小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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「揚羽さん・・・・・」


最後に残った百代はポツリと呟いた。同じ四天王で先輩である九鬼揚羽が見事なほどに敗北した光景を見て

担架に運ばれる揚羽から目が離せなかった。


「此処で私達が勝たないと・・・・・」


「そうだね・・・・・」


「それじゃあ―――」


「それ、無理」


「「「・・・・・っ!?」」」


「我、勝つ」


チョコンと百代の前に佇んでいた腰まである黒髪の小柄な少女。黒いワンピースを身に着け、細い四肢を

覗かせている。百代はその少女から漂う不気味でいいようのないオーラを感じて百代は冷汗を掻き始める


「お前は・・・・・」


「―――『幽幻龍騎士団』の中で二番目に最強の存在だ。我等の王、一誠を上回る最強のドラゴンだ」


外野からガイアの声が聞こえた。その言葉に目を大きく見開いてオーフィスを眺め口から漏らす


「一誠を上回る・・・・・最強のドラゴン・・・・・!」


「我、イッセーの為に勝つ」


真剣な眼差しを百代に向けた。百代は声を震わせながらも笑い出した


「・・・・・ははは、一誠を上回る『不動』と『最強』がいると聞いていた。だが、こんな小さい女の子が

最強だとはな・・・・・」


「―――この際だ、お前達三人で決闘をしよう」


「むっ、タッグマッチをすると言ったのはお前達ではないか」


「最後は盛大に盛り上げたいのだ。3対3でな」


「こいつと他の二人を合わして私と燕とユミと?」


「ああ、そう言う事だ」


「二人はどう思う?」


「向こうも同じ考えだと思うけど、一人の相手に二人で戦って残りの二人の相手を一人で相手にしてもらって

戦うのも悪くはないと思う。かなり危険だけどね」


「向こうからその誘いをすると言う事は何かがあるって言う事で候。私は賛成しかねないで候」


「―――では、付け加えてお前達が2分間も立っていれば勝利とする。それでいいな?」


「「「―――っ!?」」」


ガイアからの提案に3人は目を大きく見開く。・・・・・一拍して3人は視線をかわし頷いた。


「ああ、それでいいぞ」


「決まりだな」


「両者、名乗りを上げい!」


「3−F川神百代だ!」


「3−F矢場弓子で候」


「2−F松永燕!」


「『幽幻龍騎士団』、『無限の龍神』オーフィス」


『幽幻龍騎士団』からは最強のドラゴン、オーフィス


「『幽幻龍騎士団』、ガイア」


二人目はまだ百代達が知らない不動の存在であるドラゴン、ガイア。―――そして


「・・・・・『幽幻龍騎士団』『王』の兵藤一誠」


燕達が愛して已まない兵藤一誠だった。彼の登場に燕達は驚愕する


「えっ!?どうして一誠さんが出るんですか!」


「・・・・・ガイアが来いって言われたんだよ。俺だって嫌なのに」


「・・・・・条件を呑んだから良いではないか、それにアレをするにはお前が必要なのだ」


「おい!私達は一誠を賭けた決闘をしているんだぞ!これでは決闘の意味が無く成るではないか!」


