小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

四月二十七日(月)


―――多馬川大橋



「・・・・・」


川神学園に登校中。だが、一誠が橋を歩くとその橋に歩く同じ川神学園の生徒達が道を開ける。その際に

一誠の耳に声が拾った


「うわー、本当に不気味な奴―」


「そうそう聞いた?複数の男子達が全治五カ月の重傷を負ったって。あれ、あの『人形』がしたみたいよ?」


「マジ!?それってもう退学レベルじゃん!何でそんな事をしたのにあいつが此処に歩いているのよ!?」


「話によるとリンチに遭っている『人形』を助けようとした女子生徒が逆に襲われて『人形』が女子生徒を

助ける為に男子達に骨という骨を砕いて病院送りにしたって聞いたわよ」


「うわっ、『人形』を助けるとかって有り得ない。というか、その男子達もバカな事をしたんだね。

同じ女としては許せないし良い気味だと思うわ」


「ねー、今回はリンチと女子生徒を襲った男子達が悪いって事だから『人形』には御咎めはないですって」


「何か、優遇とかされていないかしら?いくら天才少年だからって何も罰がないって・・・・・」


「だよねぇー。Fクラスなのに何かSクラスみたいな家に守られているのかしら?」


「(あんな声で俺が聞こえていないと思っているのか・・・・・?)」


「一誠さん、おはようございます」


「・・・・・お前らか」


「おはよー♪」


「おはようさん」


一誠に声を掛けてきた男女三人組2−S、葵冬馬、井上準、榊原小雪。


「・・・・・俺に近寄るなよ」


「ふふ、そんな一誠さんも素敵ですよ」


「なんだそりゃあ・・・・・」


「トーマの範囲は無限大なのだー」


「というか、節操がないってことでしょうが」


「・・・・・」


「そうそう、一誠さん、聞きましたよ?凄い事をしたのですね」


「だから?」


「いえいえ、美しい女性が好きな私としては褒めるべき行為だと思っています」


「まあ、そいつらは自業自得でご愁傷様だな。リンチする相手が悪かった」


「ねーねー、僕もボコボコして良いー?」


「ユキ、屍に鞭を打つような事をしてはいけません」


「ほーい」


「・・・・・」


「一誠さん、おはようで候」


「・・・・・ユミか」


「うむ、今日も良い天気で候」


「これは、これは、3−Fの矢場弓子先輩ではございませんか。おはようございます」


「おっはー」


「おはようございます」


「おはようで候。・・・・・君達、一誠さんと仲が良いので候?」


「はい、幼い頃からの付き合いですよ」


「僕はその時に一誠に助けられたんだー」


「まっ、そういう訳ですよ。ていうか、一誠さんの名前を呼ぶ先輩は一誠さんとどういう関係で?」


「一誠さんに二度も助けられた候。だから私は一誠さんの味方で候」


「なるほどねぇー、・・・・・二回?」


「・・・・・人身売買、男子達に襲われそうになった時だ」


「おや?人身売買に遭った女性達の中に先輩の名前が載っていませんでしたが・・・・・」


「俺がそうしたんだ。だから、ユミが人身売買に遭った事は俺とユミ以外は誰も知らない」


「そういうことでしたか。ところで一誠さんはどうして先輩の名前を呼んでいるのですか?」


「・・・・・半ば強制的に呼ぶように言われた」


「私の事を『お前』としか一誠さんが悪いで候。君達は一誠さんに名前を呼ばれた事は?」


「昔は呼んでくれたのですが今はないですね。一誠さんは距離を置いているので・・・・・」


「イッセー、僕の名前を呼んでよー」


「・・・・・」


「とまあ、こんな感じで」


「ふむ・・・・・、一誠さん。彼等も一誠さんの味方で候。だから名前を呼ぶのは当然で候」


「・・・・・何でユミにそう言われなきゃいけないんだよ。・・・・・冬馬、準、ユキ。

・・・・・これでいいだろう」


「わーい!久しぶりに一誠に呼ばれたー♪」


