『幽幻龍騎士団への挑戦権を与えらました優勝者達。いよいよエキビションマッチの始まりです！』
「っ・・・・・」
「まゆっち・・・・・」
「大丈夫です・・・・・。まだ、倒れる訳にはいきませんから」
「だが・・・・・、お前の状態はとても危険だ。直ぐに治療してもらって―――」
「私も川神・F・ドラゴンズです。最後まで皆さんと一緒に戦いたいんです。・・・・・お願いします」
由紀江の真剣な眼差しに揚羽は沈黙すると溜め息を吐いた。
「・・・・・無理だけはするなよ？」
「はい」
「―――話は終わったか？」
川神・F・ドラゴンズの前にいる一誠達「幽幻龍騎士団」。既にバトルフィールドに向かう魔方陣が現れていた
「ああ、大丈夫だ」
「なら、行くぞ」
「一誠さん、三つのお願いは・・・・・」
「それは俺達と戦った後からだ。既にお前達はこのゲームを優勝した。お前達の願いは大体理解している」
「・・・・・」
「―――が、その願いは残念ながらダメだ。三つ全ての願いを俺は拒否する」
「なっ―――！？」
「何故だ！何故私達の願いがダメなんだ！」
「そうだよ！優勝したんだよ！？」
「納得いきませんよ・・・・・・」
「お前達の実力は俺や俺の家族達が認めている。ソーナ達を倒した時点で既に家族として
迎い入れてもいいぐらいだ」
「じゃあ、どうしてだ・・・・・！」
「―――お前達の願いは俺を束縛する願いなんだ。俺を家族と一緒に暮らさせないような願いだからだ」
「っ・・・・・！」
「ち、違います！私達は―――」
「いや、違わない。貴様達は我等の一誠を奪おうとしている。我等はその願いは許せんのだ」
「ガイア・・・・・！」
「我もその願いはイヤ」
「・・・・・っ」
「それほどまでに一誠が欲しいのであれば―――我等を倒すのだ！」
『―――っ！？』
「我と一誠は『幽幻龍騎士団』のトップだ。我等を倒せば我等の仲間も納得するだろう・・・・・。
もう一度言うぞ、一誠が欲しければ我等、『幽幻龍騎士団』を倒す他ないぞ！我等から
奪うぐらいの姿勢を見せてみろ！―――川神・F・ドラゴンズ！」
「ゾラード達の力を借りなければ私達を倒すことができないお前達はどこまで
食いついて来るか楽しみにしている」
「我が主をあなた達に渡しなどしない」
「我、負けない」
先に一誠だけ残してバトルフィールドに向かう「幽幻龍騎士団」。一誠は川神・F・ドラゴンズを一瞥して
バトルフィールドに移動する魔方陣に乗り消えた
「これが最後の戦いだ」
「不動と最強のドラゴンを倒すか・・・・・」
「普通なら無理な話なんだケド」
「私達は諦めない理由があるで候」
「全てはこの日の為に」
「俺達は強く成った」
「・・・・・行きましょう」
「うん！行こう！イッセーを取り戻すんだ！」
「川神・F・ドラゴンズ！勝つぞぉー！」
『おおおーっ！』
川神・F・ドラゴンズも最後の戦いとなるバトルフィールドに向かった。そして、
ステージから移動した川神・F・ドラゴンズが次に移った光景は・・・・・
「真っ暗・・・・・違う、ここは・・・・・宇宙・・・・・！？」
「見て！地球が見えるよ！」
「本当に俺達は宇宙に来てしまったのか・・・・・？」
「でも、息ができるからここはバトルフィールドだと思うで候」
「そう、ユミの言う通りここはバトルフィールドだ」
「一誠さん・・・・・」
『制限時間は無制限。相手の「王」をチェックメイトするまではゲームは終了しません。尚、
「兵士」の方はプロモーションができます』
「だとよ」
「構わない。思う存分にお前と戦えるから嬉しいぐらいだ！」
「ゾラード達の力を借りなければ勝てないかもしれないという結果に我は悔しいがこれも一誠、お前を
この世界に留まらせる為だ。―――だが、それでもお前に勝てる可能性があるのであれば、
私は恥を忍んで何でも利用するつもりだ」
『それでは参りましょう！最後のレーティングゲームを！』
「我等は全力でお前を倒す！一誠、お前も全力で戦ってくれ！」
「―――ははっ。そうか、なら、お前達が望むのであれば俺も全力でお前達と戦おう。
『幽幻龍騎士団』の「王」としてではなく一人の男、兵藤一誠としてな！」
『試合開始だぁ！』
「全力の速度の俺を見切れるか！」
宇宙空間から一誠の姿が音もなく消えた。次の瞬間、
ドガッ！
「っ！？」
ガッ！
「っ！」
バキッ！
「ぐっ！？」
百代と揚羽、燕が殴られて宇宙に漂っている岩に衝突した。
「・・・・・これが一誠の全力の速度・・・・・！」
「全然、見えない・・・・・！」