「言っただろう、『2分間立っていればお前達の勝利だ』と」


「っ!あれはこの為の布石だと言う事で候か!」


「約束は守る。我は約束を守るから安心しろ」


「絶対だな・・・・・」


「ああ、勿論だ」


「では、最終対決。悔いのない戦いにするのじゃぞ」


鉄心の言葉に6人は頷くその瞬間、ガイアの身体が一瞬の閃光の真紅の光に包まれた。学校を覆うほどの

膨大な光が収まるとそこにいたのは・・・・・


『始めるとしようか』


全長、100メートルを超える真紅の体のドラゴンがいた


「・・・・・えっ?」


「ガイアは元々ドラゴンだ、それも不動の存在と言われている『真なる赤龍神帝』グレートレッド。

『真龍』、または『D×D』と称されているドラゴン・・・・・」


「『不動』の存在の正体はドラゴンだったなんて・・・・・!」


「はは、こんな気持ちは生まれて初めて感じたぞ。―――ダメだ、勝てる気がしない」


「ガイアが『2分間立っていられたら』と言ったのはこういう事だったんだ」


『一誠、呪文だ』


「ああ、分かっているよ」


「呪文・・・・・?」


「こう言う事だ」


一誠がそう言うとガイアとオーフィスの体が真紅と漆黒のオーラを迸らせ始めた


『我、夢幻を司る真龍なり』


「我、無限を司る龍神なり」


『我、無限を認め』


「我、夢幻を認め」


『我等は認めし者と共に生き』


「我等は認めし者と共に歩む」


全身を真紅と漆黒に輝かせ、光の奔流と化して一誠に向かう。そして、真紅と漆黒の光を浴びた

一誠は高らかに叫んだ


「我!夢幻を司る真龍と無限を司る龍神に認められし者!夢幻の力で汝を誘い!無限の力で汝を葬り!

我は、愛すべき真龍と龍神と共に真なる神の龍と成り―――」


「『『汝を我等の力で救済しよう!』』」


『『『D×D!』』』


一誠達が呪文を唱え終わると真紅と漆黒の閃光が辺りを包む。しばらくして光が止んだ時に

百代達は目を一誠の方へ向けた。未だ、真紅と漆黒の光に包まれていたが少しずつ

収まっていき遂には一誠の姿を捉えた


「・・・・・」


その姿は真紅と漆黒のドラゴンの姿を模した全身鎧で頭部の兜にはたてがみを思わせる真紅と漆黒が混じった

髪がたなびく。胸に龍の顔と思わせるものがあり、意思を持っているかのように金と黒の瞳を輝かせる。

頭部のマスクを収納させると一誠の瞳は垂直のスリット状に黒と金のオッドアイに成っていた。

一誠はその瞳で鉄心を見詰めて口を開いた


「―――鉄心、試合開始の合図を」


「・・・・・最終対決!試合開始じゃ!」


「―――最初から全力で行かせてもらう!川神流、無双正拳突きぃ!」


百代の必殺技が一誠に直撃した。―――しかし、百代の攻撃を受けても鎧に傷が付くどころか一誠は

ピクリとも動かずにいた


「・・・・・悪いな、この鎧を身に付けたら―――」


「―――っ!?」


ドンッ!


「お前が赤子と思うぐらいに俺は無敵になるんだ」


「がっ・・・・・!?」


一撃、たったの一撃で百代は地面に倒れ、意識を保っていても二度と起き上がる事はなかった


「・・・・・」


「せやっ!」


燕が飛び蹴りして一誠の顔面に食らわした。だが・・・・・、


ガシッ!