「ええ、本当に久しぶりに名前を呼んでくれました」


「これからも呼んでくださいよ?」


「・・・・・ふん」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――2−F


「伝達事項だ。今週は第1回進路希望調査・・・・・こら熊飼!HR中にハンバーガを食べるな!」


「す、すいません、お腹が空いてしまって・・・・・」


「クマちゃん、空腹がマックスに成ると人格変わっちまうからなぁ」


「とにかく今は我慢しろ」


「うぅ・・・・・お腹空いたぁ・・・・・」


「各自、連休明けに希望進路を提出してもらう。5月にはそれを元に個別の進路指導だ。どんな夢でも

自由に書くが良い。それと、昨夜C棟2階の一部の窓ガラスが何者かによって叩き割れていた。

我が校にとっては珍しい事態だ。何か知っている事があれば言ってくれ。伝達事項は以上とする。

今週も切磋琢磨だ!」


2−F担任、小島梅子は教室から退出した。一拍して2−Fの生徒達は騒ぎ始めた。その最中でも一誠は机に

足を乗せて静かに空を見ていた。空を飛んでいる雀達が一誠の視界に入った。不意に机から足をどけて窓を

開けた途端、雀達が教室に入り込んで一誠の机の上に止まった


「・・・・・」


鞄から鳥のエサとなる食べ物を雀達に与え、雀達が我先にエサを食べているところを眺める。食べ終わると

満腹したのか翼を羽ばたかせて一誠の体や頭の上に飛び乗り眠り始めた。―――その瞬間


「・・・・・」


「へぇ、鳥達と仲が良いんだぁ・・・・・。あっ・・・・・」


「・・・・・」


一誠に声を掛けてきた女生徒に雀達が翼を羽ばたいて教室から出て行ってしまい、目が髪で覆われて

見えないがジロリと女生徒に睨みつけた。


「うっ・・・・・。ご、ごめん・・・・・」


「ちっ・・・・・」


あからさまに舌打ちをして席から立ち上がり何時も通り教室から出て屋上に行こうとした


「おい、お前」


「・・・・・?」


が、金髪の少女の声によって止められた


「何処に行く、もう直ぐ授業だぞ」


「だから?」


「何?」


「だから何だ?俺にはどうでもいい事だ」


「なっ・・・・・!」


「・・・・・」


「待て!」


金髪の少女―――クリスが一誠を捕まえようと腕を伸ばすが先に一誠が教室の扉を閉めたことで

失敗に終わった


「な、何なのだ!あいつは!?」


「あー、クリス。あいつに関わらない方が良いぞ」


「・・・・・何故だ」


「そういえば、クリスは彼の事を知らなかったね」


「どういう奴なのだ?」


「兵藤一誠、学年成績は1位で全国模試も1番の天才少年。だけど、彼は殆ど今みたいに授業をサボるんだ。

仮に授業を出ても態度が悪く、何度も先生に注意されるけど本人は全くの無視。それと友達も一人もいない

上に、僕達2年生と3年の生徒は彼を『人形』と呼んでいるんだ」


「人形?」


「あいつは何時も無表情だからだ。それにどんな攻撃でも何度も倒れても立ち上がり人形のようにその場に

立つ。それが由来で『人形』と呼ばれているんだよ。あいつは」


「しかも、耐久力だけが取り柄でガクトの攻撃を食らっても平気そうだったよね」


「まあ、最終的には俺様が勝ったけどな。スピードもキャップより遅い方だったし」


「そういえばさ、クリスが転校してきた放課後に何人かの男子達が入院したって学校に来る途中で良く

他の皆が言っていたね」


「ああ、学校始まって以来の大事件じゃないのか?」


「あれって彼がやったらしいよ?何でも、女生徒が男子達に襲われていたところに彼が病院送りにしたん

だって」


「おいおい、その話はマジかよ?あいつ、弱いんじゃないのかよ?」


「さあ、僕も詳しくは知らないから何とも言えないけど・・・・・」


「それで、病院送りされた奴等はどうなってんの?」


「・・・・・骨という骨を粉々になっているんだって」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


