「ええ、お願いしましょう」


「「一誠さんと共に歩む為にドラゴンに転生を」」


「うむ。我も一誠に願うとしよう。ドラゴンに成るのもまた一興だ」

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