「・・・・・」


「・・・・・っ!?」


燕の足を掴んで振り上げて―――グラウンドにクレーターが生じた程に叩きつけた


「・・・・・あっ」


「最後に残ったのはお前だけだ、ユミ」


「くっ!」


一歩、また一歩と歩を進める一誠に魔力弾を放つ。敢えてその魔力弾を受けながらユミに近づく。


「―――ありがとう」


「っ―――」


一誠はユミの背後に回り耳打ちする。


「お前達と過ごしたこの数ヶ月、とても楽しかった。この思い出はずっと忘れないだろう」


「イッセーさん・・・・・」


後ろに振り返った瞬間、ユミの唇に一誠の唇が重なった。―――同時に


トンッ・・・・・


「・・・・・っ」


「さようなら」


ユミの腹部に一誠の拳が突き刺さり、その衝撃にユミは意識を失った。


「―――勝者、幽幻龍騎士団!」


「「「「「「「「「「よっしゃああああああああああああああああああああああ!」」」」」」」」」」


一誠達の勝利に大歓声を上げる『幽幻龍騎士団』。世界は別世界から来た存在、『幽幻龍騎士団』に

負けたとそう思わせる瞬間でもあった


「・・・・・」


気を失ったユミを優しく寝転がし家族達の許に歩み寄る。途中で鎧が一瞬の閃光と共に解除されてガイアと

オーフィスが一誠の隣に現れた


「では、船に戻るぞ」


「ああ・・・・・」


「イッセー、我、嬉しい」


「そっか、俺も嬉しいよ」


空元気を出してオーフィスの頭を撫でる


「―――『幽幻元龍騎士団』!これより船に戻って宴をするぞ!」


「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」」


『幽幻龍騎士団』は宇宙船から放たれた光を浴びて船に向かって浮かんで行く

その最中に穴が開いてそこに潜っていく。


「・・・・・」


尻目で百代達を見る。しかし、直ぐに視線を前に戻して一誠も宇宙船から伸びている光を浴びて

ガイアとオーフィスと共に宇宙船の中へ向かって行った。そして一誠達を乗せた宇宙船は、

旋回して何処かへ移動した。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――保健室


「はっ!?」


一人の少女、松永燕が目を覚ました。身体を起こし、手で顔を覆い記憶を探る。


「・・・・・私は」


不意に重要な事も気づいた。―――兵藤一誠を掛けた決闘の勝敗はどうなった・・・・・と


「・・・・・私達の負けです」


「―――っ!?」


隣から良く知っている声が聞こえた。視線を隣に向けると暗い表情を浮かべた葵冬馬が座っていた


「葵君・・・・・今、なんて・・・・・」


「私達は一誠さん達に負けました」


「・・・・・」


冬馬の言葉に燕は―――涙を流し始めた


「一誠さんはこの学校を元に戻した後、家族と共に宇宙船で何処かへ行ってしまいました。追い掛けていた

人達もいたようですが、姿を暗ましてそれ以降は不明です」


「・・・・・私はどれくらい寝ていたの?」


「・・・・・一時間ぐらいでしょうね」


「・・・・・他の皆は?」


「一誠さんの家族の一人、メイビスさんでしたね。彼女に傷を治してもらい、自宅に帰って行きました。

学校はあの出来事に数日間は休校となりました。いま、この学校にいるのは私、準、ユキ、矢場弓子さん、

そして貴女の5人しかいません」


「・・・・・そう」


「私達は見事に敗北しました。一勝したのは運が良かったんですね」


「・・・・・」


「・・・・・では、失礼します」


葵冬馬は保健室から出ていった。燕しかいない保健室は静寂を保っていた


「・・・・・一誠さん」


一誠との思い出を思い浮かべる。楽しい記憶、悲しい記憶、辛い記憶、幸せな記憶、燕はこれまで一誠と

過ごした日々を走馬灯のように思い出していく


「一誠さん」


ポツリと漏らす。次の瞬間


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