「命に別状は無いらしいけど・・・・・腕とか足はもう動かすことはできないかもしれないってさ」


「こ、こえぇ・・・・・・というか、そこまでするか?」


「今までの事で堪忍袋が破けたんだろうね。だからガクトもあまり刺激するような事をしちゃダメだよ?」


「あ、ああ・・・・・」


「・・・・・許せんな」


「えっ?」


「兵藤一誠・・・・・許すまじ!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



昼休み―――屋上



「・・・・・なあ」


「うん?」


「どうして此処で食べているんだ」


「私は一誠さんと食べたいから屋上に来たの」


「・・・・・友達と食べればいいじゃないか」


「その友達と食べているんだけど?」


「・・・・・」


昼休みになって何時も通り此処で一人だけで食べようと思った矢先にこいつが屋上に現れた。あろうことか

俺と食べる為にだ


「放課後、一誠さんのクラスに行くから待っていてね?」


「・・・・・ああ」


「それにしても一誠さんのお弁当は美味しそうだね?」


「・・・・・料理には自信がある」


「そうなんだ。一つ食べても良い?私のオカズも一つあげるから」


「・・・・・じゃあ・・・・・唐揚げをもらう」


「私も唐揚げをもらうね?」


お互いの唐揚げを弁当から摘まんで口の中に入れ咀嚼する。・・・・・ゴマ風味の唐揚げだな。

・・・・・ん?


「・・・・・」


「・・・・・どうした、不味かったか?」


「・・・・・しい」


「・・・・・ん?」


「―――美味しい!一誠さんの唐揚げ、凄く美味しいよ!」


瞳をキラキラと輝かすユミ。その表情を見て思わず苦笑を浮かべた


「・・・・・ただの唐揚げを食べてそんなに喜ぶなよ」


「ただの唐揚げじゃないよ!お店でも出せるほどの唐揚げだよ!?」


「・・・・・実際に俺の店があるけどな。『ファントム・イリュージョン』という店だ」


「―――っ!?」


ピシリとユミが固まった。そんな彼女に気にせずに弁当を平らげるとようやくユミは口を開いた


「世界が認め、世界で初めての『十二星』という史上初の称号を得た『ファントム・イリュージョン』。

料理長は謎に包まれていてその素顔は誰も見たこともないって言われ、何時店を開くのか料理長次第。

開店した瞬間に世界を騒がすほどの超有名な店。その店の料理長が一誠さん・・・・・!?」


「・・・・・店を開いたら開いたで、客が殺到して大変なんだよ」


「どうして?」


「・・・・・知りたいか?」


「え?」


「・・・・・俺の店の事だ」


「う、うん・・・・・」


「・・・・・分かった、もう直ぐゴールデンウィークだ。久しぶりに店を開く」


「え、本当!?」


「―――それと」


「ん?」


「・・・・・ユミ、お前も働いてもらうぞ。『あいつら』と一緒にな」


「あいつら・・・・・?」


ユミは首を傾げるが「ゴールデンウィークになれば分かる」と俺は告げた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――放課後



「「・・・・・」」


放課後に成った途端に金髪の少女、・・・・・確かクリスティアーネだったか、そいつに睨みつけられている


「・・・・・用が無いのなら近づかないでくれるか?」


「・・・・・お前の事は色々と聞いている」


「・・・・・それで?」


「お前の行動はとても許せないところが幾つもある。特に同じ寺子屋を通う者同士の骨を粉々にしたことが

もっとも許せない事だ」


「・・・・・ああ、あれか。今となってはどうでも良い事だな」


「っ!お前、罪悪感とかはないのか!いくら女子生徒が襲われたからといっていくらなんでもやり過ぎるにも

程があるだろう!?お前が病院送りにした者達は不自由な生活を送るのだぞ!