「気の気配すら感じないとは・・・・・！」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ！
「「「―――っ！」」」
三人の周囲の岩が突然に砕かけ、岩の破片が百代達３人を襲う。
「２人とも！」
「はい！」
「ああ！」
「「「禁手化！」」」
そう叫んだ３人に一瞬の閃光が放った。岩の破片はその光を浴びて消失していく。
「一誠さん！これが私達の新しい力です！」
「この力でお前とお前の家族を倒す！」
「私達の全力をお前の体にこの姿で伝える！」
―――光が止む頃に百代達の姿が一変していた。その姿に一誠は３人の前に現れた。
「武龍神の誠の鎧！」
「飛燕と龍と平蜘蛛の智の宴会！」
「九頭龍鬼の栄光と怒涛の鎧！」
百代の姿は全身鎧の胸に龍の顔を模した額の部分に『誠』という文字があり、全身に陽炎のような黒い炎を
纏っていた。燕は龍を模した黒いボディスーツと右肩を覆うような龍の顔を模した巨大な手甲に『智』と言う
文字がある機械を装着していて背中に大きな燕のような翼と蜘蛛の脚のような８本の機械が生やしていた。
揚羽は銀の全身鎧で周囲には九つの龍を模した物体が浮かんでいた。
それぞれの物体の額に×印が付いている。
「それがお前達の神器と言う事か」
「その通りだよん」
「この力を手に入れた瞬間、私達は嬉しかった」
「我はまだ強くなれると、我等は一誠の家族を倒せるんだと解ったからな」
「だったら、俺も神器の力を使うとしよう！」
そう言った瞬間に一誠の背中に巨大な炎の翼が現れた。一度も見た事もない燕達は目を見開かせる
「その翼・・・・・レイヴェル・フェニックスと同じだ」
「俺は『強奪』という神器の所持者でもある。『強奪』は相手の能力を奪い自分の物にする力だ。
この力で俺は様々な力を奪い自分の力にした上にさらに奪った力を昇華してきた」
「・・・・・！じゃあ、私達の神器の能力も奪えるというのか！？」
「その通りだ！」
炎の翼で一誠の言葉に衝撃を受けた百代達に挟むように火炎球を撃ち出しながら動かした。
「２人とも！」
「「ああ！」」
３人は巨大な炎の壁から脱出しようと上に飛んで行く。
「そんな事をするだろうと思っていた！」
既に一誠が気づいていて３人が向かっていた頭上を炎の翼で防いだ上に巨大な複数の火炎球を撃ち出した。
「退路は断たれた！だが、我等は真っ直ぐ進むのみ！」
「川神流、星殺し！」
百代の手の平から膨大な気のエネルギーのビームが撃ち出して迫ってきていた火炎球を
撃ち抜き吹っ飛ばした。
「っ！下からも来ているよ！」
「我に任せろ！」
九つの龍を模した物体を円陣に組ませて魔方陣を展開した瞬間に口内から銃口を覗かせる
「九頭龍一閃！」
ドウッ！
銃口から膨大な魔力が発射したと思えば円陣の真ん中に展開している魔方陣からも
魔弾を発射して下から来た火炎球を吹き飛ばす。
「よし！出口を作った！」
「捕まって！」
燕が８本の脚で揚羽と百代を捕まえて翼を羽ばたかせ神速とも言える速度で百代が空けた炎の翼の隙間に
覗かせる宇宙空間へと飛びだした。
「―――なるほど、あの攻撃を避けるとは中々だ。俺の家族以外であの技を脱出したのは久々だな」
炎の翼を羽ばたかせて近づいてきた一誠の口の端が吊り上げていた。
「だが、あれが俺の全力だと思うなよ？」
「はは！思わないさ！もっとお前の全力を見せてくれ！」
「いいだろう！そしてお前達の神器にはどんな能力を持っているのか俺に見せろ！」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「向こうは激しくやっているな」
「そうですね」
「さて、お前達は我等が相手をしよう」
「その前にお話しを聞いてもらえませんでしょうか？」
「話し・・・・・？」
「交渉です」
「ふん、我相手に交渉とは・・・・・聞こう。お前の交渉とやらを」
「ありがとうございます。―――ここにとあるものが入っています」
「その封筒に一体何があるというのだ？」
「私達が幼少の頃からいた一誠さんの写真があります」
「・・・・・」
「貴女達は一誠さんを第一にお考えのようですよね？それに『家族』と言うほどなのですからアルバムに
保存する写真も有る筈です」
「確かにあるな。それも一冊や二冊では収まらないほど大量の数の写真が」
「この写真を貴女達に渡します。ですから―――」
バシュンッ！
「我、その写真はいらない」
「・・・・・」
「我、イッセーや他の『幽幻龍騎士団』と撮った写真以外は必要ない」
冬馬の手に合った封筒がオーフィスの魔力によって消された。ガイアはオーフィスの