ダムが決壊したかのように燕の目から大量の涙が溢れ、頬を濡らし号泣する。



―――2−S



「「・・・・・」」


自分の机に座る榊原小雪、井上準


「・・・・・ユキ、準」


「・・・・・燕先輩は?」


「意識を回復しました・・・・・今頃は・・・・・」


「そっか・・・・・」


「イッセー・・・・・イッセー・・・・・」


「・・・・・俺達、手も足も出なかったな」


「像と蟻・・・・・いえ、龍にミジンコ並みでしたね」


「一誠さんの言うとおりだった。俺達は負けてしまった・・・・・」


「はい」


「一誠さんは元の世界に戻ってしまったかもな」


「そうかもしれませんね・・・・・」


「やだよぉ・・・・・やだよぉ・・・・・」


「ユキ・・・・・」


「一誠は・・・・・僕達とずっと・・・・・傍にいるって・・・・・約束したのにぃ・・・・・」


「「・・・・・」」


「もう会えないなんて僕、嫌だよぉー・・・・・うわあああああああああああああああんっ!」


「・・・・・もっと力があればなぁ」


「ドラゴンに転生して一誠さんに強くしてもらった程度では、彼等の足下にも及ばなかった」


「この失望と絶望感・・・・・あの時と似ている。俺達の父親が悪事に手を染めていたと

気付いた時と・・・・・」


「ええ、そうですね・・・・・。この気持ちを再び味わうとは思いませんでしたよ・・・・・」


「だが、一誠さんは何時でも俺達の味方だった」


「『俺に任せろ』、あの一言はとても心強く私達は彼に助けられました」


「俺達の父親は証拠と共に警察行き、俺達はユキの母親に引き取られてずっと幸せに暮らして来た」


「それからも影から一誠さんが助力してくれました。何不自由もなく暮らしていけるように」


「小学校の授業参観や運動会には必ず来てくれたな」


「父親代わりとしては若すぎると思いました。ですが、私は一誠さんが来てくれて嬉しかった」


「ああ、あの人で良かったぜ」


「ですが、私達が中学に成った途端に彼は私達の前に姿を現わさなくなった」


「探しても、探しても見つからず、俺達は悲しみながら諦めた」


「―――しかし、この学園に入学した時に一誠さんと再会した」


「俺達は当然喜んだ。でも、あの人は変わっていた。―――人形のように」


「それでも私達は積極的に接しましたよね」


「1年の時は無視されっぱなしだった。だが、2年になって一誠さんは変わった」


「3−F、矢場弓子。あの先輩のお陰で一誠さんは少しずつ変わってきました」


「あの先輩のお陰で一誠さんは再びあの時のように俺達と接し、笑うようになった」


「彼の存在が今の私達があるのです」


冬馬と準は一誠との日々を語り続けた。―――思い出のように


「・・・・・だが、一誠さんの家族が現れた」


「喜ばしい事でした。ようやく一誠さんは家族と再会を果たしたのですから」


「でも、俺達にとっては嬉しくなかったな」


「何せ別世界の住人達。一誠さんもまた、別世界の住人。この世界から一誠さんは元いた世界に

帰らなければならない」


「ずっと一緒にいた俺達は悲しい事だ、親を引き離されるような感じだからな」


「ひっぐ・・・・・!ひっぐ・・・・・!ぅぅぅ・・・・・!」


「初めてですよ・・・・・力を欲した気持ちを抱いたのは」


「俺は若を守れる程度の力があればいいと思ってはいたが、一誠さんを守る力が俺達には無かった」


「武神である百代さんですらも負けました。彼女も相当ショックを受けていましたね」


「生きる屍って感じだったぜ」


「・・・・・一誠さん、私達はこの気持ちをどこにぶつけたら良いでしょうか・・・・・?

辛く悲しいこの気持ちを・・・・・」


「・・・・・」


「イッセーッ!イッセーッ!イッセェェエエエエエエッ!」




―――弓道場



「・・・・・」


―――タンッ!


「・・・・・」


―――タンッ!


「・・・・・つまらない」


―――タンッ!


