小説『赤いお部屋』
作者:DRSTV()

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「ん・・・・・・・」


重たい眼をゆっくりと開くと、見慣れない白い天井が映った
ほのかに香る薬品の香りから、俺は此処が病院だとすぐに分かった


「悠馬・・・・!」
「母さん・・・?」

声のする方へ首を向けると、其処には母親が居た
俺が目覚めるまで一睡もしていないのか、眼の下にはクマができていた

「良かった、・・・・・生きていて、本当に良かった・・・!!」
「母さん・・・・・・・痛いよ」

母親は俺が目覚めるなりおいおいと泣き始めた
ぎゅっと抱きしめられるせいか、腹部がチリチリと痛む

「あんた、巨椋第2病院で見つかったのよ」
「巨椋・・・・・?」

ああ、あの廃墟になっている病院か・・・・

「あそこね、改装してマンションを建設予定していたの。建設会社の人と工事の人たちが中から腐敗臭がするって云って中に入ったらあんたと亜里沙ちゃんと田部君が見つかったの」
「・・・・・・・・・・・」
「亜里沙ちゃんと田部君は即死だったわ」
「・・・・・・・・・・そう」


少しの間沈黙が続いた


「母さん」
「ん?」
「外に出たい」
「何処に行くの?」
「田辺の墓参りに行きたい。行って伝えたい事があるんだ」
「分かったわ。先生に外出許可もらってくるわね」
「有難う、母さん」


母親は、病室を出ていった

俺は母親が帰ってくるまで、テレビを見ることにした

テレビカードを差し込み、電源をつける



『・・・・・・があり、マンションの建設予定が中断された模様です。中からは死亡者2名、重傷者1名が確認されました。重傷者の日下部悠馬さんは病院に搬送され、入院しています。詳しい事は、新しい情報が入り次第お伝えします』


「・・・・・・・・・・・田辺」


俺は、ぼそっと田辺の名前を呟く

お前は、どうしてこうなった・・・・・・

俺に言えなかった理由があるのか・・・・・

何で一人で抱え込むんだ・・・・

「馬鹿野郎・・・・・・・・」






「悠馬、先生から許可が出たわ、行きましょう。今日は寒いわ。身体が冷えるといけないからダウンジャケットつけていきなさいね」
「うん」



俺は母親の手を借りて着替え、田辺の好きだった白百合の花束を持ち病室を後にした


ギイイイ・・・・・・・・・バタン















『たった今、新しい情報が入りました。えー、現場から容疑者が残したと思われるVHSが発見されました。放送を一時中断し、VHSの内容を全国ネットでお送りいたします』






『ヴヴッ・・・・・ザザザッ・・・日下部君、君はこのビデオ見てくれてるかな。あのね、実は僕ね、時々自分を制御できなくなる障害を持ってるんだ。此の事を他人≪ひと≫に教えるのは初めてなんだよ、フフッ。日下部君は素直な人だから、僕が死んでいたら僕のお墓参りに行っているかもね。その時は白百合の花をいっぱい持ってきて欲しいな。そして、僕をいっぱい叱ってほしいな。そのあとにいっぱいお話ししようね。辛い思いもさせちゃってごめんね。怖かったよね。本当にごめんね。それとね・・・・・・僕日下部君の事大好きだよ。誰が思ってるよりも、ずっとずっと、君の事が好き。人を殺しちゃって、もう後戻りはできないけど、君が好きっていう気持ちは揺るがない。だからね、日下部君。君の事大好きだからいっぱいいっぱい幸せになってほしいな。もし、君が死んで、あの世で出逢えたら、いっぱいお話聞かせて。昔みたいに他愛ない話をしようね。長くなっちゃってごめんね。じゃあ、バイバイ・・・・・・ザ―――――――――・・・・・・・』

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