行動を見て冬馬に話しかけた
「だ、そうだ。悪いな、個人的に欲しかったと思っていたがそうなってしまっては交渉ができなくなったな」
「そうですね・・・・・残念です、―――あの中に一誠さんのヌードの写真が入っていたというのに」
「・・・・・なんだと？」
「あの一誠さんの全身に流れる一滴、一滴の水が一誠さんの美をより美しく輝いていた
写真もあったのですが・・・・・」
「若・・・・・それ、何時の間に撮ったんだ？」
「ふふ、秘密です」
「・・・・・一誠さんが知ったら若の命がなく成るな」
「―――それが今だけどな」
「「・・・・・」」
冬馬と準の背後から第三者の声が聞こえた。
「あっ、イッセー！」
「よう、ユキ。ちょっと、冬馬を借りるぞ。２人だけで話たい事があるんだ」
「うん！解った！」
「良い子だ。―――さて、冬馬。百代達が俺の分身と気付かれる前にあの岩の後ろで
俺と今後の事で話をしようじゃないか」
「・・・・・準」
「すまん、一誠さんを敵に回したくない」
「既に敵なのですが・・・・・」
「そういう意味じゃなくて別の意味の敵だ。―――達者でな」
「よし、行こうか」
ガシッ！と冬馬の首を掴んで一誠は岩の陰へ移動した
「・・・・・一誠を怒らせたら最後だとその身で感じるがいい」
「あの、若はどうなりますか？」
「一生、一誠が怒った顔がトラウマとなるほどになるだけだ。我等も一誠に怒らさせてしまって
トラウマになっているなのだ・・・・・」
「一誠・・・・・怖い」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・」
「私は見た事がなのだが・・・・・怖いのか？」
「お前は限度を超えた事や他の者とケンカなどしていないから一誠の怒りを見た事がないんだ！我は黒歌と
喧嘩した時には何度も見たんだぞ！？ああ・・・・・！身体が震えてきた・・・・・！」
実際にガイアの体が本当に身震いしていた。不動のドラゴンにトラウマを残すほど一誠の怒りは怖いのかと
準達は畏怖の念を抱いた。―――次の瞬間
『川神・F・ドラゴンズの「僧侶」、一名リタイア』
「若がやられた・・・・・！？」
「トーマ！？」
「一誠の怒りは相手を問答無用に平伏させる。ある意味、我より強いぞ」
「ガイア？」
「―――っ！？」
「さっきからなんか、失礼染みた会話が冬馬と『話』をしている最中に聞こえていたんだが・・・・・
俺の気の所為か？」
何時の間にか背後から抱きかかえるようにガイアを抱きしめていた一誠がガイアの耳元で呟いていた。
一誠の事が大好きなガイアにとっては幸せな抱擁―――だが、今の一誠の顔が笑っていなければの話だった。
何とも言えない異様なオーラを纏っている事に気づき、全身が冷汗を流し始めた。
「俺はただ喧嘩をして欲しくなくて心を鬼にして説教をしただけなんだけど、お前や他の皆に
とってはそんな風に思っていたのかぁ〜」
「い、一誠・・・・・！？」
「ん〜？」
「お前の友達が怖がっているんだが・・・・・？」
「気にするな、お前も少し俺と話をしよう」
「まっ、待て！今はゲーム中だぞ！？我がいなくなったらあの鎧を纏えなくなるぞ！」
「・・・・・それもそうだな」
「ほっ・・・・・」
「―――このゲームが終わったら俺の部屋に来い。いいな？」
「・・・・・はい」
「さて、セルベリア。あいつ等を倒しつつ時間を稼いでくれ」
「主のお願いであれば喜んで」
「よろしく頼む。俺の愛しいセルベリア」
ニッコリと一誠の笑顔と共に頭を撫でられたセルベリア。しばらく自分の頭を撫でている一誠の手の温もりを
感じているとそっと一誠から離れてお辞儀をしてから準達の前に移動した―――刹那。
ドンッ！
「私はセルベリア・ブレス！我が主、一誠様の矛と盾である！我が主の邪魔をする者は全て
この忠誠の蒼い炎で燃やし塵と化にしてくれる！」
セルベリアの全身から迸る蒼い炎が出てきた。
「なーんか、あの人やる気がMAXになったな・・・・・」
「イッセー先輩に頭を撫でられたらそうなりましたね」
「気持ちは解るよー、僕もイッセーに頭を撫でてもらった時は凄く温かくて嬉しんだから！」
「あ〜、私も解るね〜」
「行くぞ！」
ランスを前に突き出して突貫して来たセルベリアに梅子が口を開く
「あの青い炎には十分気を付けるのだ！今回はマルギッテのようにはしてもらえなさそうだからな！」
「くっ・・・・・」
「まゆっち！まだ動いちゃダメ！」
「ですが・・・・・！」
「黛、しばらく休んでいろ。大和田、お前の力で黛の傷を治してやってくれ」
「はい！―――禁手！」