「・・・・・つまらないですよ、一誠さん」


三本の矢は全て中央の的に刺さっている


「・・・・・一誠さんがいない弓道場なんて・・・・・つまらないですよ」


『―――ありがとう』


『お前達と過ごしたこの数ヶ月はとても楽しかった。この思い出はずっと忘れないだろう』


「最後に私にキスをして負かして自分が勝つなんて・・・・・酷いですよ・・・・・!」


その場に座り込み涙を流す。そんな彼女の肩に手を置いた人物がいた


「矢場・・・・・」


「・・・・・ウメ先生」


「お前達は頑張ったな」


「・・・・・私、何もしていません。それに攻撃も全然ダメでした」


「・・・・・」


「一誠さんをひき止める事ができませんでした・・・・・!」


「・・・・・お前達が羨ましい」


「・・・・・?」


「本来なら私もあの決闘に参加するべきだった。だが、私は一人の教師としてお前達の戦いを

見守る事しか選択が無かった」


「ウメ先生・・・・・」


「堂々とあいつの事を好きだ、愛していると言えるお前達が羨ましい・・・・・」


羨望を乗せた瞳をユミに覗かせた。


「次があれば私も出たい。教師としてじゃなくて一人の女として・・・・・」


「・・・・・ですが、一誠さんはもうこの世界には・・・・・」


「・・・・・ああ、そうだな。あいつはもう・・・・・」


「―――ううう!一誠さん・・・・・!一誠さん・・・・・!」


「・・・・・」


小島梅子は泣くユミを抱き締める。―――自分も涙を流して



―――九鬼財閥極東本部



「「・・・・・」」


とある一室の扉の前に九鬼英雄と九鬼紋白が佇み、当惑している


「兄上・・・・・」


「我等が励ましの言葉を送っても姉上が苦しむ・・・・・」


「・・・・・はい」


「一誠殿の家族は強かった。姉上を無力化にして勝った・・・・・」


「・・・・・はい、映像で見ていました」


「姉上がドラゴンに成っていたとは我も知らなかった。その理由が一誠殿と永くいる為だと知った時は、

やはり姉上だなと思った」


「我もビックリしました、母上も我と同じように驚いておりました」


「そうであろうな」


「姉上は大変心に深い傷を負ったのでしょうな」


「うむ。時間が解決してくれると嬉しいのだが、そうもいかんだろう」


「我等は何かしてやれないのでしょうか?」


「・・・・・今はそっとしておくべきだ。姉上の部屋に誰も近づけさせるなと従者部隊に伝えておこう」


「はい、我もそう伝えておきます」


「では、行こう・・・・・」


二人はとある一室―――揚羽の部屋から遠ざかった。


「・・・・・」


揚羽はベッドに腰を掛けてかなり落ち込んでいた


「・・・・・我は弱い、一誠の家族よりずっと・・・・・」


揚羽の脳裏に一誠の姿が浮かんだ


「あれが一誠達のレベル・・・・・、我等のレベルでは到底、足下にも及ばぬ」


揚羽が戦ったヴァーリと美猴の実力に苦笑を浮かべる


「だが、此処で諦める我ではないぞ・・・・・!」


拳をギュッと握りしめ瞳に力が戻る


「―――まだ一誠達はこの世界にいる。この闘気が我の肌で感じている限り一誠は元々いた世界に

帰ってはいない・・・・・!それが何時帰るのか解らないが、それまでに一誠達が乗っている

宇宙船を探せばいいだけの事!」


真剣な表情で言葉を発する揚羽、


「九鬼財閥の総力をフルに活動させて一誠達の居場所を探しつつ我は鍛えるとしよう、

次の戦いの時までに!」



―――金曜集会



「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」


とある廃棄されている建物の一室に9人の男女が集まっていた


「・・・・・ガクト、体は大丈夫?」


「ああ、すんげぇ美人なお姉様に傷を治してくれたからもう痛くも痒くもねぇ!ああ、

もう一度あの人に会いてぇ・・・・・!」


「でも、あの人って兵藤の家族の人なんだね。しかも天使の翼を出していたから驚いたよ」


「・・・・・あの野郎、今度また戦う時がきたら真っ先に絶対にブチのめしてやる!」


「ヘラクレスって男?兵藤の事?」


「ヘラクレスだ!あの野郎だけは許せねぇ!男と男の勝負に爆発物を持ち込んで勝ちやがってよぉ!」


「いや、爆発物なんて持っていなかったって。学長だって確認したらしいよ?」


「その学長の目を誤魔化しているんだよ!」


「どうやってさぁ?」


「それはお前・・・・・どうやってだよ?」


「訊いているのは僕なのに僕を訊いてどうするのさ!?」


「ナイス突っ込み」


「自分はシグナムという奴は絶対に騎士と認めんぞ・・・・・!勝負を愚弄する騎士は騎士道に反する!

再戦を申し込んで騎士道はどういうものか教える必要がある!」


「真羅椿姫って奴もそうよ!薙刀を使う資格が無い、武道の才能が無いって言うんだもの!