謝罪しに行くのが当然だろう!」


「・・・・・罪悪感?そんなものないし、謝罪もする気はない」


「なっ!?」


「・・・・・大体、関係のない奴が今更終わった事に掘り返すな。もう終わった事だ、それにあいつらは散々

寄って集って集団で暴行してきたんだ。寧ろ、今までよく我慢して来たと褒められる方だ。

ま、褒められる気はないがな」


「・・・・・何があってもその者達に謝罪をする気はないと・・・・・そう言うんだな?」


「謝罪をしてもらうのは俺と襲われた女子生徒の方だろうが。なんだ、俺は悪か?リンチに遭ってレイプされ

掛けた女子生徒を助けた俺が悪なのか?俺が助けていなかったら女子生徒は身も心もボロボロになって

一生深い傷を負う事に成っていたんだぞ」


「そ、それは・・・・・」


「身体の傷は直ぐ治る。だけど、心の傷はそう簡単には治らないんだぞ」


「・・・・・」


「俺が悪なら勝手にそう思え。代わりに二度と俺に近づくな、話し掛けるな。――−偽善者が」


席から立ち上がり廊下へと出る。丁度、ユミと鉢合わせになり一緒に弓道場へと赴いた


「此処が弓道場よ」


「・・・・・どこでも一緒なんだな」


「うん?」


「・・・・・いや、こっちの話だ」


弓道場を見渡し呟く。ユミは弓道着を着替える為に更衣室へと向かってしまい俺は此処で待つ事になった。

壁に寄り掛かって待っていると


「兵藤・・・・・?」


2−Fの担任、小島梅子が現れた。


「お前、何で此処にいる」


「俺が弓を扱えると教えたら主将に誘われて来た」


「お前が弓を・・・・・?それに矢場に誘われたとは一体どういうつもりだ・・・・・」


「さあ?まあ、何度か弓を射たら帰る。『人形』がこんなところにいたら部活動の邪魔でしかないからな」


「お前・・・・・」


「・・・・・」


「前から疑問に思っていた事がある。お前は何で自分から周りを遠ざけようとするのだと」


「―――孤独の方が安心するからだ」


「・・・・・孤独になっても幸せに成らないぞ」


「いいんだ。家族を、仲間を、親友を、何もかも失う事が辛いんだ。なら、孤独になった方が

辛くはないんだ。自分から殻を籠もっていることも根暗だってことも自覚している。だけど、

俺は一人がいいんだ。俺は死ぬまで一人でいたい。―――死ねないけどな」


「・・・・・」


「一誠さん、お待たせ・・・・・あっ、先生」


弓が弓道着を着込んで戻ってきた。彼女の背後には弓道部部員達もいた。中には見覚えがある女生徒もいるな


「あれ?あの人・・・・・兵藤先輩?」


「え?何で此処に・・・・・」


部員達がざわめきだした。ユミに近づき口を開く


「ユミ、弓矢を貸せ」


「はい」


「・・・・・いま、先輩を呼び捨てしたよね?」


「う、うん・・・・・先輩達って付き合っているのかな・・・・・?」


「・・・・・矢場、兵藤とはどういう関係だ?」


「一方的な友人関係だ」


「もう、どうしてそんな事を言うの?お互いの名前を呼び合っているんだから友達でいいじゃない」


「・・・・・誰も友達に成ってくれと言っていない」


ユミから弓と数本の矢を受け取り前に出る。前髪を上げて弓の弦に矢を番えて遠くに佇む的を狙って

―――射た


タンッ!


もの凄い速さで矢が的の中心部に当った。残りの数本も射るが全て中心部に当った


「・・・・・やっぱり簡単だな」


中心部に突き刺さっている矢を見てつまらなく呟き踵返してユミに近づく。


「ほら、これでいいだろう?」


「・・・・・」


「・・・・・おい、俺は帰る―――」


「もう一度やってください!」


「・・・・・はっ?」


「お願いします!」


「・・・・・しょーもない」


新たに複数の矢を渡されてまた的の中心部に矢を射た。不意に部員達の声が聞こえてきた


「凄い・・・・・。矢が全部中心部に当っているよ」


「先輩は頭だけじゃなくて弓も上手いなんて知らなかった・・・・・」


「それに、前髪を上げた先輩の顔を見るのは初めてだよ」


「・・・・・矢を射る先輩の顔ってカッコいい・・・・・」


「なんでだろう、胸がドキドキしてきちゃったよ・・・・・」


「私も・・・・・先輩が矢を射る表情を見た瞬間。ドキッて、胸が高鳴ったよ」


タンッ!


最後の矢が中心部に刺さり、再びユミのところへと赴く。


「ユミ、終ったぞ。もう、帰らしてもらう」


弓を返して鞄を持って弓道場から去る。さっさと帰って飯食って寝よう


-6-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




真剣で私に恋しなさい! 初回版
新品 \14580
中古 \6300
(参考価格:\10290)