絶対に見返してやるわ!」


「だけどどうやって?―――兵藤と家族達はこの世界からいなくなっているんでしょう?」


「「あ・・・・・」」


「ワン子とクリスは同レベルだね」


「何ですって!?」


「何だと!?」


「ほらほら、ケンカしないの」


「あー、俺も宇宙船に乗りたかったなぁー」


「キャップ、まだそんな事を言っているの?」


「目の前に夢と希望が詰まったものがあったんだぞぅ!?それに別の地球があるって

事実も証明されたんだ!俺も乗って行きたかったぞ!」


「というか、事実的に兵藤の家族が現れたから証明されたよね」


「キャップの夢が目の前にあったな」


「うん、そうだね」


「加えて言うと魔王、神、妖怪、英雄、ドラゴンがいる世界だ。キャップが喜びそうな世界なんだろうな」


「ああ、何時か行きてぇー!」


「「・・・・・」」


賑やかな集会に二人だけ静かに在席している人物・・・・・川神百代と黛由紀江がいた


「お姉様?」


「・・・・・」


「お姉様ったら!」


「・・・・・ああ、なんだ?」


「もう、元気出してよ。負けて悔しがっているお姉様の気持ちは解るけど・・・・・」


「・・・・・」


「お姉様はこの世界じゃ武神って呼ばれているほど強いんだから!また修行をして強く成って再戦を―――」


「・・・・・ワン子」


「はい?」


「・・・・・真羅椿姫って一誠の家族の言った通りお前には、武道の才能が無い」


「―――えっ?」


百代の言葉に唖然とする


「お前と真羅椿姫の戦いを見て私が出した結論だ。このまま、武道だけに打ち込み続けても

・・・・・お前は川神師範代にはなれない」


「お、お姉様・・・・・?」


「同じ薙刀で戦ってお前は負けた。徒手でもお前は負けているだろう。あいつはそのぐらいの実力を

持っていた。仮にあいつが川神院師範代になる進む道を選んだら確実に川神院師範代になれる」


「そ、そんな!確かに手も足も出なかったけど!今はまだ修行中だし、き、決めつけないでよ!」


「それとな?」


「・・・・・っ」


「元気が無かったのは何も負けて悔しいからじゃないんだ。寧ろ、あいつに負かされると心がスッキリする。

『いっぱい修行して強く成って今度こそあいつを倒す』と思わせるぐらいにな」


「じゃあ・・・・・何で元気が無かったの?」


「―――あいつがこの世界から、私からいなくなる事実に元気が無いんだよ。まゆまゆも私と同じ気持ちだ」


「まゆっち、そうなのか?」


「・・・・・はい」


「でも!お姉様の気持ちと私の夢の話は関係ないじゃない!」


「・・・・・ああ、確かにそうだ。だが、一誠にお前の事で言われた事があるんだ」


『百代、お前の妹の事だが良いか?』


『なんだ?私の可愛い妹に手を出すなら許さないぞ!私という者がありながら―――』


『・・・・・あいつは武道の才能が無い』


『・・・・・』


『俺も人を見る目はあると自称している。一般人よりは普通に勝てるだろうが、俺やお前のような実力者には

通用しない。なにより、ただあんな簡単な筋肉トレーニングや闇雲にタイヤを引いて

遠くに走っているだけの修行じゃあ尚更だ』


『・・・・・じゃあ、お前は一体どんな修行でそこまで強く成った?』


『死ぬ寸前の過酷な修行を積み重ねてきた。それも百代達が考えもしない方法で子供の頃からやってきた』


『死ぬ寸前・・・・・』


『あいつの修行を見てまだまだ甘いと常に思っていた。―――本気で強く成りたいのなら死と隣り合わせが

ある修行をするべきだ。自然と戦い、生物と戦い、自分と戦ってな』


「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」


百代が過去に一子の事で言われた言葉を教えた


「一誠の修行方法は一誠の家族もしているそうだ。ワン子、お前の修行では私の足下にすら

届かないって一誠が断言した。結果、私どころか一誠の家族に負けた」


「くっ・・・・・う・・・・・うぅぅう!」


「言い方が悪かったかも名な。才能がない、というよりも川神院師範代に成るまでの才能はないであって

師範代を考えなければ十分過ぎるほどお前は強い。辛いだろうが川神院師範代の夢は

諦めて他の夢を探して―――」


「決めつけないでよ勝手に!アタシは・・・・・精一杯やってきたもん!ここまで頑張って、

達成できないなんて嘘よ!」


「ああ、確かにお前は誰よりも努力した。でも・・・・・お前の夢のハードルは凄く高いんだ。

努力だけじゃ・・・・・ダメなんだ・・・・・結果が出ない」


「納得できないわっ!」


「ワン子・・・・・」


「何年も何年も修行してきて!お前には才能が無いからハイ諦めろ、なんて!絶対納得できないっ!

頑張ってきたアタシの体に申し訳が無さ過ぎるわ!このまま終わるなんて絶対いやよ!」


涙ぐむ一子は百代に声を張り上げてそう言うと部屋から出ていった。


「モモ先輩!今の言い方はあんまりだよ!」


「ああ!俺もそう思うぜ!」


「・・・・・川神院師範代になるためにはどうしても天才的なモノもいるんだ」


「だからって夢を諦めろなんて言われたら傷つくに決まっている!」


「大和・・・・・私だって辛いんだぞ・・・・・でもな、これは何時か言わないといけないと

思ってきたんだ。そして、今日の決闘でワン子は負けた。一誠の家族の身体に傷ぐらい負わせたら私は

この事を言わなかったんだ。だが、負けた。ワン子の夢のハードルは

一誠の家族を倒すぐらいの高さと同じぐらいなんだ」


「姉さん・・・・・」


「ワン子はそのハードルを乗り越えられなかった。それが現実・・・・・」


百代は暗い表情で漏らした。妹を想う姉は辛い事だった、

夢を捨てろという言葉を発する事がなにより・・・・・

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